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ライオンのいた小学校

 君の小学校は、ライオンを飼っていました。

 毎日のお世話は、下級生から選ばれた「いきもの係」が担っていたことを覚えていますか? もちろん大人も付き添って、みんなでせっせとお肉をあげたり、体を洗ってあげていたものです。
 授業中に窓をのぞくと、校庭の隅にライオンの檻が見えたことは記憶にありますよね。虫や鳥が檻に近づくと、その雄大な声で校舎を震わせました。

 しかし、ライオンは失踪した。そう記憶しているはずです。

 君の同級生のなかに一人だけ、「ライオンはいるよ! 見えないの? ほら、いきもの係の人たちも触ってるじゃん」と言っている子がいましたよね。彼女はいじめられて、夏休みに転校しましたが。

 夏休み明け、校長の話が印象的だったはずです。

「おとなになると見えなくなってしまうものがあります」

 そういう話でしたよね。

 

※この文章は、「ライオン」「見えない」「校長」の三題噺として書かれました。



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