見出し画像

【第三回】フィギュアからVRアバターを作る(インタビュー・飯嶋氏)

原型師に更なる光を。その声の下に立ち上がったプロジェクト、 MINAMOTO

今回のコラボレーションはプラモデルやフィギュアの企画・製造・販売などで広く知られるコトブキヤ。コトブキヤが近年力を注いでいる「VRアバター」というジャンルでのコラボレーション企画だ。前回・絵師100人展とのコラボレーションで生み出された立体作品『九尾の傍観者』をVRアバターにしていく。

九尾の傍観者

そこで、コトブキヤVRアバター担当・飯嶋氏へ行ったインタビューの様子をレポート。最終回である今回は「MINAMOTOとのコラボレーションについて」などを中心にお話を伺っていきたい。

(第一回のインタビュー記事はこちら)

(第二回のインタビュー記事はこちら)



MINAMOTOとのコラボレーション

――今回のコラボではフィギュアとイラストという2つの元素材をリファレンスとしてVRアバターを制作していきますが、普段こういったケースはよくあるのでしょうか?

すでに元素材として立体物ができ上っている状態から制作することは、普段はないですね。

――普段と異なる元素材から制作するにあたって工夫したことや、気をつけたことなどありますか?

感覚としては、プラモデル開発の感性が強かったように思いました。まず、三面図を描き起こします。今回はマスターリファレンスをしらたま先生のイラストと定め、イラストだけでは見えにくい範囲の制作ではKneadさんのフィギュアを参考に進めました。リファレンスが2種類ある制作は、普段では中々ないですね。

コトブキヤのこだわり

――VRアバターを制作する上で、こだわりなどはありますか?

VRアバターはフィギュアや一枚イラストと異なり表情がよく動くので、アニメーション的な観点が必要です。今回は表情図面を10枚程度作りました。

コトブキヤが必ず行っていることで言えば、正面顔のイラストはイラストレーターご本人に描いていただいています。これは正解イメージを明確にするためです。そうすることで、ユーザーの期待に沿ったVRアバターをご提供できる自信に繋がり、その結果ユーザーの満足度も高くなると考えています。

それから特に力を注いでいるパーツは「手」ですね。

――「手」?

VRの世界では、一番目にする自分の部位は「手」です。ですから、手の造形には非常に気を遣います。今回はコトブキヤのハンドモデルチームが一部監修に入り、手の造形にも一段と力を入れています。

コトブキヤは、フィギュア制作においては原型師の感性に丸ごと委ねられるだけのノウハウがありますが、VRアバターの手の見え方にまだ正解はないと考えています。よりよい造形を企画者、モデラーと模索しながら制作を続けています。

――なるほど。やはりよく目に入る部分は関心が高くなるのですね。

目に見えるところはもちろんですが、見えないところにもこだわりがあります。主にユーザーがVRアバターを購入した後、着替えや髪色の変更などの「改変」を楽しむ際の使い勝手にもメーカーや作家ごとの特徴を感じていただけると思います。是非注目していただきたいです。

――VRアバターの一般的な制作期間はどのくらい要するものなのでしょうか?

あくまで弊社の事例ですが、コトブキヤでは新規作り起こしの場合一年程度かかります。

コラボの感想と今後に期待するもの

――今回のコラボレーションの感想をお聞かせください。

今回制作している「九尾の傍観者」はキャラクターの名前が明確に存在しないところがとてもよいと思います。このキャラクターにユーザーは自分の気持ちを乗せることができますよね。固有の名前がなく、属性をメインにしているVRアバターのほうがユーザーは使いやすく、人気が高いように感じます。有名なIPを起用すれば人気が出るという訳でもないので。

VRアバターはマスプロ(=大量生産)よりも一点ものといったアートの観点でのニーズが高いと感じています。しかし、自分で企画をするとどうしてもマスプロ的思考が入り、固い表現や守勢の強い表現の製品になってしまう。
その点、今回ご一緒する「九尾の傍観者」のキャラクターデザインはVRユーザーの本当に欲しいものに近いものだと思いますし、手ごたえを感じています。


三回にわたりコトブキヤ・飯嶋氏のインタビューをお届けした。
似ているようで異なるフィギュアとVRアバターの世界。VRという近年勢いを増すジャンルに対し、原型師は今後どのようなアプローチが可能なのか。

「MINAMOTO」×「コトブキヤ」コラボVRアバターについては2023年11月に開催される「コネクテッド・インク東京2023」にて情報のアップデートが行われる予定だ。VR世界で立体化するキャラクターの姿、魅力を文字通り「体感」してほしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?