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恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。  林 伸次

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うーーん。

掌編というか短編と言うか。

まぁそうだな。ひとつ大きいのは作者が渋谷でバーテンをやっている事。

それは事実だ。

だからこそ、この一つ一つの物語が『もしかしたら本当の話なんじゃないか』と思わせる力がある。

まるっきり創作と言うわけではないだろう。

バーとは雰囲気が良ければ良いほどに『マスター、聞いてよお』となるからな。

ただリアルと言えばリアルなのだが平坦。

日記を面白く書いているような感じ。

ただ軽いし、読みやすいし、作中に出てくる音楽や酒などはその時の空気感を良く感じさせてくれる。


題名の通り、恋の話である。

片思いや不倫なんかも出てくる。ただ悲しさも不快さもマスターを通しての読み味なので良い意味でさっぱりしている。

マンシーニがオードリーを生涯をかけて愛していた事など

バーテンはミニ話の引き出しが多い。

有能なバーテンはみな面白い話を持っている。

個人的に言えばこの話の中に『ギムレットには早すぎる』と言うような話が出てきて解説してほしかったな(笑)


これは客の話なので客の言うがままの物語である。

それがいい。嘘をついていても良い。今だけはバーテンだけはその嘘を鵜呑みにしてくれる。

そして逆もしかり、今だけは弱音を吐いても良い。

意気地のある男なんてこの世に存在しないのだ。


何編あるんだろう?わからないが読み終わったら一つくらいは残るエピソードがあるかもしれない。


私は『ブス』だ。一遍にブスな女が出てくる。

見た目が劣っていて卑屈で世の中に馴染んだ結果、切ない思いをする。

もうこのブスが愛しくてたまらなかった。


見た目の価値観なんてクソだ。時代や流行りや文化や国によってどんどん変わる。

冨永愛や山口小夜子のような時代に左右されにくい美しさもあるが

大体は流行り美人がえらいとされる。

マジョリティに気に入られれば美しいという事になるのだ。

そして自分だけが美しいと思っても世の中がそれを認めなければ大体許されない。

ふざけた世の中だ。


ブスはブスらしく生きる。でもだ!!ブスは魅力を上げて世の中なんて黙れしてしまえ!!!!

渡辺直美もフワちゃんもにこるんも可愛く感じる空気感にしたのは

自信と世の中に受け入れられる空気感だ。


そんな事を思わせるような1篇があった。


はっきり言って心に残ったのはこのエピソードだけだが、

音楽の流し聴きの様に、本を読むならとてもオススメ。

さらっとナナメ読みもできる。


あとは悔しいが渋谷のバーに行きたくなる。

著者の林伸次氏を見てみたくなる。



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