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日記/20230312

朝食は食べずに六本木へ向かう。いつも最寄り駅へ向かう途中にある昔ながらのタバコ屋の前にその亭主が管理しているらしき自動販売機があって、その一番下の列に並んでいる微糖の缶珈琲を買うのが日課となっている。缶珈琲にはたいへんな量の砂糖が入っているのだからやめた方がいいと言われたら、缶珈琲には缶珈琲のクオリアがあるのだと答えるけれど、では缶珈琲ならどれでもいいのかと聞かれたら、そのタバコ屋の前の自動販売機の微糖の缶珈琲がいいのだと、とても限定的にぼくは答えると思う。街中の自動販売機でもいつも、その銘柄がないかをじつは探している。ぼくの頭のなかの街は缶珈琲によってある程度ネットワーク化されているといって過言ではない。今日もまたhotの缶珈琲を120円に購入して、ジャケットのポケットに入れて、駅まで向かう。中目黒まで行く。日比谷線に乗り換えて、10分ほどで六本木。今日はハリウッドビューティープラザという、一度も足を踏み入れたことのない場所で開かれる美術批評関連のレクチャーを聴く。14時の開始までは少し時間があったので、六本木ヒルズのノースタワー地下1階にあるヤム亭でカレーをスパイスカレーを食べる。一緒にいた人にぼくは複雑なスパイスの交わりが苦手だと思われているだけど、そんなことはまったくない。ただカレーは食べようとするのに体力が必要だという、億劫さがぼくのなかに湧きあがってくるから、普段はあまり食べないだけで、本当はスパイス耐性はかなりあるはず。体力が必要、つまり疲れそうなイメージは浮かぶ食べ物はほかにもあって、一番はフルーツ。フルーツはカレーと同じでまったく嫌いではない。ただ、疲れそうな気はしているだけ。店に入ったときにいた隣のカップルはちょっと分からない現代アートはいいけど、わからなすぎる現代アートの展示はいかないとかなんとか話していた。小豆島で見たあれは面白かったよね。あとモノクロ写真の展示なら行きたいねと言って、お会計に行ってしまった。次に来た女性の2人組はこの店と下北沢にもあるヤム亭の店舗の雰囲気の違いについて話していた。カレーはおいしかったし、久しぶりに食べた玄米もおいしかった。当たりだった。ぼくらそのあとスタバで少し読書をして、時間になったので、会場へ。イギリスとフランスを拠点にする批評家のレクチャーを聴いたところで、途中退出。そのまま思いつくままに青山ブックセンターへ直行し、物色。坂口恭平さんの『幻年時代』の文庫版とまだ読んでいなかった斎藤環さんとの往復書簡を購入。表参道駅とブックセンターのちょうど中間にある「ねぎし」にカフェに入るような気軽さで入店し、とろろと焼き豚とごはん二杯も平らげた。いまは夕方の6時前。きっとあとでまだお腹がすくだろうけど、その時はおしゃぶり昆布でも食べようと思う。『幻年時代』を読みながら、東横線で帰る。はじめにあの灰色のハードカバーで読んだときにはえらく読み進めるのに時間がかかった記憶がある。重力場みたいな力に足を取られていた気がするけれど、今度はなぜだかするすると読める。駅からの帰り道、成城石井の生ハムを観察する。おせんべいコーナーを観察する。ウェルチがおかれていたはずの冷蔵棚には乳酸飲料しか見当たらなかった。今日はスペースをしたい気分だったので、3月22日に一緒にトークをする美大生に集まってもらって予告編をすることにした。22時45分-25時まで話し続ける。深夜の哲学対話になって聞いている人も面白かったと思う。録音はここから。26時頃、暗がりのベッドでゴロゴロしながら、今日の格闘技情報をチェックする。切れているチーズを5枚ぐらい食べてしまう。ミネラルウォーターをがぶ飲みして、眠りにつく。


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