第217回往復書簡 「牛窓のうた」
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
昨年の春、音楽家のハルカナカムラ君に牛窓中学校の卒業式でうたう歌の作詞を依頼されて同校の校長室を訪ねたとき、校長先生から、なぜ画家がここにいるのか、と質問された。それはそうだろう。歌を作るのに、画家はいらない。同席していたディレクターの鈴木孝尚君が作詞をしてもらうのだと説明したが、それでも校長先生は首をかしげていた。僕は作詞などしたことがない。それどころか、依頼されたのは前日、宿で一緒に酒を飲んでいたときだった。そもそも僕は絵を描くつもりで