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子育てと自分育てとマインドフルネス

当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からMBSR講師養成講座を開催しています(2022年10月開講3期はこちらから)。

その1期生として2021年10月からのプログラムに参加されている叶香代さんにご寄稿いただきました。臨床心理士、公認心理師、 小学校と大学でスクール・カウンセラーとしても勤務されています。ご自身の子育てやお仕事での経験も踏まえ、マインドフルネスの実践を通じて感じたことを書いていただきました。(ご本人プロフィールは文末)。

6月からは、金曜日の夜にMBSR8週間コースを開講予定です。

以下、叶さんの寄稿です。

子育てや心理の仕事をしながら、マインドフルネスの練習を重ねる中で、感じたこと。

一生懸命の罠


子育てをする人は、まだ言葉をしゃべらない赤ちゃんとどうやって心の絆を育てていくのでしょうか?お座りしたり、ハイハイしたりするようになると、赤ちゃんを大切に思う余り、目が離せない、気が休まらない、危ない!大変!これはダメ!あれはダメ!と、気付いたら叱ったり、制限したりというコミュニケーションばかりになっている。赤ちゃんの方も、欲求不満でご機嫌斜め、ちっとも言うことを聞いてくれない、という状態になっている。叱ってばかりいることに、罪悪感を持っていても、どうしたらいいのか分からない、という悩みは多く聞かれます。私はこれを「一生懸命の罠」と呼んでいます。こうした悩みに陥る時は、本当に一生懸命、わが子をより幸せにしたい、将来困らないようにしたい、と気付かないうちに夢中になって、我を忘れてしまっているように思います。
私は、この一生懸命の罠には、子育てに限らず、色々な状況ではまるのですが、多くの方が、特に子育てで、この状態に陥りやすいのは、背景に子どもへの深い愛情があるからだと思います。

注目の力が愛着を育てる


こんな時は、赤ちゃんのしていることをそばで良く見て、積木を1つ積めた様子を見て「できたね」、積もうとしたら落ちてしまって「あー、おっこちちゃったね」,
怒った様子を見て「怒ったね」「嫌だね」と、嫌な気持ちを、一緒に、じーっと感じて、そして伝えます。何かを探している様子で、「どこかな?」「ないねー。」」見つけたという瞬間に、「あったね。」「嬉しいね」と一緒に感じて喜び合うということをします。
こうして、赤ちゃんは、そばにいて、注目してもらい、自分のやっていることを言葉に出して言ってもらう、その場のその瞬間の気持ちや感情を一緒に
感じて、言葉に出してもらう体験をします。この体験で、赤ちゃんは、認められていると感じて、養育者との絆が育っていきます。この絆が、自分の内側外側への基本的信頼感となる、愛着と言われるものです。
「えらいね~」「すごいね~」という価値判断の言葉より、そのままの様子と、そこにある感情を一緒に感じて一緒に居ることは、マインドフルネスと通じる感じがします。

MBSRの開発者であるJon Kabat-Zinnは、マインドフルネスの実践につながる7つの態度を挙げています。その中に、価値判断をくださない、というものがあります。それは、物事を良し悪しで判断する視点を一旦保留し、まずそこに生じているものをありのままに眺め、認める態度を指します。

褒めるとはまた違う、ただ一緒に感じることの大事さ。

1日たった5分で育つ


この赤ちゃんとのやり取りは、1日たった5分で良いそうです。子育てをするために生活があるわけではなく、生活の中に子育てがあるわけで、長時間子どもを見ていることは現実的ではないと思います。昔から心理学の研究でも、関わる時間の長さより、質が大切と言われています。そして、子どもが育つためには、この注目の力が必要と言われています。上記の様に、やっていることをそのまま認める肯定的な注目には、肯定的な反応が返ってきます。心の絆が育ってくれば、多少気が進まなくても、この人の言うことなら聞くか~。という我慢も身についてきます。注目されないよりはましということで、養育者の気を引くために怒られそうなことをどんどんやって否定的な注目でも良いので得ようとすることまで起こります。このように子供の成長には、注目されること、関心を向けてもらうことが必要と言われています。

「関わる時間の長さより、質が大切」というのも示唆に富む言葉です。忙しい毎日のなかでも、他者、自分、物事にやさしい関心を向ける態度があれば、それだけで関係性や体験の質は大きく変わるでしょう。日常の中での態度を養う上で、マインドフルネスの実践がサポートになります。その一つの実践が以下に述べるボディスキャンと呼ばれる練習です。

