キャンセル待ち

「でもよく、この店、予約取れたな」

「うん、十カ月待ちだったけど、毎日毎日毎日、予約サイトをチェックして、キャンセル出るの狙ってたのぉ」

「執念じゃん。あ、すみません、ビールおかわりひとつ。けど、本当に評判通りの店だな。とり肉はぷりぷり、野菜も香ばしく焼けてるのに、瑞々しさがすごい。特にこの椎茸」

「ちょっと感動するよねぇ」

「ビールおまちどうさまです。何回かいらしてくださってます、よね」

「いえ、初めてで」

「失礼しました。奥様に、よく似た方がいらっしゃって、勘違いしてしまいました」

「えー、やだ本当ですかぁ」

「はは、大将、これ、すごく美味しいです」

「ありがとうございます」

「えっと、美花はもう、お腹いい感じだよね」

「ふん」

「あ、じゃあ俺、〆で鳥スープ頼もうかな、俺焼き鳥屋の鳥スープってなんか好きでさ、あと、えーっと」

「あのさ、てかさ。いつになったら別れて、私を『ホンモノの奥様』にしてくれるの。あと何カ月、待たせる気？」

了