第235回往復書簡 文庫本、16時20分
石田千 → 牧野伊三夫さんへ
牧野さん、目のぐあいは、いかがですか。
夏場は、汗が目に入ったり、不調はおつらいことと思います。泳ぐときにも支障があるかもしれませんね。くれぐれも、お大事になさってください。
こちらは、お盆の帰省をしました。すこしでも長くと思いながら、2週間しかいられませんでした。お墓参り、5年ぶりに親戚をたずねたり、あっというまでした。母とはけんかばかりでしたが、ワインバルや、かっぱ寿司に一緒に行きました。かっぱ寿司、はじめてでした。母が手慣れたようすで注文画面を操作するのに、感心しきりでした。
そうして、帰ってくると、しんとしてさびしい。けんかをしても、いっしょにいたい。家族とは、ふしぎです。
ここから、宣伝になってしまうこと、お許しください。
7月の末に、『あめりかむら』の文庫が刊行されました。10年以上まえの、はじめての小説集です。なぜ、いまなのかな。音楽のほうは、シティ・ポップやアナログ・レコードの再評価があると知っていて、それとおなじようなことが、文章のほうにも起こってきたのかな。そんなふうに思っていました。
編集担当のかたは、若いかたに読んでもらいたいとおっしゃいました。
校正は、あきらかな誤りだけなおしました。装幀は、すっかりおまかせしました。若いかたのことは、若い編集さんのほうが、よくよくわかる。
単行本のときは、菊池信義さんにお願いしたくて、緊張して手紙を書きました。
解説は、小説家の一穂ミチさんが書いてくださいました。
大阪ご出身の、一穂さん。表題作が大阪が舞台となっているご縁で、ほんとうにお忙しいなか、お時間をさいて書いてくださいました。こころより御礼申し上げます。一穂ミチさん、ほんとうに、ありがとうございました。
残暑の町にお出かけのおり、涼しい書店で、お手にとっていただけましたら、幸せです。
来週、またぴゅっと帰省してきます。
遠い夏あめりかむらのレモンサワー 金町
(9月13日金曜日)