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新企画800について

ウェブと紙の一番の違いはどこにあるか。アーカイブ性?それも正解です。が、もっと重要なことがあります。校閲です。ウェブと紙では、校閲にかける労力が全く異なります。もちろん、ウェブでは簡単に、紙では手厚く校閲が行われます。

紙の情報がウェブに代わるときの最大の問題はここにあります。

もしいま批評やレビューが行き交うメディアが必要だと願う人がいるのなら、必要なのはじつはメディアではありません。その昔、アマゾンレビューやSNSの呟きを指して、一億総評論家時代の到来といったひとがいました。それは一億総個人メディア時代ということです。今日、メディアは誰でも作ることができて、すでに無数に存在しているのです。

しかし、それでよき言葉の場が生まれたのでしょうか。多くの人が「いいえ」と答えるでしょう。私もそう思います。なぜ?その理由は明らかです。いま私たちが読んでいる、メディアらしきものから発せされている文章には、ほとんど誰の校閲も入っていないからです。裸の王様となった言葉たちと、その過剰な流通。本当は、これは書き手にとっても読み手にとっても恐ろしいことです。

にもかかわらず、あまりにも校閲が軽視されてはいませんか。お金や人材の問題から校閲はまっさきに削られてしまう。こうした現実があったとして、でも校閲があるべきだと思うのであれば、校閲を中心においたメディアづくりを考えるべきではないでしょうか。もっと校閲に優しいメディアを。
メディアは何かと何かを繋ぐものです。言葉を社会化する装置だといってもいいでしょう。それは何よりも言葉の校閲によって支えられています。書き手である人なら誰しもが了解することだと思います。

まずは800字でいいです。ある展覧会についてのレビューを書いてもらいましょう。だいたい既存メディアのレビューで2000字目安なら執筆に2週間、その校閲には1日、実質は2時間も掛けられていないかもしれません。しかし、私たちには校閲の時間があります。なぜなら、私たちは校閲こそを主眼とおくメディアだからです。

執筆と同じ時間を校閲にも掛けるつもりでやりましょう。3日の執筆と、3日の校閲。おそらく10日もあれば、入念な校閲を経た800字のレビューが出来上がります。完成したら、テキストだけの表示されるシンプルなウェブページで公開していきましょう。そのペースで一か月なら3本、一年続けたら36本の、おそらく日本で最も校閲された展覧会レビューが揃うことになります。800字×36本あれば、十分に小冊子にまとめることができます。タイトルは「800」としましょう。日本一のレビュー集のできあがりです。

メディアの信頼とは、他人の文章に向き合ってくれる人間の存在によって決まります。それは広い意味で校閲という仕事の中にあります。まずは、その最小単位のひとりの執筆者とひとりの校閲者のユニットから始めてみませんか。(文・みなみしま)


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