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映画” Victoria and Abdul”とV&Aミュージアムのヴィクトリア空間

「ほぼ」ノンフィクションという注釈で始まる、「ヴィクトリア女王 最期の秘密」を見た。

出てくる世界は、ヴィクトリア朝時代の光の部分という感じ。

宮殿、式典、屋外でのイベントも全て壮大でキラキラで、これぞ大英帝国の栄華!という目の保養になる映像。

単純なようで難解なような

王室から隠されてきたインド人の存在が近年になって偶然見つかったという、それ自体が奇跡のような話。

孤独なヴィクトリア女王とインド人使用人の友情という内容である。

ヴィクトリア女王は保守的な性格というイメージがあったので、支配下の国のアブドゥルに心を開いていたという(ほぼ)事実は意外だった。

想像以上に露骨だった、イギリス人たちのアブドゥルへの嫌悪感・差別のシーンは見るのが辛く、2人の友情を応援したくなる。二人が仲良くしているシーンは微笑ましい。

一方で「植民地支配を正当化している」などの批判もある模様。そして私個人としては理解しきれなかった、という感想。

ヴィクトリア女王がアブドゥルにそこまで固執した心情。
そして、アブドゥルの奇妙な人間味のなさ。

そこがどうも理解できず、誰かに教えて欲しい気持ちでいっぱいである。

少女漫画のような、御曹司が平凡な女の子に「お前、面白い奴だな?」という感じのスタートでありつつ、いくらでもタイミングはあったのに周囲の反対を押し切って女王は最期までアブドゥルと一緒に居た。

そこまでするアブドゥルの魅力の理解が追い付かないくらい、アブドゥルの人間性が謎に包まれている。どこまで本音でどこからが嘘なのか。

女王の「インドは私のものアピール」、インドから来た友人の苦痛、その他諸々の事態へのリアクションが微弱すぎて、映画初心者には読み取りが難しい。(こういう面で植民地支配正当化と言われてしまったのか?)

冒頭は、悔しさを押し殺して近づき復讐の機会を伺っているの?と思っていたほどどういう感情を抱いているのか分からなかった。

ただ「わーい!セレブ生活体験できてラッキー!」という訳ではないはずなのに、もはや疑ってしまう。笑

アブドゥルと一緒にイギリスに来たインド人のように、祖国を支配し搾取しているイギリス人への憎しみを爆発させている方が自然に見える。

最後には「本当に女王のこと好きだったってこと・・だよね。」とまとまったような気になって終わったが、実は重要なことをほとんど理解していないのかもしれない。

Victoria&Albertミュージアムのヴィクトリア空間

日本語題では「ヴィクトリア女王 最期の秘密」で、英語題は「Victoria&Abdul」。

ヴィクトリア女王最愛の夫と言われているアルバートとの字面を意識したのかな、と思ってしまう。

そんなVictoria&Albertミュージアムに、ヴィクトリア時代を集めた空間がある。3階の奥まった場所で、私も大学のアートのクラスで行くまで存在に気づいていなかった。

ヴィクトリア女王の像から始まり、ヴィクトリア朝時代の生活と暮らしといったアイテムが見られる。

白いウェディングドレスを着る風習を作ったのはヴィクトリア女王、のような説明もあった。

実際ヴィクトリア女王のドレスだったか記憶が曖昧だが、「すごく小柄なサイズ!」という印象が残っていて、映画での小柄なヴィクトリア女王と重なった。

王室だけでなく、ウィリアムモリス界隈のラファエロ前派・アーツクラフトあたりも多く、日本人受けも良さそう。

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人生は完璧ではない?

ちなみに、映画の序盤アブドゥルが「カーペットとは人生のようなものです。」と詩的なことを語り、女王が心を開く第一歩となるというシーンがある。

そんなイスラムカーペット(アブドゥルはイスラム教徒のインド人)もV&Aミュージアムで見られる。

The Ardabil Carpetという名前で、ミュージアム側も「見るべき20コンテンツ」に認定しているほど貴重な、現存する最大のイスラムカーペットらしい。

神殿で使われていたカーペットだったが、災害で破損した神殿修復の資金調達のために売りに出され、高額でイギリスが買い取ったそう。

あのウィリアムモリスも「絶対買うべき!」とミュージアムに勧めたという話も先生から聞いた。

印象に残っているのが、幾何学模様のようで一見左右対称に見えるイスラムカーペットだが、実はあえてアシンメトリーに作られているという話。

「完璧なものは神様のみ。」というイスラム思想らしい。

カーペットについての知見を次々披露していたアブドゥルも、この思想の元で「人生はカーペットのようなもの」と言っていたのだろうか

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