見出し画像

さざなみのよる 木皿泉


夫婦で脚本家、二人で一人と言うパターンの作者らしい。

すごくねそれ。

漫画の原案・作画みたいな事だって摩擦が起きるのに、

小説でそんなことが可能なのか!?

すげえな!!!

って思いました。素直にそれはすごい。

俺は絶対ムリ。



今著者を読むのは初めてである。

なんで買ったかは覚えていない。


一人の登場人物(ざっくりと言うと主人公)の死を
中心に1話ずつ視点が変わる一人称多元小説。

全14話。

脚本家らしい作りかもしれない。

当たり前だが人には性格や置かれる状況によって思うことが違う。

そして主人公が見せる一面もその人達でそれぞれ。
見せる面も受け取れる面も違う。


個人的には12話がすごく良かった。
家族でも無く、暴走の原因となった人間でもなく、なんとなく仲良良い友人、位の関係の視点。

友達は大人になると難しい。

親友とはどういった人間を言うのだろうか。

これから先もずっと友達でいるなんて約束をするほどではないのだ。大人だから。

でも『死』と言う物が友人だったと言う事実に深みを増す。

最後会ったのはいつだっただろうか、なんて思う事があっても。

死ぬ事は人間関係を対人ではなく個人的な事柄にするから深みを増すのだろう。

だからどうしても泥濘感が拭えないのだ。


歯やダイヤなど遺物には想いが宿る。っと思いたいし、信じているが、

実は思いを宿らせるのは受け手や、所持している人なのであって本人はあっけらとしてる事もしばしばある。

しかしお金で測れない価値がそこには確実にある。


ダイヤがキーアイテムで出てくるのだが、

良い。とても良い。心地が良い。


目にダイヤなんて想像したら新宿の目のモニュメントしか思い出せなかったけど(笑)


私は生きてる人間の為の世界で死者に学ぶ事はあれど、死後に何がどうってのはほとんど何も思わないので(だから死者に見守ってくれてるから感謝する的な観念もほぼ無い)

自分の死を感じた時にどう思うかってのは楽しみである。

醜く生に縋るだろうか。それはそれで最高。

ただ身近な人が衰弱して死に向かう時間を寄り添うと言うのはどうだろうな。

まだその人は生きている訳だからね。

その感覚は消耗しそうだな。


主人公はとても好きだ。好感を持てる清々しい。

生きている時の足跡がそうであったからこそ

死後、『もし、彼女だったらこう言うよね(笑)』ってなる空気感もとても心地良い。

自分の中のその人像を自分の慰めに使ってるだけなのにひどく心地良い。あの空気感。


まぁ人は勝手な物だ。でも死者に遠慮なんてすることないと思ってる。生きてる人間の為の世界だから。



最後になるが、文体が現代小説とは少しズレてる。

何がと言われれば全く分からないが、読みにくい訳では全然ないのだが、引っかかりがたまに刺さる。

内容では無い。文体にささくれを感じる。

だからじっくり読む方が楽しめる本だと思う。

時間がある時に開く本かもしれない。

急いで読む本ではない。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?