たちばなさんちの水素水

「しょっぷちゃんアモーレ」は、三人の男の子を育てるたちばなさんが、家族を学校に送り出し、休むことなく仕事に向かいながらの、つかの間の癒しである通販番組のことを描いた作品。

個性豊かなキャスト(商品説明の人)心がゆらいた商品、通販で知り合ったママ友との福袋チェック。安い冷凍うどんでそれなりに満足していた家族に「本場讃岐うどんセット」の良さはわかるのか。

美容関係のアイテムが使い切ってないうちにたまっちゃって、友達どうしで交換するときは、交互に「これで若返っちゃうんじゃない?」「あ、若返った!」って、えんえんと繰り返す。

その中に、今は効能もかなり疑わしいとされている、「水素水」を作る機械が出てくる。
これ飲んだら「若返りそうじゃない?」「あ、若返った!」
一連のママ友同士の「若返るんじゃない?」「あ、若返った!」
の繰り返しは、正直そこだけ切り取るとおばちゃん力が凄まじくて、こうはなりたくないなーと思われてもおかしくない。

けど、たちばなさんの一連の作品には、子供三人を学校に送り出すまでがどれだけ大変か、楽しいことばかりではないのが繰り返し書かれている。
子供のひとりはダウン症で、小学生だけどまだ意思疎通が難しい。この子は「ゆっくり、のんびり成長中」と紹介される。どの作品でも自己紹介でこの子のことにふれるが、決して「他の子より遅れて成長中」とは書かない。
それを見るたびに染みわたるママの強さ、偉大さ、ありがたさ。

その合間の貴重な時間で、友達とはしゃぎながら飲んだ一杯の水素水の効能を誰が否定できよう。
いや、水素水はこの日のためにあった!じっさい若返ってるんじゃないか。母の強さと、失礼ながらちょっと可愛らしさも感じてしまうお気に入りのシーンだ。

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読書感想文

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。