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【読書記録】暴虎の牙/柚月裕子

いい年をした大人が、声を大にして言っていいのかどうかわからないのだが、

私は広島弁が好きだ


いや、もう…自分でもなぜか分からないけれど、広島弁が好きで好きで、
聞けばキュンキュンしてしまう。
幸か不幸か広島弁を話す男性にお近づきになったことがないので、
惚れた経験はないが、
もしも出会っていたなら、惚れていたんじゃなかろうか。
女の子のお友達はいたのだが、
問答無用で好感を持っていた。

おそらく昔観た「カバチタレ」というドラマの影響ではないかと
私は思っている。
確か常盤貴子さんと山Pが広島出身のご姉弟という設定だったのでは…
山Pの「〜じゃけえ」「〜じゃろ」とかいう語尾にキュンキュンしていたのだろうか。
ただ、山Pに好感を持っているが、山Pのファンではない。
あとは、昔の某・出会って旅して恋する番組にて
広島出身の男性が出ていて、その人が言葉を発する度に
キュンキュンしていた。
なんというか…広島弁に妙〜に男らしさを感じるのである。
実際にお付き合いをしたことがないもんだから、
余計に幻想は募るばかりである。
実際に広島ご出身の方がどうなのかは話は別。
声を荒げて、広島弁で凄まれるとそれだけで
ハート鷲掴みされてしまう。

それがこの柚月さんのシリーズでは、最初から最後まで、
隅から隅まで広島弁を堪能できるではないか。
こんなに幸せなことってない。

どこの者もクソもあるかい!死にとうなかったら、こんならが手にしとるもん、黙って渡さんかい!」

「暴虎の牙」より

                                     「わしの仕事はのう。堅気に迷惑かける外道を潰すことじゃ。」

同上/大上のセリフ

「わしゃあ、本気で、言うとるんで」

同上

決して品のよくない言葉の応酬が延々と続くものの、映像と違って柚月さんが描き出すと、ただただ「かっこいい」が浮き出されるのだ。(個人的に)
映画「孤狼の血」は残念ながら、「え、ここまで品のない感じに演出しちゃう?」とドン引きしたのだけれど、柚月さんの描き出す広島男は渋いんだ、これが。
なんというか…
私の中の「ザ・漢(おとこ)」たちが総出演!!!といった感じである。
やっぱりガミさん。
映画では役所広司さんが演じていた人。このガミさんがかっこいいのだ。
昭和の時代の暴力団担当の刑事は、なんでもこいのイケイケな違法スレスレの捜査で、ヤクザも下手に逆らえない。上司たちの弱みも掴んで、署内でも
ガミさんには一目置いている。
けれど、女こども堅気には優しくて、かっっっっっこいいいいいい
日岡もかっこよく成長したけれど、やはり平成の世になってあれこれ規制もかかってるから、ガミさんほどの修羅場は潜り抜けていないと思うわけよ。
一ノ瀬も筋は通す、堅気には手を出さない、薬には手を出さない、という
この極道の昔気質でありながら、尚且つ外道じゃないっていうかっこよさ。
しかも、なんか言葉数少なくて品がいい。
ああ、かっこいいが渋滞。

さて、今作では沖虎彦という極道でも警察でもないが、
どちらにも負けていない男が登場。
極道を憎み、薬漬けの父親を憎み、たった一人で…いや、幼馴染三人で
戦い抜いてきた男の話。
「孤狼の血」にてガミさんのトレードマークだった白のパナマ帽
これの出どころも描かれていて、「ここからかぁぁぁぁ」とまた痺れちゃう。
ガミさんの亡くなった妻子の経緯や、日岡のその後が描かれていたりと、
シリーズのファンには堪らない内容となっている。
暴力シーンがあまりにも過激だったり、性的な表現があまりにもしつこいと
私は苦手なのだけれど、柚月さんの表現は
かっこいいけど、下品じゃない。これに尽きる。

広島弁が飛び交うのを堪能できる、このシリーズ。
ずっと続いてほしいと思っている。


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