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連載小説「はつこひ」(全18話)

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蝶子の店には、今日も田中様がネイルにやって来る。娘のカイヤさんの誕生日に青色のネイルをプレゼントすると、彼女の腕の表面に痛みをみつけて……。(2023年12月~2024年4月)
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【連載小説】はつこひ 第四話

 飯村さんと出会ったのは、今から五十年以上も前のこと。私がまだ十三歳、中学一年生の頃だっ…

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【連載小説】はつこひ 第七話

 そこに映し出されたのは、彼がこれまでに瞳で写し取ったもの。写真だった。  写真の中では…

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【連載小説】はつこひ 第八話

「そうだ。さっき蝶子ちゃんに『オトナ』と言われて僕は思い出したんだ。お母さんも、お父さん…

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【連載小説】はつこひ 第十話

「……ねえ、寺尾は? 寺尾はどうしてる?」  窓の外で降り続く雪を眺めていると、だんだん…

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【連載小説】はつこひ 第十一話

 新年が明け、冬休みが終わっても気分は晴れない。 「お嬢様、あと十分で学校に到着します」…

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【連載小説】はつこひ 第十二話

 車は街から郊外へ向かう。三時間ほどすると、コンクリートの無機質な建物の並ぶ景色から草原…

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【連載小説】はつこひ 第十三話

 顔を上げると、飯村さんは両目から涙を流していた。 「……私のために泣いてくれるの?」  彼の頬に触れて涙を拭う。  彼の左手を取り、私の頬に添えると、私の涙も彼に捧げた。 「私たち、同じね」 「……同、じ……」 「クリスマス・イブに一緒に見た映画を覚えてる? 私、メアリーの気持ちがやっとわかった気がするの。メアリーはエイデンに愛されたかったけれど、それだけじゃなかったの。メアリーは誰よりも、エイデンのことを純粋に愛していたのよ。当たり前のことなのに、私、ちゃんと分かって

【連載小説】はつこひ 第十四話

『えー、今日はめでたい日です。なんと、今日は兄貴の二十歳の誕生日、そして、この農場を継ぐ…

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【連載小説】はつこひ 十五話

「飯村さん。飯村さん……。お願いだから、起きてちょうだい」  未だ何の反応もなく、柔らか…

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【連載小説】はつこひ 十七話

 ぽつぽつと辺りの看板に明かりが灯り始めた頃、いつもより早めに店を閉めて裏側の母屋へと帰…

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【連載小説】はつこひ 最終話

《エピローグ》  蝶子の店を出て少し歩くとと、田中さんは片手を挙げてちょうど通りかかった…

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