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【読書日記】傘を持たない蟻たちは

「傘を持たない蟻たちは」加藤シゲアキ

ずっと気になっていた加藤シゲアキくん。
私はジャニーズ好きなので、彼には好感を持っております。
「ピンクとグレー」は映画の方を観ました。菅田将暉が好きなので。
でも、観た印象として、原作のストーリー展開がしっかりしていることが印象的だったので、いつか読もうよもうと思いながら年月が過ぎていき、この度直木賞にノミネートされたことで、今がヨミドキ!と思うに至る。
直木賞パワーはやはり凄い…(ミーハーな私にとって)

今回読んだコレは初の短編集だそうで、6作入っている。
私が気に入ったのは「恋愛小説(仮)」と「イガヌの雨」。
「恋愛小説(仮)」は、自分が書いた200字までの文章がそのまま夢の中で再現されることに気が付いた小説家が、初恋の女の子が亡くなっていたことを知り、夢の中に初恋の相手を登場させる、というお話。
このルックスでこてこての恋愛小説を書いてくれたら、かなり胸キュンなのに、どうやら加藤くんは恋愛小説は好きではないようで、一味二味、裏切る方向で持ってくる。

自分の思い描いたとおりの夢を見られたらいいのに…とは私もよく思う。
夢の中では好きなタレントも出てくるし、現実がどんなに世知辛くても夢の中で癒されたら一日いい気分…てなもんだ。だから、非現実的であってそれでいいのに、潜在意識とは恐ろしいもので、
私が好きなタレントは現実には絶対に私を好きになったりしない、ということを私も重々承知している。なんというか悲しいかな、芸能人云々よりもこのタイプの人は私のことは好きにならない、という何か別の意味の冷静さがあって、それを夢は確実に反映してくるのだ。
いや、そもそも芸能人との出会いなんてありませんよ。
そうなんだけど、そうじゃなくてそこは出会っちゃうのは夢のなせるわざなわけだけど、
出会ってるにも関わらず、いつも夢の中でも片思いなのだ。
好みじゃないタレントさんとは意外とうまくいっている。(夢だからなんでもこい、だ)それでよくある、今まで好きじゃなかったのに気になるパターンもよくある。
好きなタレントに限らず、昔好きだった人、振られた人、なんかも出てきても、私はやっぱり夢の中でなんとなく振られてしまうのだ。
夢見がちな私なのに、潜在意識の方がきちんと現実を理解してしまっている。
悲しい…
「恋愛小説(仮)」も始めは都合よく事が運んだものの、「潜在意識」というものの存在に気が付く主人公。
でも、願望をそのまま表してくれるんだから、やっぱり羨ましいなあ、と私なんかは思ってしまった。

「イガヌの雨」は、ある日空から大量に降ってきた「イガヌ」という謎の生物を食するようになった人類の話。多量の栄養価を含んでいて、それを食べるだけであらゆる栄養を摂取でき、しかも美味しい。そして中毒性がある。
主人公のおじいさんは、「食事」というものを大切にしている。「イガヌ」のせいでこれまでの「食文化」が失われていくことを危惧し、「イガヌ」を憎んでいて、家族に「イガヌ」を食べることを禁止している。
大した料理をする必要もなく、それ自体で美味しく、栄養価も高い…となったら確かに食文化は失われるだろうな。それは人間の文化そのものが奪われていくことになるんだろう。
「食文化」という観点からも面白い、と思うし、中毒性のあるものに対する恐ろしさ、も描かれていると思う。

こんな感じのお話…SFチックなものもあれば、サスペンスチックなものもあって…一筋縄ではいかない類の話が多い。「ピンクとグレー」もラストで話が反転しちゃうし、そういう裏切り要素のあるお話が多い。感動系、恋愛系ではない。
加藤くん…ファンではないけれど、これからも応援していきたい。

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