研究に近く。現実に近く。
先日、同居人たちと<若者のメンタルヘルス>の話になった。デンマークでは若者の鬱(depression)や不安(angst)が増えているという。
高校の先生の大家さん:
「クラスの生徒の多くが精神科に通ってる。これから精神科に行くから授業休みます、というのはよくあること」
20代のルームメイト:
「私が高校生の頃は、精神科に通うのはまだ珍しいことで、ただ疲れてるだけじゃない?と捉えられたりしてたけど。今は友達同士でもメンタルヘルスについてはよーく話す。タブーっていう感覚はもうなくて、オープンなトピックになってるよ」
私:
「日本でも同じくらいそういう若者はいるはずなんだけど、まだまだ数として表れているのはほんの一部な気がするし、まだタブーな雰囲気もある。デンマークでは、どうしてこの10年くらいで人々の意識が変わったの?」
20代のルームメイト:
「アカデミックな領域で、若者のメンタルヘルスが1つの大きなトピックになっているからだと思う。それに関する調査結果がよくニュースで取り上げられるようになって、人々が関心をもつようになる。デンマークではアカデミックな議論が世論を変えるんだと思う」
曲がりなりにも一人の研究者として、私の研究が社会に与えるインパクトって…?(正直あまりないのではないか…)と考えてしまうことがある。あくまでも個人的な感覚だけど、日本では『研究』と『社会(世論・政治)』が切り離されているように感じる。
デンマークではこれらの距離が結構近くて、『研究』でしっかりと根拠をもって示されたことが、『世論』に、さらには『政治』にも影響を与えているのかな?と、前から薄々思っていたことが、ルームメイトの話でさらに深まった。
合理的なデンマーク人ならではなのかもしれないけれど、研究と社会の距離が近いのは、合理的かつ健全なあり方な気がする。
ちなみに、ロスキレ大学のキャンパスには、以下のような言葉が掲げられている。
ー Tæt på forskningen(研究に近く)
ー Tæt på hinanden(お互いに近く)
ー Tæt på virkeligheden(現実に近く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?