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【経済本100冊】Vol.60:『経済で読み解く日本史〈明治時代〉』(著:上念司)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、上念司さんの『経済で読み解く日本史〈明治時代〉』です。

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基本情報

タイトル:経済で読み解く日本史〈明治時代〉
著者名:上念司
初版発行年月:2019年6月
ページ数(大体):約250pg
難易度所感〈五段階〉:★★★★ ややムズい

大和の適当あらすじ


激動の明治時代を経済の観点から読み解こうとする、上念司プレゼンツの新たな日本史教科書。


全体の感想

明治時代になると、少し政治や経済の状況が複雑になるので、本書も難易度がこれまでのシリーズ本よりやや高めですが、明治時代は日本が国際経済の流れに本格的に参入した時代でもあったので、日本を通じて世界経済の流れも掴めるのがいいです。特にフォーカスされているのが金本位制で、これによるデフレレジームが世界の混乱や戦争を惹起したことを上念氏は力説しています。経済が分かると、長期的視野に立った国家の戦略をどうすべきかも見えて来るので、正に経済と政治は密接に繋がっているんだなぁと言うことをしみじみと感じた次第です。


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >

★イギリスの金本位制
★マルクスはデフレ不況を資本主義の限界と読み間違えた
★金本位制からの離脱=債務のデフォルト
★新貨幣条例の設計ミス
★廃藩置県は経済政策でもあった
★秩禄廃止の流れ
★幻に終わった、不平士族の為の東北一大開墾プロジェクト
★アメリカより3年早く金本位制に移行した日本
★日比谷焼き討ち事件を煽ったのはかつての不平士族
★日露戦争後の日本は緊縮政策を求められた


< 各詳細 >

★イギリスの金本位制
・・・「金本位制」とは、政府が発行する通貨の裏付け資産として、金(ゴールド)の保有を義務付ける制度のことである。つまり、一定の交換レートに従って、紙幣や銀貨等を必ず金に交換できる仕組みである。ところが、金は産出量が少ないので、金本位制を採用する国の自国通貨の量が減少してしまう。国内的にはデフレ圧力が強まって不況になる。1844年に、当時の世界経済の中心だったイギリスは逸早く金本位制を確立した。イギリスと交易する国々にとって、イギリスの精度を模倣すれば、煩雑な貿易決済業務が効率化できるので、日本も含め、他の国々もイギリスの金本位制に倣った。


★マルクスはデフレ不況を資本主義の限界と読み間違えた
・・・1840年代はまだゴールドラッシュの時代だったので、イギリスの金本位制に問題は無かったが、やがて金の産出量が減ると、1850年代後半辺りからデフレに陥り、世界的に景気が悪くなった。当時は労働者保護制度は無いので、大デフレ不況に陥ったイギリスでは、物価下落に対応して極端な賃金カット施策が実施され、労働者に皺寄せが行くことになった。そんな時にマルクスの社会主義思想が人気を博す。マルクスは資本主義の限界を説いたが、実は不況は資本主義の限界と言うより、貨幣量不足によるデフレで起きたもので、それに対する政策当局のミスが問題だったのである。なので資本主義そのものに問題がある訳では無い。


★金本位制からの離脱=債務のデフォルト
・・・明治時代において世界各国が金本位制を離脱すると言う選択は有り得ないことだった。多くの国が金本位通貨建ての債務を背負っており、金本位制からの離脱はこの債務のデフォルトを意味した。債権者がそんなことを許す筈は無く、また、政府首脳も今後の国債の安定消化を考える限り、金本位制からの離脱等有り得ないことだった。金本位制を離脱した瞬間に、外債は即座に償還を求められるだけでなく、将来的に国債の引き受けをしてくれる投資家がいなくなり、国家破産を招く可能性があったからである。貿易決済業務の効率化と引き換えに、世界各国はとんでもないリスクを抱え込んでしまったのである。


★新貨幣条例の設計ミス
・・・明治時代を迎え、日本政府は新貨幣条例を布告した。これは当時の金本位制と国内の通貨システムを連動させる為の措置だった。金貨を本位通貨としつつも、当時のアジア各国は貿易決済を銀貨で行っていた為、銀貨を補助通貨とする仕組みにし、これを「金銀複本位制」と言う。金の産出量が少ないのに比べ、銀は産出量が多いので、当時の日本にマッチした制度だった。しかし設計ミスで、銀貨については当時の基軸通貨であるメキシコドルラルと銀含有量が同じ、貿易決済用の一円銀貨と言う特殊な銀貨を鋳造した。その為、貨幣量が貿易決済用の特殊な銀貨の量に制限されるので、デフレ不況を抑えて物価を上昇させることはできなかった

★廃藩置県は経済政策でもあった
・・・廃藩置県は政治制度の変革と同時に、経済政策でもあった。藩の廃止は藩の様々な権利関係を全て清算することでもあり、その中には大名の借金も含まれる。その借金を政府が肩代わりしたが、公的債務の返済では、「政府は永久に死なない」と言う前提が重要である政府が永久に存続するのであれば、政府債務は完済する必要は無いのであり、大事なのは債務の総額よりGDPの伸びと債務の膨張スピードのバランスである。この考えを「公債のドーマー条件」と言う。なので、政府の中の人が変わっただけと言う前提で債務の関係が引き継がれたのである。しかし実際は7割程の借金が破棄されたので、民間の債権者は泣き寝入りしたのである。


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