見出し画像

【第一回】なぜコトブキヤがVRアバターを?(インタビュー・飯嶋氏)

原型師に更なる光を。
その声の下に立ち上がったプロジェクト、 MINAMOTO


絵師100人展とのコラボレーションでは「原型師」×「絵師」の共作企画を行い、「『軌跡』と『交錯』」というテーマの下に6点の作品が生み出された。そんなMINAMOTOの続くコラボレーション先は、プラモデルやフィギュアの企画・製造・販売などで広く知られるコトブキヤ。コトブキヤが近年力を注いでいる「VRアバター」というジャンルでのコラボレーション企画だ。


絵師100人展とのコラボレーションで生み出された立体作品『九尾の傍観者』。コトブキヤとのコラボレーションでは『九尾の傍観者』をVRアバターにしていくという。

『九尾の傍観者』

そこで今回はコトブキヤVRアバター担当・飯嶋氏へ行ったインタビューの様子をレポート。飯嶋氏はMINAMOTOコラボで制作の監修も担当している。

三回に分けてお届けする本レポート、初回は「なぜコトブキヤがVRアバター事業を?」そして、「VRアバターの需要・活用法」についてお話を伺っていきたい。


なぜコトブキヤがVRアバター事業を?

――コトブキヤと言えばプラモデルやフィギュアのイメージが強いですが、VRアバター事業に参入したきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

2017年の株式上場以降、新規事業や新しいチャレンジを社内で検討しており、その一つのテーマが「デジタル事業領域への参入」でした。フィギュアやプラモデル用の3Dデータを利活用することで新たな事業になるのではないかという発想からの展開です。

当時、3Dプリンタの導入が各社進んでいたこともあり、3Dの未来は明るいという雰囲気がありました。しかし実際は、アニメ会社がアニメ用の3Dデータを販売する、フィギュアメーカーがフィギュア原型データを販売するといったチャレンジをしては、それが定着しないということが繰り返されている時期でもありました。

――なぜ定着しなかったとお考えですか?

3Dデータを販売しても購入したお客様がそれを使う場所がなかったからです。なぜならばフィギュア原型データはフィギュアを作るための素材ですし、アニメ用の3Dデータは映像を作るための素材ですから、それを楽しむ術がない。例えるなら、DVDプレイヤーがないのにDVDを渡されても困ってしまう、といったところです。

そのような時代を経験したことから、3Dデータ売買という事業モデルは難しいと私は思っていました。しかし、2018年のVTuberブームのあたりから「3Dデータを生活必需品として求める人たち」が増加してきたことで潮目が変わってきました。

――3Dデータの使い道が生まれたのですね。

そうですね。個人VTuberたちが独学でモデリングをする姿なども見られ「自分にもできるかもしれない」という雰囲気が生まれました。VTuberブームに合わせてVRChatにも秘かに火がつき、VRを楽しむ場にユーザーが増えるきっかけになったと思います。

今までは作品の素材だった3Dデータが、人とコミュニケーションをとるために必要な「生活必需品」に変化した。洋服や化粧品と同じ土俵に立ちはじめたのです。
この流れを受け「3Dデータが必要な世界」となった今ならば、デジタル事業を伸ばしたい会社の意向や、造形に関するコトブキヤのエッセンス・ノウハウがVRアバター事業に活かせると思い、チャレンジしています。


VRアバターの需要・活用法について

――先ほども少し上がりましたが、VRアバターの需要・活用法についてはどのようなものがあるのでしょうか?

様々な需要があります。コトブキヤはその中でも改造、カスタマイズという観点に着目しています。VRの文脈では「改変」と呼びますね。

――「改変」というのは?

購入したVRアバターを自分の気が済むまでアップグレードし続けるという遊び方です。プラモデルやアクションフィギュア、ドールの遊び方に近く、「直してやるぞ」というニュアンスはここにはありません。
「改造」でも「調整」でもなく「改変」と呼ぶのは、クリエイターさんへの敬意の表れだと思います。

様々なクリエイターから様々なアイテムが販売されており、それらを買い集めて自身のVRアバターをデコレーションしていく。自分の表現したいものを突き詰めていくという遊びや感覚は、プラモデルだけではなく、例えばカスタムカーやメイク、ファッションなど多くの人々が楽しいと感じていることと同種のことだと思います。

VRの世界では、アバターは自己表現の支えであり、そしてそれを用いてコミュニケーションを広げるファッションでもあるのです。

アバターショップコトブキヤ

――なるほど。デザインでいうと、どのようなキャラクターが人気なのでしょうか?

美少女、ケモミミ、あどけなさの3要素が揃っているものは特に人気です。

――日本らしいですね。

そうですね。でも実は、日本だけではないのです。韓国をはじめとする近隣国の方たちの勢いもあり、人気アバターの落としどころは国際的な「美感」なのではないかと感じています。

現在のVRアバターコミュニケーションの礎になっているものとしてMMO(大規模多人数同時参加型オンライン)RPGが挙げられます。自分自身を表現したアバターを介してゲームプレイやチャットを楽しむものですが、このMMORPGに強いのが韓国です。日本の方と韓国の方がVRを介してコミュニケーションを取ることも多く、今やVRアバターは国際的な遊びとなっています。



第一回はここまで。
次回(9月公開予定)は「VRアバター事業で重宝されるスキル」、「VRアバター業界で生きていくためにテクニック以外で学ぶべきこと」について掲載を予定しています。


次回もお楽しみに!


いいなと思ったら応援しよう!