見出し画像

【経済本100冊】Vol.61:『経済で読み解く日本史〈大正・昭和時代〉』(著:上念司)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、上念司さんの『経済で読み解く日本史〈大正・昭和時代〉』です。

画像2


基本情報

タイトル:経済で読み解く日本史〈大正・昭和時代〉
著者名:上念司
初版発行年月:2019年6月
ページ数(大体):約270pg
難易度所感〈五段階〉:★★★★ ややムズい


大和の適当あらすじ

太平洋戦争に至るまでの経済的な流れと、戦後の発展を経済の観点から読み解こうとする、上念司プレゼンツの新たな日本史教科書。


全体の感想

本シリーズの最終作となる本です。明治時代より金本位制が日本を含め、世界経済を混乱に陥れたと前作では述べられていましたが、今作においても一貫して金本位制が重要キーワードとなっています。高橋是清はよく偉大な人だったと言われますが、それがどう偉大だったのかも経済学的に分かります。

上念氏の経済評論は、毒舌とも捉えられかねない、歯に衣着せぬ挑発的な物言いが魅力ですが、その毒舌度合いも巻を追う毎にヒートアップして、今作で最高潮に達しています。戦前の日本の混乱については、色々な政治評論がありますが、経済の観点から見ると、経済成長のグラフ等と照らし合わせて、その時々の政策の良し悪しが定量的に測れるのが客観的でいいなと思いました。正にこれこそが歴史を科学すると言うことなのだと思います。


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >

★戦争の経済的な3つの原因
★ポーストの、戦争が経済にプラスになる4条件
★世界恐慌の22年前に起きた1907年恐慌
★第一次大戦で一時的に金本位制を離脱するが、すぐに復帰
★金本位制復帰による銀行の連鎖倒産
★高橋財政金融政策の完成
★高橋蔵相の緊縮財政計画と二・二六事件
★馬場鍈一の経済政策の間違いが大東亜戦争を招いた
★ブレトン・ウッズ体制と言う画期的な発明
★日本の躍進を訴えた下村治と、全面採用した池田勇人

< 各詳細 >

★戦争の経済的な3つの原因
・・・ガルブレイスは、戦争の経済的な要因として、①支配の欲求と利益への欲求、②製造業者・貿易商・金融業者による膨張政策への支持=政治的帝国主義への後押し、③兵器製造業の利益追求・・・の3点を挙げた。特に3点目は、後世批判される「軍事ケインズ主義」のことである。ケインズは不況対策として公共事業を行うことを推奨したが、この公共事業には「軍備拡張」も含まれる。ガルブレイスは、第二次世界大戦後の資本主義において、ケインズ主義が軍事支出の増大を招き、軍産複合体が形成され、それが企業官僚に支えられて独占資本になってしまったと批判した。

★ポーストの、戦争が経済にプラスになる4条件
・・・ポーストは、戦争が経済にプラスになる場合の鉄則を見つけ、4条件にまとめた。それは、①戦争前のその国の経済状態が不況であること、②戦場はなるべく本国から遠い所がいい、③失業率が高く、戦争に動員できる労働力が余っていること、④戦争の期間と費用及び資金調達法がその国の経済状態に適したものであること:例えば、もし開戦前の経済状況がデフレ気味であれば、戦費を調達しつつ、デフレ脱却も図れる通貨発行が最も適していると言える(通貨量が増える為)・・・である。


★世界恐慌の22年前に起きた1907年恐慌
・・・アメリカが金本位制に移行したのは1900年だが、次第に金の産出量は落ち、世界経済の成長に金ストックの増加がついていけなくなって行った。そうして起こったのが1907年10月にアメリカのウォール街で起きた大規模な株価の暴落である。学校の教科書で習った「世界恐慌」は1929年であり、これは別事件なので間違えないように注意。世界恐慌の22年前に起きたこの恐慌は「1907年恐慌」と呼ばれている。日本では丁度日露戦争直後に当たる為、「戦後恐慌」と呼ばれている。これは、1906年のサンフランシスコ地震による保険金支払いに端を発したデフレ不況であり、これが世界経済に打撃を与えたのである。

★第一次大戦で一時的に金本位制を離脱するが、すぐに復帰
・・・1907年恐慌はやがて収まり、各国の経済は一時的にV字回復するが、飽くまで一時的なリバウンドであって、主要国の経済状態は不安定だった。全ての国が安定的にプラス成長に転ずるのは、第一次大戦で各国が一時的に金本位制を離脱してからのことである。第一次世界大戦で世界経済が不安定化したことから、各国は金本位制から離脱するが、戦争が終わって平和になると、また金本位制に復帰しようとした。これには、第一次大戦の債務は将来的な金本位制復帰を前提として約定されていた為、簡単にはそれを放棄できないと言う事情もあった。

★金本位制復帰による銀行の連鎖倒産
・・・第一次大戦後に世界各国が金本位制に復帰したことによる悪影響は、世界的な金融危機と言う最悪の形で現実化した。大恐慌が世界中に広まる切っ掛けとなったのは、1931年5月に起きたオーストリア最大手「クレディト・アンシュタルト銀行」の倒産である。金本位制はデフレ銀行なので企業の倒産が増える。倒産件数が増えると、銀行の損失がかさんで、自己資本を食い潰してしまう。大きな銀行が潰れると、その銀行と取引のある他の
銀行にも、人々の噂によって危険が及ぶ。所謂「カウンターパーティ・リスク」と言うものである。これは各国にも飛び火してイギリスは金本位制を離脱、日本も高橋是清大蔵大臣によって金本位制の離脱を決断したのである


これより先は有料コンテンツとなります。価格は200円と、週刊少年誌よりも安く変える値段ですので、更にサクッと学びを深めたい方は是非ご購入下さい。

↓↓↓その他の経済関連の書評は下記リンク先をご参照下さい↓↓↓
【経済本書評】超ネタバレ!経済本100冊読破&書評まとめ


ここから先は

1,467字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?