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【歌舞伎鳩】新作歌舞伎『流白浪燦星』(12月)

新作歌舞伎『流白浪燦星ルパン三世
2023年12月5日(火)~25日(月)
新橋演舞場




あらすじ

安土桃山時代のルパン一味。今回狙うは「卑弥呼の金印」というお宝。
「卑弥呼の金印」は、雌龍丸・雄龍丸という大小の刀の力を持って封印を解くことができ、その力で世を統べることができるといわれている。
お宝を狙うのは、ルパン次元と、何やら訳知り顔の不二子ちゃん。そこに雌龍丸をすでに手に入れている五右衛門と、天下人の真柴久吉も加わり、お宝をめぐっての一大騒動が始まる。
もちろん銭形警部もルパンを追っているよ。
きちんとしたあらすじはこちら


ルパン三世:片岡 愛之助
石川五ェ門:尾上 松也
次元大介:市川 笑三郎
峰不二子:市川 笑也
銭形警部:市川 中車
真柴久吉:坂東 彌十郎


感想

ルパン三世、と言われて誰もが思い浮かべるあの雰囲気とテンポ感がそのまま歌舞伎になっていて、とても面白かった。
どの役者さんも声を寄せているというか、「ルパァ〜ン三世さ」といったようなルパンの名乗りや、銭形警部の「待て〜〜〜ルパァ〜ン」など、あのあれ、この文章読んでいて脳内で再生されるそれ、がそのまま出てくるので、アニメを見ていた人にも手厚いサービスがある。
銭形警部なんて、そこに佇んでいるだけでもうそのものなので、なんだか可笑しくて、登場しただけで場を持っていく感じがありました。

安土桃山時代にルパン一味がいたら、というところで、衣装なんかもうまいこと落とし込んでいるわけですが、みんなきらっきらの生地を裏に使っていたりなどして、もうそれだけで満足。お宝に目がない盗賊一味の雰囲気が、その布ひとつで出てくるんですよね。衣装の力すごい。
ルパンは元々ジャケットにパンツなのを、裾広がりの長羽織にしているの、もう大正解じゃないですか? 刀でなくサーベルを持っているのも良く、羽織は背側中心に切り込みがあって、立ち姿がしゅっとするようになっているのも良かった(刀の鐺で羽織が浮くの、あれはあれで好きなんですけどね)。
こういう新しいものを、自分たちのところに持ってきて、自分たちの良さを完全に把握して活かして取り込んでいく感じ、やっぱり歌舞伎はうまいよな〜と思う。これからもどんどんやってほしいですね。

というかさ、それはそれとして、!!!!!!ですよ!!!!!
舞台上に滝作るって何??????? 舞台上に滝って作れるの?????
確かに舞台上で、死ぬほど雨を降らすのは見たことがあるんですが(雨に唄えば)、滝って作れるんですね……。なんか一階前列のお客さんがいそいそとビニールを被るので、まさか水でも使うんか、とまでは想像しましたが、まさか滝とは? 滝????? しかも役者さんがぐっしゃぐしゃに濡れに行くし、そこで大立ち回りをする。いや白粉とか衣装とか鬘とかどうなってるの……。どうなってるの一体……。歌舞伎、観客を楽しませるための工夫がありあまりすぎていて、ほんとうにすごいと思います。(学び:こういう水を使った演出を「本水ほんみず」という。"本物の水"ですか?)

色々な演目のパロディがあったらしいのですが、鳩がどの演目も見ていないため、逆にこれから見るのが楽しみになりました。白浪五人男とか、見たい。

細かいところ
・五右衛門、サービスシーンすぎてびっくりしてしまった。でも確かにアニメでもよく不憫な目に遭っているし、よくあの晒しとふんどしの姿になっているような気もする……?
・次元が帽子を被っていないことに途中まで気がついていなかった……! 銀の延煙管が紙巻煙草の代わりですね。良い。煙管好き。
・藤峰太夫、ルパンに気がついたとき、一瞬いや〜な顔してから笑ってくれなかった? 可愛い……不二子ちゃんがほんとうに可愛くてどうしようかと思った。薄紫色の足袋を履いていて、肌色に近いからか?など思っていましたが、もしかしてもしかしなくても"藤色"(さっき気がついた)。
・糸星の早替わりはどうなってるんですか? えっあれほんとにどうなってる??????
・マモー!!!!!! ただの通人マモー!!! 粋で最高。もっとお話ししてほしい。
・鷹之助さん、よくお見かけして本当にいい役者さんだなと思うのですが、そろそろ死なないお役が見たいです(なぜかそういうのばかり見ている気がする)。すごいかっこいい役やってほしい。
イヤホンガイドが教えてくれて、うっかり見えてしまったというか気づいてしまったのですが、ほんとにルパンがあの水色の縞のパンツ履いてる……。こだわり方よ……。
・ルパンが歌舞伎座の筋書き持って出てきたのにはフフとなっていたのですが、さらにルパンの推しは中村獅童、次元の推しは初音ミクらしく笑っちゃいました。メタい。
・ルパンといえばあの黄色い車とパトカーのカーチェイスのイメージがあり、ぜひ黄色い(?)馬で馬チェイスをして欲しかったのですが、さすがにありませんでしたね笑


新橋演舞場では高いお切符を買え(戒め)

3階右列6番あたり
背もたれにきちんと背をつけた状態での視界

興味本位で三階右のお切符を買ったのですが、すごい!見えない!感動的なほどに!
上お写真は、背もたれにきちんと背をつけた状態での視界ですが、もう何も見えない……レベルになります。のちのち調べてみることには、三階席は全体的に視界不良らしく、正面席でも花道が見えないとのこと(実際には座っていないのであくまでインターネットに教えてもらった知識です)。

前屈みになった状態での視界

左右席は前列と後列の2列しかなく、この間に段差があり、完全に視界が被らないようになっています。ということで、両隣ぎゅうぎゅうでなければこれはもう仕方がないということで、乗り出さない程度に前屈みに観劇することになるのですが、まあね、腰にね、きますね……。それでも上手1/3は見えません。全然集中できない。牢名主九十三郎見たかったんですが……?
あんまり見えないので、上手側でお芝居をしている時は、客の様子などを眺めていたのですが、向かい二階三階左席に座っている人も半分意識が飛んでいるし、右席1番(一番前方すみっこ)の方も大海で船を漕いでいらっしゃいました。そりゃあそう
お切符は完売表示でしたが、二階三階左右席はかなり空きがありましたので、これはいいところで販売しないようにしているのでは?など勘ぐってみたりして。
しかし花道の視界はめちゃくちゃに良好です。藤峰太夫の花魁道中が全部見えたし、不二子ちゃんに投げちゅーしてもらい射抜かれました。これは良かった点。
ただしやっぱり観劇体験として、いくら安くてもこれではまったく良くありませんので、新橋演舞場ではお切符の価格を積むことをおすすめいたします。(歌舞伎座の二階三階東西席もこんな感じなんですかね?)


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