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韓国の伝統文化「おごり合い」。外食のたびにおごり、おごられは悪循環?(『キム秘書はいったい、なぜ?』について#6)

『キム秘書はいったい、なぜ?』について6回目は、韓国独特の支払いの習慣「おごり合い」のことを書きます。

 13話で、企画チームからヨンジュン(パク・ソジュン)を補佐する秘書室に異動になったコ・ギナム(チャンソン)は、同僚たちからの歓迎会の誘いを残業があるのでと断ります。ところがコ・ギナムは残業をせずに帰り、同じ建物に住んでいる同僚キム・ジア(ピョ・イェジン)にばったり会ってしまいます。

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ドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』からのキャプチャー画面。

 ジアが残業だったのではないかと聞くと、コ・ギナムは「おごらされるのが嫌で嘘をついた」と言います。ジアは、今までお世話になっているのもあるし、自分がおごるから一緒にご飯を食べに行こうと誘います。それでも倹約家のコ・ギナムはおごり合うような悪循環は避けたいと断ります。結局、2人は一緒にご飯を食べに行きますが、ほかのドラマでも「おごります」「おごってください」というセリフは多く、実際に韓国ではおごり合うことは頻繁にあります。

 会社の同僚同士ではダッチペイ(Dutch Pay:割り勘のこと)、会社の公式会食は会社持ちが普通ですが、知人や友人同士で食事をするときはおごり合い、人数が多いときだけ割り勘にすることが多いです。このような風習は世代間で差があり、若い世代ほどダッチペイを選好しています。

 おごる側の場合、特別なルールがあるわけではありませんが、大体先に誘う人や年上の人がおごります。また、知人や友人が自分の家の近くに会いに来る場合もおごります。誘うときに今回は私がおごるとか、美味しいものをおごりますという言葉もよく使います。
 おごり合うパターンは、友人AとBが会ったとしたらご飯はAさんがおごり、コーヒーはBさんがおごる。今回Aさんがご飯をおごったら次回はBさんがおごるといったように順番に。ですが、こういう風におごり合うと、その都度払う金額が違ってくることもあります。たまにしか会わない知人であれば、次回はいつになるかわからないので「おごり合う」のは合理的ではなく、コ・ギナムが言ったように悪循環になるのが事実だと思います。ただ、韓国人はおごることを計算的ではなく気前や情だと思ってすることが多いので、自分がおごることに対して必ず返してもらおうという気持ちはそれほどないと思います。

 昔は、割り勘はケチに見られるという意識があり、周りの目を気にしておごっていたというのもあるようです。また、多くのレストランやカフェでは別々に会計することができなかったのも、おごり合う風習ができた理由の一つだと思います。最近は個別会計が可能な飲食店も増えてきていますが、それでもレジカウンターで別々に払うより、誰か一人がまとめて支払いをしたら、その場でスマートフォンを利用して自分の分の振り込みをするというケースが増えてきたようです。今はキャッシュレス社会で現金を持たない人も多く、韓国は銀行の振り込み手数料が無料の場合も多いのです。おごり合い文化がなくなることはないと思いますが、キャッシュレス化や世代の意識の差によって少しずつ変化してきています。


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