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「地盤被害マップ」の実態を調べよう【ハザードマップを理解するコツ:地震災害編part4】

1.地盤被害マップはどんなもの?

part1でお話ししたように、「わがまちハザードマップ」で示されている「地震防災・危険度マップ情報」の中にある地盤被害マップ(下図の上から2番目)を公開している自治体は、残念ながら1つもありませんでした。

出典:ハザードマップポータルサイト

2.地盤被害マップ(?)公開自治体は10あるけども・・・

わがまちハザードマップの地図検索のページで左上の災害種別から選択するをクリックして地盤被害マップを選択すると、以下のように一部地域が青く表示されます。
 
これを見るだけでも「これしかないのか・・」と思ってしまいますが、実態を調べたら、さらに愕然としてしまいました。

出典:ハザードマップポータルサイト

青く表示された自治体は、一応は「わがまちハザードマップでは、地盤被害マップがあると考えている」ということになります。
しかし実際には「地盤被害マップ」と言えるものは1つもありません。その実態を整理すると、以下の2パターンになります。
 

①「ページが見つかりません」の表示になる

以前は公開していたのかどうかは不明ですが、少なくとも現在は公開されていません。
 

②地盤被害マップではなく、別のデータやマップが公開されている

どういうことなのでしょうか?
そもそも「地盤被害マップ」とは何なのか?
国として、どう考えているのか?それを各自治体にどう周知しているのか?
非常に根本的な問題だと思いますので、しっかりしていただきたいですよね。

出典:会津若松市ホームページ

上図が「わがまちハザードマップ」からリンクしている会津若松市のホームページです。
地盤被害マップではなく、様々なデータが公開されています。
データそのものは非常に貴重なものでしょうし、公開しているのは素晴らしいと思いますが、GISソフトなど専門的なソフトを使う必要があります。
つまり私たち一般市民が気軽に閲覧できるものではありません

③「ゆれやすさマップ」を公開している

これもナゾです。
 そもそも「ゆれやすさマップ」とは何なのか?自治体によって定義が違います。仙台市の場合は「ゆれやすさマップ」=「震度分布図」です。
 
しかし、今回調査した自治体は、震度分布図とは別のものとして「ゆれやすさマップ」を公開しています。
そもそも、自治体によってネーミングが違うことに疑問を感じます。
別の自治体に引っ越した人が混乱してしまいますし、名前を統一するのは基本中の基本ではないでしょうか。
 
その名前が何を意味するか?は、重要ですよね。
ハザードマップは国や自治体が「国民の命と財産を災害から守る」という目的でつくっているのですから、きちんと統一して欲しいです。

仙台市地震ハザードマップ:仙台市ホームページより

上図が仙台市の「ゆれやすさマップ」で、震度の分布図です。
下図が佐倉市の「ゆれやすさマップ」で、表層地盤地質の「ゆれやすさ」の分布図です。
仙台市⇔佐倉市で引っ越ししたら混乱してしまいます。

ゆれやすさマップ:佐倉市ホームページより

④大規模盛土造成地マップが公開されている

地震時の災害として、怖いものの1つが「谷埋め盛土地すべり」です。
これは宅地造成のための人工的に埋められた地盤が、地震の揺れで地すべりを起こす現象です。これが起こってしまったら、耐震強度が強い建物でも破損してしまいます。
「大規模盛土造成地」は、谷埋め盛土地すべりを引き起こす危険がありますが、谷埋め盛土地すべりを起こす可能性がある宅地は大規模盛土造成地だけではありません。
また盛土した宅地だけではなく、地震時の地すべりやがけ崩れの危険をはらんでいる箇所もあります。
それら全てを網羅するものが地盤被害マップとして私たちにとって有益なものになると思いますので、大規模盛土造成地マップはその一部にすぎません。

以上の「判定」を表にしましたので、下図でご確認ください。

「地盤被害マップ」の調査結果:筆者作成

いかがでしたか?
せっかく「ハザードマップポータルサイト」という便利なサイトがあるにも関わらず、マップがあるとされていても実際には無かったり、名前が統一されていなかったり・・と様々な問題が浮上しました。

ハザードマップをより良いものにするために、もっと自治体に働き掛ける必要がありそうです。

お読みいただき、ありがとうございました。

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