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【経済本100冊】Vol.57:『経済で読み解く日本史〈室町・戦国時代〉』(著:上念司)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、上念司さんの『経済で読み解く日本史〈室町・戦国時代〉』です。

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基本情報

タイトル:経済で読み解く日本史〈室町・戦国時代〉
著者名:上念司
初版発行年月:2019年6月
ページ数(大体):約250pg
難易度所感〈五段階〉:★★★★ ややムズい

大和の適当あらすじ

室町時代~戦国時代初期に至るまでの混乱を経済の観点から読み解こうとする、上念司プレゼンツの新たな日本史教科書。


全体の感想

日本史を経済から読み解こうと言う、昨今話題になっているジャンルの解説本で、かなり本格的です!歴史オタクにはオススメです。シリーズものになっており、本書では室町・戦国時代を扱ってますが、通常の歴史の授業では、室町から戦国と言うと、応仁の乱で一気に戦国時代に突入したと言う風にしか教わりません。しかし実際は、応仁の乱で一気にガラッと変わったと言うよりも、その前から様々な利害対立の混乱が複雑に入り乱れていて、そこからなし崩し的に戦国時代になったのだと言うもので、そこが分かると、より歴史の流れを重層的に捉えられるようになります。

特に、天台宗や臨済宗等の寺社勢力が、宗教勢力と言うよりは巨大企業・財閥のような様相を帯びており、日本の金融政策にも多大な影響を及ぼしていたことは目からウロコで、「やはりつまる所神よりも金何やなぁ…」何て思ってしまったりしました(笑)


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >

★ワルラスの法則とは
★マネーストックとは
★マネタリーベースを増やすとマネーストックが増える
★室町時代の金融は寺社勢力と土倉が担った
★日明貿易の意義は銅銭輸入にあった
★明のデフレが日本にも波及して室町幕府が不安定化した
★室町幕府と国際金融のトリレンマ
★足利義持の日明貿易停止と言う愚かな決断
★出土備蓄銭が物語る室町時代の景気動向
★五山十刹は巨大な経済ネットワーク
★寺社勢力の増長と朝廷の混乱
★応仁の乱で京都五山の経済システムが崩壊
★宗教戦争と新たな経済システムの構築


< 各詳細 >

★ワルラスの法則とは
・・・「ワルラスの法則」と呼ばれる、マクロ経済学の恒等式がある。これは、「モノとお金のバランスで経済の先行きは決まる」と言うものである。モノ不足になると物価が上がり(インフレ)、お金不足になると物価が下がる(デフレ)。そしてモノ不足のインフレは理解しやすいが、お金不足のデフレが曲者である。意外にも人間は毎年2%程度賢くなる。なので同じ労働力を投入しても、慣れや効率化で、翌年にはより良いものがより安く沢山できてしまう。これをワルラスの法則に当てはめると、モノは毎年2%位増えると考えることができる。しかしお金は人工的に刷らない(作らない)と増えないので、意図的にお金を増やして金融調節をしなければならないのである。

★マネーストックとは
・・・日本全体に存在する貨幣の量のことを「マネーストック」と言う。マネーストックは「現金+日銀当座預金+銀行の預金」になる。銀行は貸出を行う際に、口座の数字を書き換えることで預金を創造すると言う「信用創造」を行う。なので銀行が融資に積極的になれば口座残高は幾何級数的に増えてマネーストックが増加する。しかしマネーストックが増加するには、ベースになるお金そのものが増加しないといけない。現代の日本で言えば、日銀がお金の製造に積極的なら、銀行は安心してお金を貸し出すことができる

★マネタリーベースを増やすとマネーストックが増える
・・・世の中全体に溢れるお金を「マネーストック」と称するのに対し、その根幹を成す日銀がコントロールするお金のことを「マネタリーベース」と言う。マネタリーベースは「日銀がコントロール可能な現金+日銀の当座預金」である。マネタリーベースの伸び率が高くなると、いずれマネーストックも増加し景気が良くなり、その反対にマネタリーベースの伸び率が低くなると、いずれマネーストックも減少して景気が悪くなる。マネタリーベースに比べてマネーストックは図体がデカいので、マネタリーベースをどんどん増やしても、マネーストックは少ししか増えないが、図体がデカいので少し増えるだけでも、経済への影響は大きいのである。

★室町時代の金融は寺社勢力と土倉が担った
・・・室町時代は国産の貨幣を発行せず、支那(しな、中国)からの銅銭輸入に頼っていた。なので「貿易をすると貨幣が増える」と言う金融政策を行っていたことになる。また、室町時代では土倉や酒屋等が金融業に勤しみ、現代的な意味で言う民間の金融機関の役割を果たしていた。彼らに元手となる資金を供給していたのは寺社勢力である。そしてその寺社勢力こそが支那との貿易の担い手だった。留学僧の勉強はおまけみたいなもので、本業としては寺社勢力がリスクを取って土倉に対する貸出を増やし(マネタリーベースの増加)、土倉がその資金で貸出を増やすと、日本全体に貨幣が十分に流通して(マネーストックの増加)、好景気になったのである


★日明貿易の意義は銅銭輸入にあった
・・・室町時代の日本にも、国産貨幣は存在していたが、銅山が中々見つからず、必要に応じて大量鋳造することができなかった。そこで日明貿易で銅銭を輸入し、それをそのまま自国通貨として流通させることで対応したのである。日明貿易の輸入品に「銅銭」が含まれるのはその為である。当時の日本と支那との為替レートは凡そ1:7であり、しかも海を渡った瞬間に自動で日本の流通価値に両替されるので、日明貿易は大変儲かったのである。何故ここまでレートに差が付いたかと言うと、日本が国産貨幣を発行せず、実体経済の発達に比べていつも貨幣が不足気味であったからである。


★明のデフレが日本にも波及して室町幕府が不安定化した
・・・室町時代、日明貿易で日本は銅銭を輸入していたが、実は支那では明朝が成立する遥か前に銅を掘り尽くしていた。その為、明朝ではやがて銅銭が不足気味となり、それを補う為に紙のお金(紙幣)を発行した。紙幣を大量に刷ったことで通貨価値は下落したが、11%程度のほどよいインフレとなった。しかし、明朝の経済官僚が通貨価値の下落を問題視して、今度は紙幣を回収して大増税を行い、朝貢貿易の回数も制限した。これによりデフレと財政悪化を招くこととなり、これを境に日本にも銅銭が入って来なくなった。当然日本の景気も悪化し、室町幕府の政権基盤も不安定化してしまった。


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