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【歌舞伎鳩】東海道四谷怪談・神田祭(片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演)

片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演
2023年10月7日(土)~24日(火)
東海道四谷怪談・神田祭
御園座



いざ御園座!

初めて御園座へ

いい響きですね、御園座。
さすがにこちらは劇場の場所も知らず、とりあえず名古屋、ヨシ!の気分でお切符をとりました。
だって見たいじゃないですか?「四谷怪談」。
四谷怪談もぼんやりと、顔がくずれるお岩さんの話、としか知らなかったわけですが、面白いお話だと知ったのは以下のアニメのおかげです。

まあまさかこれを見ていた時は、このあと歌舞伎に興味を持って芝居道楽をやっているなんて思いもよらなかったわけですが。
ともかくこのお切符は販売開始で争奪戦になりそうという勘だけは働きましたので、発売開始を見張りながらお切符をとり、ようよう名古屋まで電車に揺られたわけでございます。


東海道四谷怪談

ざっくりとしたあらすじ
塩冶家の武士であった民谷伊右衛門は、主君が起こした刃傷事件のため、お家取り潰しの憂き目に遭い、浪人に(忠臣蔵)。
そのことから内縁の妻・お岩は、その父・四谷左門に連れ戻されるが、伊右衛門は左門を殺害。父の仇が自らの恋人と知らぬお岩は、伊右衛門が父の仇を討つ約束をしてくれたために結婚します。

時は流れて四谷町にある民谷家浪宅では、男の子を産んだお岩が、産後の肥立が悪く臥せっています。
体調の悪さから父の仇討ちを急かすお岩に、うんざりする伊右衛門。
折から隣家・伊藤家の女中が訪ねてきて、出産祝いと、お岩に血の道の薬を置いて帰ります。
伊右衛門が隣家にあいさつをしにいく間に、その薬をありがたく飲むお岩。
すると突然お岩は苦しみだし、みるみるうちにその美しい相貌が崩れていき……。
一方、伊右衛門をもてなした伊藤喜兵衛は、その孫娘・お梅が伊右衛門に惚れたということで、縁談を進めようとしており……。

きちんとしたあらすじはこちら


お岩:坂東 玉三郎
小仏小平:中村 隼人
お梅:片岡 千之助
按摩宅悦:片岡 松之助
乳母おまき:中村 歌女之丞
伊藤喜兵衛:嵐 橘三郎
後家お弓:上村 吉弥
民谷伊右衛門:片岡 仁左衛門


前述のアニメでしか内容を知らないわけですが、それでも言える、だいたい全部お前(伊右衛門)のせい!!!!!!!!!!!
民谷伊右衛門、どうしようもない男であり(顔だけが良い)、有り体に言えばクズなわけです。赤子に見向きもしない、体調の悪いお岩さんを鬱陶しく感じて邪険に扱って。お岩さんがお前に頼るのは、お前が引き起こしたこととその結果の全てが原因ではないんですか!?!?!? お梅との縁談をためらったほんの一瞬のみがプラスですが、あとは通してマイナス評価。ほんとうにどうしようもない。この後起こるどれもこれもだいたいお前のせいです。

今回見た演目では、伊右衛門がお岩の父を殺す発端の場面はなく、「四谷町伊右衛門浪宅の場」からだったのですが、しかし幕が開いてまず一言、伊右衛門が言葉を発したその瞬間。台詞がなんであったかは覚えていないのですが、その一言の遣い方があまりに格好良く、正直鳥肌がたちました。
クズだクズだと分かっていて見ようとして、幕が開いて、一言。そこで民谷伊右衛門に対して、お岩さんが惚れた部分が分かったというか、ああこれならもしかして騙されてもいいのかもしれないと思ってしまう始末。あの一言の声の遣い方、もう二度と忘れられないと思います。

