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【舞台鳩】剣劇「三國志演技〜孫呉」

三國志……全然通ってきていない……大丈夫だろうか……と思いながら見に行きましたが、問題ありませんでした。よかったよかった。


あらすじ

古の中国。腐敗した後漢王朝を倒すために勃発した黄巾の乱によって国は乱れに乱れ、時の群雄たちはそれぞれの思惑を胸に覇権を争っていた。そんな中、皇帝の象徴と言われる神秘の宝・玉璽が帝の元から離れどこかに存在するという噂が流れ、多くの武将が玉璽の所有を夢見ていた。

江東の地で名を上げていた孫家に仕える武将・周瑜荒牧慶彦)と、孫家の長男・孫策梅津瑞樹)は、幼い頃からの親友同士。その絆は、断金の交わりのごとく強固なものであった。

孫策は、敬愛する父・孫堅松本利夫)から戦いの中で密かに発見した玉璽を所有していることを明かされ、驚く。これぞ天命と士気を高めた父・孫堅は、いよいよ孫策にも戦へ出ることを命じる。周瑜が心配する中、呉軍は一丸となり劉表冨田昌則)軍が待つ荊州へと攻め込んでいった。闘神のような強さで敵をなぎ倒していく父・孫堅。だが劉表の部下である黄祖玉城裕規)の罠にかかり、命を落としてしまう。

大将軍を失い、悲嘆にくれる孫軍。孫策の弟・孫権廣野凌大)はまだ幼く、この悲劇を十分に理解することができなかった。やがて玉璽を手に、父の夢を受け継ぐことを決意した孫策。親友の決意を汲み取った周瑜は己の身も心もすべて孫策に捧げると誓い、軍師となって重臣の程普富田翔)、黄蓋高木トモユキ)、韓当郷本直也)らと共に出陣していく。ある日、単独で敵陣営に近づいた孫策の前に謎の男・太史慈早乙女友貴)が立ちはだかり、一触即発の状態に…。

剣劇「三國志演技〜孫呉」公式サイトより


一部が本編(物語)、二部が特別御前試合(スペシャル殺陣ショー)という構成。


まずは本編
三國志を通ってきていなすぎて、名前が……覚えられない……(いつもの)というのはさておいても、しっかりとキャラクターが作り上げられているのでわかりやすく、ありがたいところ。
主人公(孫策)の父との確執の話であり、その親しい人との死が受け入れられずに狂っていくという話でもあった。
父子の確執はこのところ何かでも見たような……と思っていましたが、たぶんヤマトタケルだろうと思われる。己が父とは確執というものもあまりなく、少しく共感しづらいところはあれども、今作の場合であれば、"最も尊敬している偉大な人物"と確執を持ったまま死に別れてしまった苦しみは、確かに人の内面を狂わせる力を持っているだろうなあと思った。
また孫策と周瑜、幼い頃からの親友同士というところで、本当は支え合っていけたらよかったのに、強く、主人として育てられた孫策と、それを支える立場になってしまった周瑜の関係性のせいで、結局お互いに頼りきれなかったのが悲しい。最終的に、そんな関係性のなかで、周瑜がつく嘘が、孫策を救うのだ……。
これは本筋とは関係のないところなのかもしれませんが、孫権と黄祖の話をもっと掘り下げて見てみたかったですね。描かれ切ってはいないため、二人ともいきなり考え方が変わったように見えてもったいない。もちろん察せはするため、余計に見てみたかったな〜ということろがありました。
最後あたりの吹雪のシーン、紙吹雪と投影で雪を表現していることにより、舞台上の空間に奥行きが出てとても広い雪原を見た。あの視覚効果は良かったな。


二部、特別御前試合
たっぷり殺陣ばかり見せてくれるので楽しかった。良いですね〜〜〜。

近頃歌舞伎ばかり見ておりますため、こういう演劇を見るのは逆に新鮮だった。いろいろな違いが見える。
まずは奥行きの把握の仕方が違う。歌舞伎を初めて見た時も思ったけど、歌舞伎の方はかなり浮世絵的な感じがあるのに対し(明確なレイヤー感があるというか…… / 浮世絵が歌舞伎を描きまくっているのでその先入観もあるかもしれませんが……)、こちらは空気遠近法の絵画という感じがする。↑で書いた吹雪のシーンが顕著ですね。
また、舞台の転換の仕方が、かなりシームレス。歌舞伎ではトンテンカンタイム(勝手に命名)でちょっと休憩時間があるのに対し、こちらは大道具を転換している間も、緞帳の前でお話を続ける。一度上演を開始したら、大道具の転換などの都合でお話を止めない、ということが美徳に見える。できる限り現実に近づけて、観客の集中力を欠かさないことを前提にしているのだろうな。
そして殺陣。どちらの殺陣もそれぞれ華やかで格好良さがあるけれども、格好良さの価値観が違うんですね……。歌舞伎の方はゆったり人体のかたちの美しさを見せる感じ、現代の殺陣はもっとスピーディーで、速さに対応する迫力を魅せる感じ。現代の殺陣は、考え方が映像的なのかもなと思ったり。ともかく物語中でも二部でも「剣劇」という名のもとに、この殺陣がたくさん見られて大変満足でした。早い!力強い!かっこいい!!!


そのほか細かいこと

  • 開演前、ロビーに船が置いてありなんだろうと思っていたのですが、小道具でしたね。明治座って鳥屋がないのか……(発見)。

  • 開幕、即、ツダケンの声で驚いた。良いお声です。

  • 孫権の方が闇堕ちしそうと思っていたけれどもそうはならなかった。また、あの衣装のTシャツ?の横文字はありなのか……?すごく……気になった……(細かい)。

  • 太史慈の衣装が紫ベースだったのですが、やはりああいう悪役から中庸のあたりに来そうな色男の役は紫色というイメージなんだろうかとふと思った。色のイメージって不思議ですね。

  • 久しぶりにこういうものを見ましたから、舞台上にいる人がみ〜んなお顔立ちがよろしく、ちょっと眩しくて圧倒されました。歌舞伎の格好良い役者さんたちとはまた違う、お顔立ちのよろしさ。びっくりしちゃった……。

  • 明治座は千鳥配置ではないため、やはり一階席はちょっと頭が被るんですね、とはいえそんなには不便は感じなかったですが、歌舞伎座一階席もこんな感じなのかな。今後の参考メモ。

  • 孫策と周瑜のお二人はそれぞれ、それぞれがやれば映えるだろうなという役回りで、新鮮味がないといえばそうであるし、とてもハマっているといえばそうでした。孫策(梅津さん)は初めの方、珍しく?きっぱりと明るいお役だなと思っていたら、しっかり狂っており、そういうお役がほんとうに似合いますねと思うなど。この心情のグラデーションの表現が見事ですよね……。



公演概要

剣劇「三國志演技〜孫呉」
2024年4月5日(金)~4月16日(火)

明治座

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