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創業30年以上のレガシー製造業のデジタル戦略最適解とは? Adobe Marketo Engageユーザー分科会で新しい試み

インターネットやスマートフォンが幅広く普及した現在、企業がビジネスを推進する上でのデジタル戦略は、企業の大小や業種に関わらず非常に重要な施策の1つとなっています。

とはいえ、企業が置かれている状況はそれぞれ異なります。中でも、一見するとデジタルとは縁遠く思われるような“伝統的製造業”にとってのデジタルマーケティング戦略とは、どうあるべきなのでしょうか?

そんな課題を考えるユーザー分科会を2024年2月、都内で開催しました。MA(マーケティングオートメーション)ツール「Adobe Marketo Engage」を利用する企業から5人のマーケターが登壇。日々の悩みを明かし合いつつ、課題解決に向けて具体的な議論を展開しました。

創業30年以上の製造業、かつB2Bマーケ担当者だけで深く議論

アドビではデジタルマーケティングソリューション「Adobe Experience Cloud」を提供しており、製品利用者同士の交流を通じて、より実践的な用法の共有がなされるようにと、コミュニティ活動を積極的に支援しています。

今回開催したイベントは、MAツール「Adobe Marketo Engage」を利用する企業担当者向けですが、ちょっとユニークな参加条件を設けました。それは「創業30年以上の企業に勤めている」「自社で製品を製造販売している」「B2Bマーケティングを行っている」の3つ。

いわゆるスタートアップとは一線を画し、しかも長年の営業実績を誇る製造業を「レガシー製造業」と呼称し、そんなレガシー製造業限定で集まってもらうことで、より深く突っ込んだ議論をしようという狙いです。

アドビには業種やテーマに応じて数十名規模が集まるユーザー分科会グループ「MUG(Marketo Engage User Groupの略称)」が複数存在しますが、今回のイベントは「製造業MUG」の第1回会合という位置付けでもあります。

イベント当日はあいにくの雨でしたが、会場には30人以上の条件にマッチするユーザーが集まりました。テーブルごとに4~5人分の席を用意。参加者は開会前も閉会後も、名刺交換などを通じて積極的に交流していました。

「製造業MUG」第1回会合の会場となった、コクヨ株式会社 品川オフィス「THE CAMPUS」内のホール。巨大スクリーンが目を惹きます

製造業マーケティングの“あるある”を5名で議論

今回のイベントの登壇者は以下の5人です。

井上 望さん(旭化成エレクトロニクス株式会社)
泊 智子さん(三菱電機株式会社)
芳野 延博さん(コクヨ株式会社)
志知 文さん(株式会社堀場エステック)
若園 真理恵さん(株式会社クボタ)

モデレーターとして壇上の議論を主導した若園さんにお話を伺ったところ、製造業MUG立ち上げのきっかけは、2023年7月のMUG Day(Adobe Marketo Engageのユーザー300人程度が一堂に会するユーザー総会)における芳野さんとの交流だったそう。

会話が盛り上がる中で、営業部門がしっかり機能している企業、特に製造業には、どうすればデジタルマーケティングが更なる役割を果たせるのか、悩んでいる担当者は多いのではないか? そうした着想を得たと言います。その後、アドビのコミュニティ担当者と相談を進め、約半年の期間を経て今回のリアルイベントの開催に至りました。

2時間のイベントのうち、中心となったのは壇上の5人によるトークセッションです。途中、参加ユーザーからの質問に答える時間も設けました。

皆さんの議論からは、製造業のマーケティングとひと口にいっても、営業の体制、部門配置がそれぞれ全く異なるため、悩みもまた微妙に異なることが伺えました。

マーケティング機能が事業部門から独立しているのか、それとも事業部にあるのか、取扱品目が社の全商品なのか一部商品なのか、営業地域は全国なのか一部エリアなのか。それだけに、参考になりそうな事例を探すのに苦労している人が多いようです。

インターネット上のサービスを売る企業(SaaS製品を販売するIT企業等)のマーケティング戦略を、実際に工場でモノを作る企業がそのままマネするのは容易ではありません。

例えば、極めて高額なB2B商材などでは、問い合わせから成約まで数年かかるようなケースがあります。これでは、立ち上げ間もないマーケティング部門では、いくら業績貢献度をアピールしたくても時間がかかりすぎてしまうでしょう。どんなKPIやKGIを設定すれば良いのか、判断が分かれる部分です。