ボディスキャンで自分の身体に注目する


大人はどうでしょうか?ボディスキャンは、注意を、身体の各部位に順々に向けては手放す練習です。この時に、事務的に行うこともできますが、同時に、この部分はどうしているかな?と関心を向けて、暖かい眼差しを自分に向けてみると、私は、自分自身の身体との愛着という絆が、しっかりと育ってくるように感じます。もちろん、遠い昔、赤ちゃんの頃に養育者から与えられた注目の力や、肌と肌の感覚は、自覚できない奥の方で自分の存在を感じる素となって効力を発揮しているのかも知れません。しかし、それが養育者から、どのくらい与えられたのか、また、たくさん与えられていても、受けとる感性がどれだけあったのかによって、十分だったり、不十分だったりも考えられます。どういう風であっても、それは、遠い昔の過去のことです。私は、今からでも、自分でその素を育てるということが、できるような気がしてきたのです。IMCJの講師養成講座でのボディースキャンのガイドで、「身体に息という栄養を送ります」というフレーズを知り、これがとても気に入っています。ボディースキャンは、40分はかかりますが、1回でもできれば、1回分育つ。1回と0回では大違いだと思います。(ちなみに、育てよう育てようと結果を求める気持ちを脇において行うことがポイントと言われています。。。)
また、朝起きた時にわずかな時間で良いので、自分の身体を全体的に感じて、呼吸を感じてみることも良いそうです。これは、スタティーグループというIMCJで行われている、週一回のマインドフルネスの勉強会で学びました。私がマインドフルネスの練習を継続していくことに欠かせないのは、こうした実践者の集まる学びの場だと思います。講師の先生や仲間が、マインドフルネスを生活の中に取り入れるヒントを嬉しそうに話しているのを直接聞くと、すごく簡単で美味しいレシピを聞いた時の様に、すぐやってみることになります。そして、コレイイ!と続けられるものもあります。

ボディスキャンとは、40-45分かけて、体の感覚に順々に気づきを向けていく練習です。この練習は注意の制御という観点から説明されることもありますが、また別の視点からは、自分との関係を見直す、ということもあります。大人になると、やさしい関心を向けてもらえる機会というのはなかなかないかも知れません。この実践が、自分との関係性を見直すきっかけにもなるでしょう。


私達は、子どもにすべて伝えたい、そして少しでも有利に生きて行って欲しいと、ついつい必死になり、一生懸命の罠にはまっています。しかし、こうして自分の事を振り返ると、不十分でもまあまあ大丈夫だという風に思えてきます。こうして、いつでも自分で、続きの自分育てをすることができると感じるからです。大丈夫だ、というか、それしかないというような感じかも知れません。
子育ても自分育ても、育てることは共通しています。やみくもにがんばっていることに気付いたり、結果を期待して、思い通りにならないと落胆していることに気付いたり、自分のエゴで心乱れていることに気付いたりします。そうならないようにしようとするより、そうなっていることに気付くために、マインドフルネスのトレーニングを続けていくことは、私にとって必要な事だなと感じています。

叶香代 プロフィール

臨床心理士、公認心理師、 小学校と大学でスクールカウンセラ―業務に従事。
日々のカウンセリングの仕事の中で、様々な方と出会ってきました。
生真面目すぎる方。完全な子育てをしたいあまりに、うっかり怒鳴ったり、手が出そうになったりでひやっとしたり、自分の事を責めたりするようなことで悩んでいる方。もう少し穏やかに子育てをしたい。
できれば楽しんで子供と一緒に成長したいと考えていらっしゃる保護者の方。また、子育ては問題ないけど何故か空虚感がある方。 私自身は、子育てでは、思わず出た声の大きさに、自分で驚くこともありました。自分自身に起きていることにいかに無頓着でいたのかを実感する出来事でした。
マインドフルネスを学ぶこと、学び続けていくことが、が自分にとって必要な事であり、また、ぜひ皆様にご紹介して、ご一緒に学んでいきたいと思っております。
マインドフルネスを体験し継続して試み続けることで、以下のようなことが起こることがあります。
1、様々な悩み事について優しくゆったりと向き合っていたら、自然と解決方法が浮かんでくるようになった。(以前はイライラ焦りながら解決を急いだ)。
2、家事や仕事が全てバラバラで全部しなければいけないと思っていたけれど、今は自分にとって重要なことは何かを考えてじゅうようなことを優先してできるようになったので満足感がある。
3、自分の人生にとって本当に大切なことをじっくり考えて、愛する人や大切なことに費やす時間を作れるようになった。
以上のようなことについてご自身が気づいて大切にすることで、お子様の問題は自然と解決する場合もあります。中には一時的に前よりも深刻な問題に直面する場合もあるかもしれません。
それでも、マインドフルネスを日々の習慣に取り入れることで、そんな難しいと思っていた困りごとにも優しくなれて、本当は困りごとを家族と解決しようと思えることが自分の人生にとって貴重な瞬間だという風にも思えるかもしれません。
体験なさる方の個性や状況によってマインドフルネスは様々な知恵や試練を与えてくれるのですが、その為の一番の伴侶となるあなた自身を育てるお手伝いができればと願います。

叶さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)

また、この5−6月期は、以下のMBSRコースも開講しています(日程は開講日、名前のあとはMBSR講師資格以外の関連する分野)。
①5月17日(火曜10:00-12:00) 宮本:MBCT, MBCL, MBPM講師
②5月18日(水曜19:45-22:15) 小保方:精神科医
③5月23日(月曜13:00-15:30) 井上:MBCT, MBCL, MBPM講師
④6月3日(金曜10:00-12:30) 粟野:企業、コミュニティ
⑤6月3日(金曜19:45-22:15) 叶:臨床心理士、スクールカウンセラー
⑥6月5日(日曜8:00-10:30) 家永:作業療法士(精神科)
⑦6月5日(日曜19:45-22:15) 江崎:公認心理師、産業カウンセラー
*MBCT:マインドフルネス認知療法
*MBCL:マインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング
*MBPM:痛みのためのマインドフルネス

最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!