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コンクール前夜に

※コンクール前夜に書いた文章を後日投稿しています




明日はいよいよ吹奏楽コンクール.

恐らく,これが生徒や学生として出る最後のコンクールとなるだろう.

前日の自分が,今日までのことをどう見ているのか,残しておきたい.


選曲のこと

ひとまず,今年度のコンクールに至るまでの道のりを書く.

コンクール曲は,確か去年のうちに決まっていた気がする.最大の論点となったのは,団員の「やりたい」を優先するか,コンクールで演奏するにあたっての効果(楽曲自体がどれだけ優れているか,楽団のサウンドとの相性,どれだけ曲を作りやすいか,など)を優先するか,であった.

コンクール曲を募った結果,集まった曲は,圧倒的に邦人作家の作品の方が多かった.楽団のメンバーの傾向として邦人作家が好きなのはほぼ明確だった.

候補曲を絞る過程では,どちらが大事か決着がつくことはなく,その他様々な要因を考えながら曲を絞っていった.最終候補には,邦人の作曲家の曲が1曲,外国の作家の曲が1曲残っていた.

ただ,近年の邦人吹奏楽作家の書いた曲は,いわゆる「歌う」曲が多く,全体合奏で一人一人が周りの響きをよく聴き,全体で綺麗なサウンドをつくることが特に重要視される.私の所属する楽団では,中学校や高校の部活のように毎日合奏が出来るわけではなく,週2回の合奏日があるのみである.さらに,その週2回の合奏でさえ,学業が忙しくてなかなか合奏に参加できない人がいるなど,満足に人が揃う状況ではない.

加えて,最近の邦人作品は全体として完成度が低い傾向にあることも懸念された.最終候補に挙がった曲はサンプルスコアも最初のページしか見ることが出来なかったことから,懸念点は大きかった.

一方,外国人作家の曲にも懸念点があった.

実はこれ,V.ネリベルの交響的断章だったのだが,団員から著しく「やりたくない」という声が多くあがっていた.恐らく,何がしたいのかよくわからないという感想を持った人が多いのだと思う.私も,初めてこの曲を知った時はそのように感じた.この曲の魅力は,長く聴き続けて徐々にわかってくるものだと思う.

指揮者の判断のみであれば,確実にこの曲になっていたが,上記の点が大きな障壁となっていた.

悩んだ末,我々は団員の意向を尊重する方針をとった.

果たして,この選択は正解だったのだろうか?

後輩たちのこと

打楽器では,今年度入った1年生がかなり戦力になってくれた.(音楽で”戦”力というのも変だが…)

昨年度までの打楽器パートの状況からして,新年度からの活動が非常に心配だった.私の所属する打楽器パートでは,ティンパニやスネア(いわゆる「皮もの」)をまともに演奏できる人が私ともう一人の同期しかいなかった.しかし,もう一人の同期は学業が忙しく,コンクールには出ない見込みだったため,出られるメンバーを鍛え上げるほかなかった.

しかし,毎日練習があるわけではなく,みっちり練習して鍛え上げることは難しい.そもそも,本気で全国を目指すわけでもない,あくまで「サークル活動」なのに,強豪校のような厳しい練習を行うことはできない.私だって自分の練習があるから,つきっきりで教えられるわけではない.(しかも複数人!)

もちろんこれは,ヘタクソが嫌いで上手い子が好き,というわけではない.当時のメンバーを,実践で十分活躍できるレベルまで育てられる自信がなく,不安に思っていた,ということである.

そんな中,今年4月,かなり技術レベルの高い1年生が複数人入ってくれて,本当に心強かった.これからの活動でも,きっとこの楽団の音楽を支えてくれると思う.

3年前のこと

3年前,ちょうどCOVID-19が流行し,2019年度末から20年度5月ごろまで全国的に臨時休校になった時のこと.吹奏楽コンクールが中止となっただけでなく,まともに部活さえ行える状況ではなかった.先が見えず,途方に暮れ,いつになったら以前の生活ができるんだろうか,いつになったらコンサートが再開されるんだろうか,そんなことをずっと考えながら過ごしてきた.

大学に入ってもサークルがまともにできず,自らの内側にため込んだエネルギーを発散できず,いつまで続くのかわからない暗闇を彷徨っているようだった.1年生の冬ごろから,ようやくまともに活動が再開した.その時私は,当たり前の尊さを思い知った.毎週,同じ時間,同じ場所に集まって音楽ができることが,これほどにも幸せなのかと思った.

当たり前のこと

それぞれ事情を抱えながらも,全員とまではいかなくとも,それなりに人数が集まり,それとなりに音楽が成立する,

毎週のように楽譜を見て,あーでもないこーでもないと議論できる,

毎週練習場所に集まって音楽ができる,

なんと幸せなことか.

この幸せを,存分に嚙みしめたい.

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