一方お岩さんですが、毒薬と気がついたあたりからの恨みの募らせ方が素晴らしい……。生きながらにして怨霊じみてくる姿のあり方だとか、あの櫛けずる髪がどんどん抜け落ちていくところだとか、その怨念の凄まじさがひしひしと伝わってくる。命を失う前にあれだけの恨みを蓄えてしまったら、そりゃあ祟ります。伊右衛門も伊藤家の人間も、祟られて当然。

四谷怪談といえば、舞台上に色々の仕掛けがあって、伊右衛門が翻弄される場面を思い浮かべていたのですが、今回はそこまでいかず、お梅を斬り殺してしまったあたりで終わりました。
最後のセリフは、伊右衛門の「執念深え奴らだなあ」。
その台詞の原因の8割5部方はお前自身のせいです。

牡丹燈籠を見た時も思ったけど、やはりなんか、怖がる人間を客観的に見るというのは、コミカルに見える部分がありますね。
映画だと、BGMやらSEやら、画面の迫力やらで恐ろしさを煽ってくる面がありますが、舞台だと、必ず全景を見ることになるため、少し心理的な距離ができるのかもしれません。
(牡丹燈籠に関しては、もともとコミカルに作られている部分もありましたが)

いつかこの続きも、歌舞伎で見てみたい。
あの仕掛けいっぱいの演出、絶対見ていて楽しいだろうな〜〜〜。

細かいこと
・お岩さんの挿している櫛が、必要なところでのみ自然に滑り落ちるの、技術だなあと思いました。


(休憩)
開演前にきんつばを予約しておいて、食べました。
劇場って場所によって、名物お菓子みたいなのがあるのかな?
歌舞伎座はめでたい焼き、御園座はきんつば?
南座はなんかあったのかな……。見てなかった……。

2階2列30番あたり
近い!すごい!


神田祭

神田祭の風情の中で、鳶頭芸者が華やかに踊る。
鳶頭が若者をいなしたり、親方に二人の仲を認めてもらったり。
詳しくはこちら


鳶頭:片岡 仁左衛門
芸者:坂東 玉三郎


す、すっごいいちゃいちゃする……!
もちろん踊っているわけですが、要所要所でいちゃいちゃするのでもうこちらが、あわわわわ……となる。

鳶頭の粋で溌剌とした格好良さと、芸者が出てきたときの、もう後ろ姿から漂う艶っぽさ。
そんな二人がいちゃいちゃしながら、殺陣をしたり舞い踊ったりするわけですから、とてもとても素敵でもうあんまりなので、二人並べ立てて拝んだら何かしらのご利益がありそうとすら思いました。

四谷怪談との差がすごいのですが、こちらの舞踊は大変華やかで、いいもの見た〜!という気持ちで帰路につけますから、いいですね。

細かいこと
・玉三郎さんのほうが仁左衛門さんより背が高いの、気が付かなかった(イヤホンガイドのお姉さんが教えてくれた)。よくよく見ていると、寄り添うようになる時に、少しずつ屈んでいる……技術だ……。


まとめ

名古屋で見ましたが、そういえばどちらの演目も、地名まで指定されている江戸が舞台の物語ですね。
神田祭の賑やかさだったりとか、歌舞伎では数百年前の風俗が当然のように残っているのがほんとうに好きです。
こんなこと言う人そういないかもしれませんが、お岩さんが鉄漿かねを差すところなんて絶品ですよ。あの舞台の上だけは、まだ鉄漿が存在する風俗なのです。当然の生活であるから、出産後のお岩さんが鉄漿を差そうとするのを止める人間がいる。
生活のちょっとしたことは、ほんとうに後世に伝わらずに失われやすい。
もちろん舞台上で魅せるものなので、本当のところとは違うものもあるにはあるでしょうけれども、それでもそうした今では失われた風俗が生きている場所があることが、鳩には好ましく思えます。

さて鳩は、その数百年後の東京へ。
あの物語の続きを見なければなので……。


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