🇩🇰 調査レポート06【デンマーク教育の根底にあるもの】

デンマークの教育現場では、日本の教育を受けてきた私からは驚くようなシーンに出会うことが多々あります。

きっとデンマークと日本では、教育の目指すそもそものところが違うんだろうな。そんな感覚を抱きつつ、ずっと言葉にすることが出来ずにいました。

そんな中、留学時にお世話になった方が夕食に招いてくださいました。Dさんは現在ペダゴー（pædagog）の資格を取るための大学に通っています。ペダゴーとは、身体と心のケアを担う専門職で、働く場所は1）幼稚園、2）学校、3）福祉的ケアが必要な人（高齢者など）と多岐に渡ります。Dさんは学校のペダゴーとして現場で実習をされています。

Dさんの自治体の学校の低学年のクラスには、1人〜3人のペダゴーが常駐しています。ペダゴーは、親が仕事前に子供を送り届ける朝6:30から、放課後の学童クラブまで、先生よりも学校に長くいます（1人ではなく交代で）。そのため、生徒の生活の様子をしっかりと把握し、親とのコミュニケーションも密にはかることができるそう。日中も授業に入りサポートにあたります。例えば誰かが泣き出した場合、ペダゴーが対応することで、先生は全体の授業を止めずに続けられると言います。また最近では、授業内容にもペダゴーが関わり、先生と協働することが目指されているそうです。

Dさんから、デンマークの教育が目指す3つの指針について教えて頂きました。これはドイツ人のWolfgang Krafkiによる教育論が基になっています。

1. Selvbestemmelse（自分で決めること）

2. Medbestemmelse（仲間と協働して決めること）

3. Solidaritet（連帯）

1~3を実践する中で「demokrati（民主主義）を育む」ことが目指されており、これは学校の法律の中にも明示されているそうです。Dさんは、これらの指針にまつわる次のようなエピソードを話してくれました。

デンマーク語の授業で、絵を見てその単語の音の通りにスペリングするというワークがあったそうです。ある生徒はそれがTシャツに見えたらしく「Tsjuts」とデンマーク語の音に近いスペルで書きましたが、Tシャツは英語なので正しくは「T-shirts」。Dさんはスペルが間違っていることを指摘すべきかどうかを担任の先生に尋ねると、先生は「この子がこの絵を"Tsjuts"とつづるのならそれで今はOK。正しいスペルはこの子がもっと高学年になったら自分で正しいスペルに気づいて書けるようになるから」と答えたそうです。

正しいか間違っているかの結果よりも、その絵を「Tシャツである」と自分で考えて、決めて、表現すること。Selvbestemmelse（自分で決めること）の方が大切にされていることが分かります。

またDさんは、デンマークでは授業においてグループワークがほとんどで、先生が一方的に教えることはほぼないと言います。グループワークでは、何か分からないことがある場合、生徒は先生に聞くのではなく、グループ内の他の生徒に聞くそうです。「教え合うことでお互いの勉強になるし、数学ではこの子が教える側、英語ではその逆というように、お互いの得意不得意を知り、尊重し合うことにも繋がる」とDさん。これは、Medbestemmelse（仲間と協働して決めること）や、Solidaritet（連帯）にも通じます。

これらの積み重ねによって、デンマーク社会を支える民主的な人材を育てることが目指されており、Dさんは現場でそれを日々体感されているそう。

教育のあり方が社会をつくり、社会のあり方が教育をつくる。

そのことを実感する貴重な学びとなりました。では日本ではどうなのか？引き続き考えていきたいです。最後まで読んで下さりありがとうございました！

＊記事の執筆にはDさんにもご協力頂きました。ありがとうございます☺︎