第227回往復書簡
牧野伊三夫 → 石田千さんへ
十一月に盛岡の公会堂で、はるか君と即興制作をやることになって、その準備をはじめた。
音楽家との公開即興制作は何年ぶりだろう。もう十年近くやっていない気がする。
ピアノの三浦陽子、ギターの青木隼人、サックスの坂田明、パリのコントラバスのジャンボㇽデなど、三十代のおわりからやるようになったが、音楽の力でヨーロッパの伝統的な絵画の法則から解放されていくのが、面白くてしかたなかった。しかし、やがて、短時間に次々と展開していく音楽の時間に束縛されることに疲れてきた。体力の衰えもあったと思う。アトリエで、独り絵画の時間と向き合うようになった。こちらは、ただしずかに、ぼうっとしているだけでいい。目をとじると、自分が幽霊になったような、宇宙の暗闇にまたたく星になったような気がする。
音楽と、、、。人前で、、、。ひとまず、カタツムリにでもなってみせようか、、、。
(5月30日木曜日)
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