自分の名前が持つ「本当の意味」
名前には由来があると知ったとき
あれは小学2年生だったと思う。
喘息持ちで学校を休むことが多かった私は
その日も久しぶりの登校だった。
休んでいる間に「自分の名前の由来を調べる」
という宿題が出されていたらしく
発表会が開催された。
私は翌日提出という扱いになり
その授業はひたすら聞き手になったのだが
みんなの発表を聞いてかなり驚いた。
名前に意味があるだなんて、
その時まで考えたことがなかったからだ。
祖父の一字を受け継いだ子、
徳のあるお坊さんに名づけてもらった子、
生まれた季節にちなんだ子・・・。
名前には家族の願いが込められている。
それを知った私は期待でいっぱいになった。
自分にはどんな思いが込められているのだろう、と。
私の名前の由来
夕方になり、満を持して質問を開始した。
「ねぇ、どうして〇〇って名前にしたの?」
するとおかんは「うーん」と考えた後、
ドキドキわくわくが最高潮の私に一言だけ。
「かわいいと思ったから」と答えた。
え???それだけーーーっ!?
私は提出用の絵日記シートを見せて「それじゃ1行で終わっちゃうよ!」と訴えてみたが「かわいいなって思っているお母さんの絵を書けばいいじゃない」と無茶言うだけで、シートがぱんぱんに埋まるエピソードが追加されることはなかった。
私の名前の本当の由来
昨年おかんが他界した。
葬儀後に私と年の離れた兄・姉の3人で
事務手続きの処理をしていた。
突然、その時を待っていたかのように
姉が衝撃的な事実を語りだしたのだ。
姉は実は双子だった。
義母(私のおばーちゃん)が知ったら
堕ろさせられると心配したおかんは
双子を妊娠したことを隠して自宅で出産した。
そして「今後一切関わらない」という条件で
もう1人の姉は里子に出されていた。
教えてもらったのは里親がつけた名前だけ。
それが「〇〇ミ」。
そう、私の名前+ミ(たぶん美)。
育てることができなかった娘の名前を
私に託していたのだった。
隠された自分の名前の由来を知って思う
思うことは山ほどある。
縁起だとか世間体とかで孫の命をどうこうしちゃうっておばーちゃんは何時代の人間よ?とか。
おとんは自分の親くらい説得できる人であって欲しかったし。
まぁ、もうあの世に居るので伝えようもない。
小学2年生のあの日。
おかんは内心とても焦っていたに違いない。
私があの日のことをよく覚えていたのも、
今思えばおかんから何かを感じ取っていたから
なのかもしれない。
私は友達に「家は仮面家族だ」と話していた。
両親揃ってたし、酒や暴力とは無縁だったし、育児放棄されてなかったし、貧乏だったけどひもじい思いはしてなかったし、ごくごく普通の家庭。
のはずなのに何かがおかしいとずっと思ってた。
子供のころ異常なほど愛情に飢えていて、寂しいと思うのも捨てられるんじゃないかと不安になるのも、おかんが私を通じて育てられなかった娘を見ていると感じていたのだろう。
そう考えるといろんな違和感や疑問がカチカチっと音をたててはまった。
今更おかんに対する不満はない。
おかんは戦災孤児だった。
帰る場所もないのだから義母には逆らえなかっただろう。
その状況で最善の選択をしたんだと思っている。
そもそも2人の姉が双子として育っていたならば、私がこの世に誕生することはなかったのだろうから。
ただ、もう1人のお姉ちゃんが
真実を知っているにせよ何も知らないにせよ
今もどこかで幸せに生きていてくれていることを願っている。
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