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考える音楽

今年もコンクールが近づいてきた。

コンクールにどう向き合うかは色々と難しいし、吹奏楽人口の数だけ思想があると思うのだが、ここでは私なりの提案をしてみたいと思う。

お話と歌詞を付けた中学時代

中学3年間のコンクールでやった曲は、どれも何らかのお話に基づいた曲だったので、曲の場面とお話の場面にかなり厳密な対応関係があった。ない場合もあったが、無理矢理お話を当てはめたこともあった。また、オリジナルの歌詞を付けたこともあった。明確には覚えていないが、多分コンクールや部活にちなんだ歌詞だったと思う。これは曲の場面とは関係なかった。

当時はそれなりに楽しんでいたのだが、心のどこかで、これをやって何になるんだろうか、というわだかまりを抱えていた。どうしても演奏的な視点につながらなかった。お話がわかっても、どういう音を出せばいいのかが全くわからない。

感覚から理論へ

大学で学生指揮者をやるようになって、初めてスコアをちゃんと読んだ。練習でタテとピッチを合わせるだけが指揮者ではない。楽曲の解釈をバンド全体と共有しなければならないので、自分なりに楽曲を解釈する必要があった。そんなことを続けるうちに、次第に「考える音楽」をするようになった。

スコアには色々な情報が詰まっており、作曲者が凝らした技巧が垣間見える。主題をどう展開するか、どういう編成(オーケストレーション)で演奏するのか、その楽器はどういう効果を狙って書かれたのか、その音にはどんな意味があるのか。時として、その曲だけを見ても答えが見つからない場合もある。その作曲者の他の作品を調べてやっとわかることもある。

特に、ホルストの一組を指揮した経験は、私にとって大きな学びとなった。外付けではない、音によるストーリーが見えたのがこの上ない快感だった。そこでの学びは全4回の記事にまとめてある。

そしてそのような解釈は、演奏的な視点につながることも多い。その音の意味を知ると、どう演奏すればよいのかも見えてくる。大学まで吹奏楽を続けて、ようやくあのわだかまりが解消され、音楽表現に関する自分のスタイルが確立されつつある。

楽曲を解釈するということ

その曲をよく知るためには、何よりもまず楽譜をよく見て、なぜその音がそこにあるのかを考えなければいけないと思う。曲にストーリーをつけるのも、歌詞を付けるのも、楽曲に親しむうえでは良いのかもしれないが、それは独りよがりの勝手な解釈になってはいないか、それはその曲を解釈したことにはならないのではないか、と思う。

スコアを基に考えること。

パッと聞いた感じ難しそうだが、それは作曲者の意図を汲み、楽曲をよく知る上で欠かせないこであると同時に、本当に面白いことだと思う。

また、あなたがもし、ストーリーをつけるとか歌詞を付けるとか、今のやり方にモヤモヤを抱えているのなら、そのモヤモヤは大事にとっておいて欲しい。それを解消できる日はいつかきっと来る。

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