【歌舞伎鳩】松竹梅湯島掛額ほか(四国こんぴら歌舞伎大芝居 / 旧金毘羅大芝居・金丸座)
あ〜〜〜〜〜うっかり!!! うっかりお切符が手に入っちゃいましたね!!! いや〜〜〜〜うっかりなんでね、行かなければですね琴平まで。
ということで行ってきました。香川県琴平市。行ってみたかったんですよ金比羅宮……。もちろんサンライズ瀬戸でごろ寝をし、朝のうちに琴平山に登り、霧深い奥社まで行ってまいりました。山。奥社は果てしなく遠かった……。そして登ったり降りたりしたのちに満を持して金丸座です。
お昼に食べたうどんもさすがに美味しかった。
👒は鳩的好きな演目
👒松竹梅湯島掛額
ざっくりとしたあらすじ:
木曽の軍勢が攻めてくるというので、さまざまな人が本郷駒込の吉祥院に逃げ込んでくる。
そのうちのひとり、八百屋の娘・お七(中村壱太郎)は、吉祥院の小姓・吉三郎(市川染五郎)に恋をしているが、吉三郎はいずれ出家する身。そして当の吉三郎もお七にはさほど心を向けていない様子である。
その上お七は、家の事情により、釜屋武兵衛(中村鴈治郎)との結婚をせざるを得ない状況であった。
そこに居合わせた紅屋長兵衛(通称:紅長)(松本幸四郎)がお七を慰めるところに、若党十内(中村亀鶴)が現れ、吉三郎の結婚が決まったという……。
きちんとしたあらすじはこちら。
前半(吉祥院お土砂の場)はお七を中心としたコメディで、役者さんたちも好き放題やっており、親(幸四郎さん)の無茶振りに息子(染五郎さん)が苦笑している姿も見られ、鳩はそういうのが大好きです。楽しそうだな!
そしてそんな前半をやりきったのちの、後半、四ツ木戸火の見櫓の場……。浮世絵なんかで見たことがありますかね、娘が火の見櫓に登る絵の、その場面です。
前半おっとりしたまどろっこしい娘であったお七が、吉三郎のためにまっすぐに明確に行動していく、この緩急がほんとうに素晴らしかった。
この場面、人形振りといって、お七は文楽のお人形を模した動きで演じます。お七がお人形のように動くのと同時に、人形使いさんも後ろにいるという……以前、シネマ歌舞伎「日高川入相花王」を見た際にこの演出を見かけており、実際に見てみたいなあと思っていたので、見られて大変嬉しい。
実際に見ると、本物のお人形に見える瞬間がいくつもある。人形振りで演じている間は一部の隙もなくお人形で、後ろの人形使いが動かしているんだろうと信じても良いほど。
そして、ラストは再びお人形からお七(人間のすがた)に戻るのですが、ここからがますます凄まじい。紙吹雪で雪が舞っているのに、舞台上に本物の雪が見える。吹雪の中の櫓が見えるし、そこに立ち向かう女が見える。どうお話が終わるかということ、見る前から知っていたわけですけれども、それでも手に汗を握るんです。最高の高揚感の中で、お七が吉三郎のもとに駆けていき、幕。
うっかり遠征というかなんというか、してしまったわけですが、もう大満足でした。ほんとうに素晴らしいものを見た。歌舞伎座のように大きいわけでない小屋の、観客もひしめき、役者との距離も近い風情の中で、お七が今その雪の中を、恋しい男のためにやりきって走って行ったのを鳩は見ました。
鳩が見た時は最後に「大当たり!」と大向こうがかかっていたのですが、鳩ももう、「それはそう」と頷くしかない。
ちなみに前半部分で?、お七と下女が客席の間の細い道(道?とも言えないような……)を通って行ったのでびっくりした……。鳩は一番後ろの席にいたのですが、それでもかなり近かった。しかもお七はぽっくりかなにかで歩いていて、一瞬踏み外し「びっくりしたわいなあ」など言っており……、ほんとうにびっくりした顔をされていたので、ただのアクシデントだったのでしょうが、このあたりの自然さもさすがですよね。
