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【無料】基礎から分かる水産用語<163> 身欠きニシンとは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


身欠きニシンとは

 干物に加工したニシンのこと。日持ちしないニシンを流通させる目的で古くは江戸時代から作られていたとされ、保存食として重宝してきた。

 製造工程はニシンの頭部、内臓、背骨、尾などを取って素干しにする。うま味が凝縮され長持ちするのが特徴。1626(寛永3)年に蝦夷(現在の北海道)・松前から江戸幕府に身欠きニシンを献上した記録が残っており、少なくとも約400年前には生産されていたとされる。

 乾かし方によって本乾、8分乾、ソフト乾などに分けられる。かつては保存食として完全に乾燥させた本乾が主流だったが、現在は本乾に比べて戻すまでに時間がかからないソフト乾が多く出回っている。主産地はニシン漁が盛んな北海道。原料はロシアや米国ブリストルの輸入物を中心に前浜物でも作られる。

 一大消費地は京都。「京都のスーパーでは身欠きニシンを使った製品は欠かせない」と京都市中央卸売市場の卸担当者。現在は身欠きニシン全体の約8割をソフト乾が占める。伝統的に初夏の旬のナスと炊く料理や甘露煮を使ったニシンそばなどで食べられる。

 しかし、同市場での取り扱いは年々減少傾向。加工メーカーの減少や消費の低下が背景にあり、関係者は若年層へのPRや手軽に食べられるレトルト品の普及などで消費の底上げを図っている。

みなと新聞本紙2023年11月14日付の記事を掲載