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トラウマとヨガ〜「トラウマをヨーガで克服する」ブックレビュー〜

すべてのトラウマは、「体からの疎外と断絶」であり、「今ここにあることのできる能力の低下」であるという。

ここ最近、マインドフルネスのボディスキャンを行うことで、体のケアをもっと優先させる必要を感じており、今までの体験から「ヨガ」を日常的に行うことがよいのではないか?と感じるようになり、実践している。

トラウマ研究の第一人者であるバン・デア・コルクがセンター長のトラウマセンターにおいて開催されている、トラウマ・センシティブ・ヨガについて解説された、「トラウマをヨーガで克服する」を読んだので、ここにレビューと感想を記す。

このYou Tubeで、彼は「ヨガは、投薬治療よりも長期的にみれば効果が高い」と述べている。

「トラウマをヨーガで克服する」には、興味深い事柄が、いきいきと描写されており、珍しく1日で読み終わってしまった。すごく面白いので興味がある方はぜひ手にとって読んでいただきたい。



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「トラウマをヨーガで克服する」

勉強になる文章が散りばめられていたので、ここで、気になった文章を記載しておく。

ヨガほど、素晴らしい実践はない。ヨガは人間の苦しみー特に身体の中のそれーに対して真正面から取り食うことを志向する、古来の体系の要である
トラウマの刷り込みを克服するためには、身体感覚を味方につけることが不可欠である
トラウマが残すもっとも深い、爪あとは、耐え難い身体感覚によって「たたきつぶされた」という、この永遠に続く感覚かもしれない
われわれが憎んだり怒ったりすれば必ず、生体も憎んだり怒ったりしている。われわれが愛し、望み、期待すれば必ず、生理的にも生き生きと、感動的に、愛し、望み、期待している。嫌悪・愛・希望は、「心という心理学的状態などではない。それらは、その生命体にくまなく存在する、肉体の状態」である。(トーマス・ハンナ)

トラウマの克服には、ヨガによって、体の内側に意識を向け、自分の体に耳を傾ける行為が必要である。体ととのつながりを再び見出すこと、体に安心して住んでいられるようになること・・これが必要不可欠である。

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トラウマ・センシティブ・ヨーガ

PTSDの治療とは、人が過去に属する的外れな要求に従って感じたり行動したりすることでなく「現在」にいきるよう手助けすることである。ーヴァン・デア・コルク

トラウマの研究・治療機関として名高いトラウマセンターでは、「トラウマ・センシティブ・ヨーガ」を提供している。このヨガは「体と和解し、自分の体が再び機能し始める経験から学び、体を自分自身のものとして取り戻すための方法」であるという。

トラウマ関連の問題にたいして専門的な技術を持つヨガのインストラクターと医療者のコラボレーションの中で開発された。

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トラウマ・センシティブ・ヨーガの4つのテーマ

(1)「今この瞬間を経験すること」

トラウマは、「現在にあることができない病」である。

「PTSDの治療の目標は、人が過去のものである的外れな要求に従って感じたり行動したりすることなく、現在に生きるよう手助けすることである」

エクササイズ:呼吸に気づく、山のポーズ

スタッフたちは、サバイバーを「今この瞬間の体験」に結びつけるために「身体的手がかり」を利用する。

例えば山のポーズでは、「地面を感じるため、つま先やかかとを動かしてみるといいですよ」などと指導する。(画像は戦士のポーズII)

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(2)選択すること

トラウマとは、選択肢がない状況の経験である。よってトラウマからの回復には、「主体感とコントロールしている」という内的な感覚の回復が必要だという。

トラウマのある人は、穏やかにはぐくむ形で、「自らの体の中に在る」ための道を探らなければならない。

トラウマ・センシティブ・ヨガは、サバイバーが「自分の体と経験に合わせて選択できるように」組み立てられている。

「苦痛があったらいつでもやめていいですよ」というような選択できる配慮が必要になる。

エクササイズ:首まわし

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(3)有効な行動をとること

選択肢の欠如に加えて、トラウマの状況は、エネルギーのすべてが脅威からの逃走に向けられているにもかかわらず、何らかの理由で逃げることができない経験である。

逃げられるように体の状態が覚醒するのに、逃げられないのである。

このような無力感を味わっってきた人たちに、「有効な行動」を取る力を回復してもらうためには、トラウマに対するヨガではどんなことができるだろうか?

ヨガのポーズを「有効な行動」として実践していく。

エクササイズ:自分を快適にするための行動を能動的に取る。

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(4)リズムを作ること

サバイバーは、「他の人達と歩調が合わない」「自分自身とかみあわない感じがする」という人が多い。その困難は、「協調性の欠如」と「断絶」にある。「トラウマは孤立している」(ジュディス・ハーマン)のである。

解離症状もあるような、多くのクライアントは「無意識のうちに呼吸をこらえ、絶えず筋肉を緊張させている」ところがその緊張感や不快感に気づいていない。

そのために、体の生理機能と身体感覚レベルの情動が同調しなくなっているのである。生理的にこわばった状態だからこそ、新しい状況に柔軟に適応しにくいのである。

多くのサバイバーは、バイオリズムの乱れ、食事、睡眠、活力といった人生の基本的リズムの乱れについて言及している。体の自然で律動的なメッセージが遮断されているからである。

エクササイズ:太陽の息

クライアントとインストラクターが、一緒に動作することによって「個人内のリズム」「個人間のリズム」を作りだすことができ、再び世界とつながっていくことができる。

トラウマサバイバーは「繰り返しトラウマの再現の中にはまり込んで、決しておわることがないように感じられる」(ヴァン・デア・コルク)

ヨガは「物事ははじまっって、終わるのだ」ということを経験する機会を多く提供してくれる。

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まとめ

いかがだっただろうか?

核の部分だけまとめたのだが、実際にはトラウマを抱えた当事者に向けての章や、援助職の方にむけた章もあり、具体的なアドバイスやトラウマ・センシティブなヨガを実践する上での注意事項が惜しみなく書かれている。

家でプラクティスするための、ヨガのポーズと解説も掲載されている。

肩回しや、首まわし、チャイルドポーズ、木のポーズ、山のポーズ、ボートポーズ、猫のポーズなど基本的なポーズが多い。それらをゆっくり丁寧に、選んでもらいながら、実施していくのだろう。

体とのつながりを取り戻す・・・ということが、トラウマ回復からの最後の砦なのだな・・と知的にも理解した感じとなった。

そんなわけで、トラウマ・センシティブ・ヨガとても興味を持ったので、調べたところオンラインでも専門家向けのトレーニングが受けられるようなので、早速申し込んでみた。受講したらまた、報告したい。

とにかく日々のヨガの実践を通じて自己探求していくことが楽しみである。

追記

その後、トラウマセンターのトラウマ・インフォームド・ヨガの20hrの講座を受けたので、そこで学んだことや、自分の臨床体験をあわせて、以下で講座を開催します。心の専門家が今回は対象です。

2021/3/22 20:00より開催。


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