また客席の間を歩く間、ちらちらと雪が舞っている(紙吹雪)のですが、これが天井を見てみると人力で……、竹か何かで網のようになっている天井の、梁の部分?に人がおり、役者さんの動きに合わせて籠に入れた紙吹雪を手で降らせているという……。芝居も面白かったですが、こういった裏方さんが見えるのもまたとても面白かったです。
昼の部でかかっていた「羽衣」では宙乗りがあったのだとか。特にチェックできておらず小屋でお隣さんに話しかけられるまで知らなかったので、知っていたら見たかった〜〜〜!!!になりました。
教草吉原雀
ざっくりとしたあらすじ:
放生会や吉原の様子を二人の鳥売り(中村雀右衛門・中村鴈治郎)が踊るところに、鳥刺し(松本幸四郎)が加わり、賑やかに踊るも……。
きちんとしたあらすじはこちら。
以前、歌舞伎座でも見ておりますので2回目です。前回はおそらく三階からの視点で見ているので、初・役者さんと同じアイレベルでの見物。やはり踊りは役者さんと同じアイレベルで見るのが良い……。見え方が全然違った。雀の羽根の模様をあしらった衣装で羽ばたけば、こぢんまりした雀の様相に見える。そして最後には雀二羽と人間に見えるのですから視点って大切。
しかしよく考えると、鳥刺し(人間)、雀にしてやられている……? 動物vs人間、なんとも面白い演目だなあと思います。
こちらも役者さんが客席に降りまして、幸四郎さんが目の前を、竿をぶん回しながら通っていかれました。でっかい。近くで見るとかなり迫力がある。そしてこのために客席にドカ桜(吹雪)が降り、愉快なことに。客席猛吹雪です。あらゆる客の、頭や肩や荷物に積もっていく桜。我々もついでに花吹雪を被る体験、さすがにしたことがなく、おもしろすぎますね。
う〜っかりお切符をとってしまったわけですが、ともかく反射で切符をとって、来て良かった。とても面白かったです。
芝居小屋という空間もまた、面白いものでした。
演出装置が人力というところももちろんありますが、たとえば客席が狭めのため、どの人だろうと少しでも移動しようものなら「すみません、すみません」「そこ通ります」「そこ、そのあたりに足を入れます」とかなんとかといって必ず他の人に声をかけることになり、客席が常にざわざわとしていたのが印象的でした。
また最後列から見たって必要のないオペラグラス。役者さんが等身大に見えて、肉眼で表情まで見える。花道にも近かったのですが、なんなら役者さんが出てきてその大きさにびっくりしましたからね。いつもは三階から眺めていますから、まさか肌の肌理まで見えるとは思わなかった。
他には、客席に段差なんてないもので、もちろん前の人の頭が被ったりもするんですよ。後ろから見ているとね、あらゆる人が、自分の視界を確保できる良い位置を探してゆらゆらしていて、前の人が動くと連鎖的に後ろの人も動くんです。いやあ、面白かった。これが芝居小屋という空間。これこそが芝居見物。きっと昔はこんな感じで、みんな芝居を見ていたんでしょうね。
今回は廻り舞台もすっぽんも使っていなかったため、いつかこれらが動いているのを見たい。こちらも人力らしいので、大変なのかもしれませんが……。
ともかく何度でも言いますが、ほんとうに面白かった。良い経験をしました。
おまけ
公演概要
第三十七回 四国こんぴら歌舞伎大芝居
2024年4月5日(金)~21日(日)
第一部:伊賀越道中双六 沼津・羽衣
第二部:松竹梅湯島掛額・教草吉原雀
旧金毘羅大芝居(金丸座)