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(読み切り小説)雪だるま改のジレンマ

それは明らかに変な出来栄えの
多分悪ふざけで作ったんだろうな。

誰かが1体の雪だるまに
拾った枝かなんかで手のみならず
足までも増やした。

何か、、やっぱりちょっと変だね💧

隣に並んだ仲間の雪だるまが
ぽつりと言った。

うん、何だろ
全然馴染めない、困ったな、、。

かなり広大な手入れの無い更地
いつしか誰かが雪だるまを作り置き
それがひとつふたつと増え
今年は豪雪という事もあり
気付けばかなりの数の雪だるま☃

大きさも形も様々で
沢山並んだ可愛らしい姿は
通り掛かる人の目を楽しませたりもしていた。

その変なの取ってあげたいけど
う〜〜〜ん、駄目だ全然届かない💧

だろうな、、。
手の可動域を考えてみろよ
物理的に無理だろ。

えっ、カドウイキって、、何?
ブツ、リ、、?

足(枝)の生えた雪だるまは
辺り一帯の仲間内でもかなりの博識で
突然変異の雪だるまとでも例えようか。

彼は雪だるま改と皆に呼ばれ
頼りにされていた。
足(枝)が生えた事により
さらにレジェンド感?が増したようだ✨

とにかく皆が驚くような
難しい言葉なんかも知っていた。

ブツリ、、テキ?んんっ?
隣で一生懸命反芻する雪だるま☃
その姿は健気で
仕草すらも可愛らしいと思った瞬間

ふふふ、と雪だるま改から
自然と優しい笑みがこぼれた。

難しかったか?
いやイイんだ、君はそのままで♡
でももし君が望むなら
俺がもっと広い世界を見せてあげたい。

え?あなたみたいに
色々覚えたりするの、私が?

いや違うんだ、聞いてくれ。
この変なの(枝の足)あるだろう
実はいちおう動く事が分かったんだ👣

ちょっと練習したら
何とか前に進めてさ、怖がらせないように
君が寝た夜中に歩き回ってたって訳さ。

少し先の森に良さげな枝が沢山落ちていて
君の分も拾って来ようと思う。 

足があったら
俺たちは歩いて好きな場所に
どこまでも行けるんだ。

聞いた話だと1年中雪と氷に囲まれた
そこは決して溶けない未知のユートピア✨
永遠に今のまんまでいられるんだぜ!

今溶けちゃうんじゃない?ってぐらい
熱を帯びて語る雪だるま改。

それに反して
隣の雪だるまは少し言い淀みながら

知らない場所とか、、何か怖いよ💧

それにウチらは暖かくなったら
溶けて空に昇って海に還る
そうしてまた蒸発して雨や雪になり
空から落ちてを繰り返す、そうでしょう。

自然の摂理だけはちゃんと知っていて
他はまるで無頓着。

キラキラとした無垢な光の眼差しに
何度も溶かされそうになった事を
雪だるま改は再認識した。

広場にこんなに沢山の雪だるまの中で
たまたま隣に並んだ1体に
運命を感じる出逢いとか、奇跡じゃんて✨

生えた足でどこまでも
決して溶けないユートピアを
必ず目指そうと固く決心した夜が
一瞬で揺らいだ。

けれど同時に得た確信にも似た恋心で
全てがどうでも良くなった。

未知の場所だもんな、怖いかもだけど
溶けて無くなるよりはマシだと
ずっと考えてたんだぜ、俺は。

でも、眼の前の君が少しでもためらうなら
それは果たして、、。

ジレンマを抱えた雪だるま☃
足には枝が生えていて
遠くまで歩けるけれど結局
可愛いあの子の側に戻って来てしまう。

ああ、誰もが羨む能力(枝の足)
そんなモンを手に入れたとて
愛しいあの子には決して適わない。

朝になるとふたりの足元、雪の上に
いくつもの小さな花のような
可愛らしいハートの模様が描かれていて

それは雪だるま改のジレンマの数だけ
増えて行く、刹那な恋心♡

まだ残る冬のまにまに
見守りたい小さな冬限定・恋物語。


追記)
好きな曲たちから
幾つかのフレーズ忍ばせて
勝手にSpecialThanks なのでした♪










































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