見出し画像

【経済本100冊】Vol.55:『奇跡の経済教室【基礎知識編】』(著:中野剛志)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、中野剛志さんの『奇跡の経済教室【基礎知識編】』です。

画像2


基本情報

タイトル:奇跡の経済教室【基礎知識編】
著者名:中野剛志
初版発行年月:2019年4月
ページ数(大体):約330pg
難易度所感〈五段階〉:★★★ ほどよい

大和の適当あらすじ

最近話題の現代貨幣理論(MMT)とは何かを、理論的に、経済初心者にも分かりやすく教えてくれる本。


全体の感想

「貨幣とは負債の一種である」と言う、まさに物々交換的な考えでお金を捉えていた人からすれば天と地がひっくり返るような、驚きの理論です。しかし一見突拍子も無さそうに見える考えに見えますが、よくよく論理を辿ってみると、この理論だと銀行の信用創造や、政府が巨額の国債を抱えていても大丈夫な理由が上手く説明できます。そう言う意味で、経済上の不可思議なもやっとした所を、より合理的に理解する上で画期的な経済理論であると言えます。

「基礎知識編」と「戦略編」の二部構成となってますが、素人にも本当に一から理解できるように、経済の初歩的な所から丁寧に順を追ってくれている点や、文字が大きくて見やすく、要点を太字にしてくれている所何かは、実にありがたいです。経済政策では、取り合えずお金の発行量を増やせば良いと言う、貨幣数量説的な考えを持つ派と、お札を刷るだけでは駄目でガンガン事業投資をするべきだと主張する派があって、相性良さそうで微妙にギャップがある所を、このMMTでは上手くそのギャップを埋められるような説明ができている所がいいなと思いました。


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >


★商品貨幣論、信用貨幣論
★現代貨幣理論における通貨の価値
★信用貨幣理論と銀行の信用創造
★銀行の貸出は、借り手の返済能力の制約を受ける
★仮想通貨の持つ致命的な欠陥
★マネタリー・ベースが増えるから預金通貨が増えるのでは無い
★銀行の国債購入は財政ファイナンスとほぼ同じ
★財政赤字が貨幣供給量を増やすことに繋がる
★財政赤字の増大で国債金利が上昇することは有り得ない
★財政支出の拡大=需要の拡大=貨幣供給量の拡大
★金融緩和だけではデフレ脱却はできない
★政府は債務を完全に返済し切る必要が無い
★財政赤字の制約を決めるのはインフレ率
★税は財源確保の手段では無く、物価調整の手段である
★法人税減税はデフレ対策になり得ない

< 各詳細 >

★商品貨幣論、信用貨幣論
・・・一般の人が抱いている貨幣のイメージは、貴金属のような有価物との交換が保証されていると言うものであり、これを「商品貨幣論」と言う。対して、貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である、とする考えを「信用貨幣論」と言う。歴史的にも、商品貨幣論での貨幣の起源である、「物々交換の不便を解消する為に貨幣が生まれた」と言う証拠資料は発見されていない。それどころか、硬貨が発明されるより数千年も前のエジプト文明やメソポタミア文明には、債権・債務のやり取りを計算する為の信用システムが存在していたことが分かっており、これは信用貨幣論を裏付けるものとなっている。


★現代貨幣理論における通貨の価値
・・・現代の通貨は、貴金属との交換が保証されない「不換通貨」であるが、それにも関わらず、価値のあるものとして流通しているのは何故か?これには諸説あるが、「通貨は、納税の手段となることで、その価値を担保している」と言う説を「現代貨幣理論(MMT)」と呼ぶ。つまり、国家が国民に通貨での納税義務を課すことで、通貨は「国家に課せられた納税義務を解消することができる」と言う価値を持つことになる。その価値故に通貨は国民に財・サービスの取引として、納税以外の目的でも広く受け入れられる。このように、現代貨幣理論は、「通貨の価値を裏付けるものは、租税を徴収する国家権力である」と唱えるのである

★信用貨幣理論と銀行の信用創造
・・・信用貨幣理論では「貨幣の創造=負債の発生」である。しかし、債務を負いさえすれば誰でも貨幣が創造できる訳では無く、債務不履行に陥る可能性がほとんど無いと信頼される負債のみが、「貨幣」として受け入れられ、流通することになる。現代経済ではこれは「現金通貨」と「銀行預金」が相当する。現金通貨を創造するのは中央銀行だが、預金通貨を創造するのは銀行であり、これを「信用創造」と言う。銀行は集めた預金で貸出を行うのでは無く、貸出先の口座に金額を記載して、新たに預金を創造しているのである。また、借り手が債務を銀行に返済すると、預金通貨は消滅するのである


★銀行の貸出は、借り手の返済能力の制約を受ける
・・・銀行の信用創造では、貸出の段階で預金は創造されるので、銀行の貸出が元手資金の量的な制約を受けると言うことは無い。しかしだからと言って何の制約も無しに無限に融資ができると言う訳でもなく、「借り手の返済能力」が制約となる。逆に言えば、借り手側に返済能力がある限り、銀行はいくらでも貸出を行うことができてしまうのである。とは言え、銀行は万が一の現金通貨の引き出しに備えて、中央銀行に一定額の準備預金を設けなければならないと法令で決められており、この準備金制度もまた、銀行の貸出の制約となっている

★仮想通貨の持つ致命的な欠陥
・・・画期的な技術とよく賛美されるビットコインにはいくつかの致命的な欠陥がある。先ず、希少価値を担保する為に、発行量に上限が課せられているが、供給量に上限があると言うことは、利用者が増える程相対的に通貨は少なくなるので、デフレに陥ってしまう。だからと言って、ビットコインが誰でも発行できてしまうと、通貨量が多くなり過ぎて今度は暴落してしまう。また、そもそも仮想通貨では納税義務の解消はできないし、本物の通貨と違って、銀行の信用創造とも関係が無い。その為、仮想通貨の価値を支える基盤的な価値が存在しておらず、「将来の社会の在り方を変える」等と期待しない方がいいだろう。


★マネタリー・ベースが増えるから預金通貨が増えるのでは無い
・・・デフレとは需要不足、即ち民間に資金需要が無い状態である。そして借り手に資金需要が無い限り、銀行の貸出(=預金通貨の創出)は増えることが無い。従って、デフレの時には、いかに中央銀行がマネタリー・ベース(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作して、各銀行の準備預金を増やした所で、借り手に資金需要が無いので貨幣供給量を増やせず、インフレを起こすことはできないのである。これは、馬が水を飲むのは、水が飲みたいからで、水を飲みたくない馬を無理やり水飲み場に連れて行っても、水を飲ませることはできない道理と同じである。


これより先は有料コンテンツとなります。価格は200円と、週刊少年誌よりも安く変える値段ですので、更にサクッと学びを深めたい方は是非ご購入下さい。

↓↓↓その他の経済関連の書評は下記リンク先をご参照下さい↓↓↓
【経済本書評】超ネタバレ!経済本100冊読破&書評まとめ


ここから先は

2,464字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?