ほかにも、Adobe Marketo Engageを社内の基幹システムにつなげたくとも部門間の調整がうまくいかない、マーケティング用語とはいえ横文字を使いすぎると営業部門に怪訝な顔をされるなど、マーケターの“あるある”についても、さまざまな観点からトークが展開されました。

レガシー製造業あるあるトークでは、各テーマに対して5人のユーザーがそれぞれの工夫を語りました。


  • MQLを上手く営業に連携し、​成果を上げるためには?
    →『営業向けの勉強会をし、マーケターと協業して成功した営業事例を話してもらうことでマーケターと組む意義を理解してもらう活動を地道に実施しました』『インサイドセールスがいないため、マーケター側でリサーチと商談起票まで実施する体制を整え、営業が活動しやすくしました』

  • 幹部や営業の理解を得るために小さな成功事例を作りたいが、​成約までのリードタイムが長く、成功事例を創出できない

→『本当は売上まで追いたいが数年かかってしまうため、小さな成功体験として営業にパスした案件の数を中間指標として活動し始めました』

  • 社内の基幹システムが「営業がわかれば良い」スタイルで​何十年積み重なっており、整理されていない​

→『営業は企業単位の案件管理、マーケターは個人単位のリード管理。このギャップを埋めるためにどうすれば良いのか、まずは互いの理解から始めました』

  • マーケティング組織が存在せず、ノウハウが不足。​ボトムアップでの改革に限界がある​

→『第三者である外部の有識者から経営層に働きかけてもらうことで、会社全体としてビジネスコンサルティングを依頼してノウハウを得る機会を得られ、トップダウンで全体的にプロジェクトが進みました』

  • マーケター出身じゃない人も多い!​人材育成や自己啓発、どうしている?

→『外で学んだことを社内で体系化することを重視。今回のユーザー会のような他社の知見を大切にしています。マーケターとして手段先行にならないように、“マーケティングのディレクションができるようになるには”というテーマで組織デザイン、部門連携、KPI設定について社内教育しています』


今回の登壇者5人は全員 Japan Adobe Advocates という Adobe Marketo Engae エキスパートが選出されるアワード受賞者であり、レベルの高いトークはもっと聞きたくなる内容ばかりでした。

本来なら開示が難しい事例であったり、担当者レベルの本音なども聞けるのがMUGの魅力の1つです(本記事では関係者の許可をいただいた内容のみ掲載)。

知識の共有、そして交流を力にデジタルマーケティング推進

イベント後半では、Adobe Marketo Engageの収益サイクルモデル(収益モデル)をどのように設計しているかという、ユーザーの疑問に真っ正面から答えるパートも設けました。

MQL(Marketing Qualified Lead)、SQL(Sales Qualified Lead)といった専門用語が飛び交いつつ、さらに「リサイクル」扱いになったリードの再フォローやその間隔をどうするか。まさにAdobe Marketo Engage 設定解説塾、という様相でした。

例:運用が進んでいるパネラーの収益サイクルモデル

トークセッションが一段落した後は、5人の登壇者が聴講者のテーブルディスカッションに参加。交流にもしっかりと時間を充てつつ、約2時間のイベントはあっという間に終了しました。

最後に挨拶した若園さんは、製造業への熱い想いとともに「製造業が元気になれば日本全体がもっと元気になる」と力強くアピール。課題とうまく向き合いながら、デジタルマーケティングの効果を最大化していこうと参加者に呼びかけました。

アンケート結果は満足度100%という驚異的な数字に。レガシー製造業のB2Bマーケティング担当者という、似た境遇のユーザー同士で集まった事で共感が高まったからではないでしょうか。

フリーコメントでは 『いつもよりさらに仲間意識を持って、同じ悩み、課題、認識を持てて、話しやすかった。』『製造業はこうだからと自分で限界を決めていたが、やるべきことが見えて参考になった』といった言葉が並んでいました。

先輩ユーザーの進んだ取り組みを聞いて”レガシー製造業でもここまで目指せるんだ” と、挑戦する勇気が湧いてくる内容だったことが伺えます。

ユーザー主導で実施する分科会。登壇者5名がしっかり準備したからこその満足度。そして明日から行動を起こせるお持ち帰りTipsも多数あり、参加者を唸らせる神回となりました。

マーケティング関係者から度々耳にするのが「マーケティング担当者は社内では孤独で、相談相手が少ない」という声です。営業部門の規模に比べて、それを支援するマーケティング部門は人員の数もノウハウの蓄積も少ないとされます。

それだけに、社外のマーケティング担当者と交流し、相談しあえる今回のようなコミュニティイベントは貴重な機会になっているようです。

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