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地盤被害マップは「これから」に期待?【ハザードマップを理解するコツ:地震災害編part5】

前回は地盤被害マップの現状についてお伝えしました。
なぜこのような状態か?を考えた場合、「理論・精度が確立されていない」という理由が一番ではないかと思います。

1.今後に期待!

私自身も「地震地すべりのシミュレーション」の仕事(公共事業)に携わった経験がありますが、正確な答えを出すのは非常に難しいと感じています。
 
まず、地盤の性状のムラが多いこと。
シミュレーション結果を正確にするためには、結局は、データの正確性を上げねばなりません。ということは、密な調査が必要です。
しかしピンポイントにボーリング調査をするとなると、とんでもなくお金がかかります。 
ですので、最近はよく「コンピューターシミュレーション(もしくはAI)」で何でも分かるかのような風潮がありますが、話半分に聞いておくのが良いと思います。
 
しかし私自身は地震時の土砂災害ほど、怖いものはないと思っています。
現状は残念ながら、地震時土砂災害のハザードマップは「ゼロ」ですが、今後に期待せざるを得ません。

2.地震時土砂災害が一番怖い?

少なくとも、私はそう思っています。 
雨・雪等が原因の災害は、天気予報のおかげで避難までの時間を稼げます
地震時の津波も、地震が発生してから、津波到達までの多少の時間を有効活用して避難するチャンスがあります。
 
しかし、北海道胆振東部地震のように、夜中に地震が起きて、一瞬で土砂崩れが起きた場合、逃げようがありません。
 
私としては、日本に残された防災の一番の課題は、これではないか?と思います。 
「ハザードマップで危険を事前に知り、備えておく」ことによって、現状では概ね防災になるでしょう(みなさんに周知徹底されているのが前提ですが)。
しかし地震時土砂災害だけは、現状では、それができません

何せ、ハザードマップが公開されていないのですから。
 精度に問題がありすぎるか、事実を公開するとまずいので公開できないか。
(※私は多分、前者かと思いますが。)
地盤被害マップが現状では公開ゼロな理由はそれでしょう。

胆振東部地震で発生した土砂崩れ:林野庁より

3.消された地すべり地形

仙台市の土砂災害ハザードマップは、2021年から刷新されました。
理由は「土砂災害防止法に基づく基礎調査が完了したため」というものです。
この「基礎調査」とは、地すべり・急傾斜地(がけ崩れ)・土石流の恐れのある箇所に、実際に調査員が現地調査をしてデータベース化する公共事業のことです。

仙台市ホームページより

しかしこの「調査」はあくまで現地での目視によるものが中心であり、詳細な調査ではありません。
そしてこのことによって、私が「地震地すべりの跡ではないか?」と考えていた地すべり地形が、ハザードマップから消えてしまいました。

仙台市ハザードマップ(2020年まで):仙台市ホームページより
仙台市ハザードマップ(2021年以降):仙台市ホームページより

上が2020年までのマップで、下が2021年以降のものです。
随分と変わりましたよね。
私が問題視していた場所は、真ん中やや右上の大きな茶色の範囲です。
ここが将来の直下型巨大地震で動かないとの判断は、どのような考えに基づいているのでしょうか。
 
もちろん仙台市はルールにのっとってマップを変えたのでしょうが、危険の可能性がある箇所をないものとするのは良くないと思いますが、みなさんはどう思いますか? 
茶色の箇所も別のマップとして残しておくべきではないでしょうか?
 
このように、ハザードマップはまだまだ疑問に感じることがありますので、今後も情報発信を続けていきたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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