葬儀打ち合わせ ②

次に、式を執り行ってくれるお坊さんを決めると言う。

悲しい目の担当者は、もしお寺の檀家じゃないのであれば、葬儀屋のコネクションのあるお寺を紹介してくれると言う。

広報やイベント企画の仕事の経験から、全ての取引先や関係者のバックグランドを確認することが癖になっていた。早速、携帯を持ち出して、googleの検索ウィンドウにお寺の名前を入れてみる。

出てきたのは、「ぬいぐるみ供養します」などのバナーがある怪しげなお寺のウェブサイト。お寺自体も、建物を構えたいわゆるお寺ではなく、ビルの一部屋に入っているようなお寺のようだ。。。どうしよう。。。大丈夫なのかな。。。

彼の実家も私の実家も、偶然ではあるが宗派としては曹洞宗だった。なのに、この「お寺」は全く違う宗派のお寺だった。

「宗派が違いますが、それでもここのお坊さんが法事にいらっしゃるのですか?」

「このお寺から、曹洞宗のお坊さんの知り合いを派遣しますので大丈夫ですよ。」

派遣するって、、、

なんだか腑に落ちない。よくわからないお坊さんに彼の供養をしてもらいたくない。自分ではないようなもう一人の自分が、〇〇さんに電話しなさい、と伝えてきたような気がした。そうか。〇〇さんは仕事で何度かお世話になっていた曹洞宗のお寺の和尚様だ。彼の優しい笑顔が浮かぶ。でも、なんて話すんだろう。。。知られたくない。彼がなくなった事実を世に広めたくない。だいたい、不思議なウイルスの時代だし、お願いするのも迷惑なのではないか。。。でも、彼にきちんとした供養をしてあげたい。今できることはそれだけだ。

「よろしければ私の知り合いで曹洞宗の和尚様がいらっしゃいます。電話してみましょうか。」

と義父に聞く。

「そう?じゃあ、お願い。」

そう言われて、勇気を振り絞って〇〇さんに電話をかける。

打ち合わせの部屋を出て、監察病院の外にでる。太陽の光の素で、ピンクのツツジが緑の葉と踊るように咲いていた。眩しかった。

2、3回鳴るとすぐに電話に出てくれた。

「〇〇さん、すみません、あの、、あの、主人が昨日なくなりました。今監察病院にいて、葬儀の打ち合わせをしていて、、、、葬儀屋さんのお寺さんは宗派が違くて、、、それで、それで、どなたかに法事をできないかと思った所、〇〇さんのお顔が浮かんで。。。でも、世の中ウイルスウイルスと叫んでいますし、お願いするのもどうかと思ったのですが、、、檀家でもないですし、、、、どうしても、、、すみません。。。」

「わかりました。まず、お参りさせていただきますので心配しないでください。すぐに伺います。自宅に帰られるのは何時ころですか?」

「18時頃には確実に帰っていると思います。」

混乱しながらも、ありがたさしかなかった。〇〇さんの落ち着いた声に救われ、また仕事モードに戻っていく。打ち合わせ室に戻り、〇〇さんが執り行ってくれることを義父と悲しい目の担当者に伝える。

こんな打ち合わせ、さっさと終わらせてやる。

残りの決め事は全て義父とテキパキと決めていった。

色々決めると、最後に悲しい目の担当者が見積もりをだす。

結婚式でもないのに、驚くような金額だ。しかも、一部現金をすぐに手付け金として支払わねばならないという。どうやって用意するのだろう。。。色々かき集めてもすぐには捻出できない。。。

見積書を前に固まっていると

「お金のことは心配しなくていいから。」と疲れ切った義父が言ってくれた。

我が家にはそんな臨時のお金を出す余裕はなかったので、本当にありがたかったが、申し訳なさもあいまって、頭を下げるしかなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?