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【読書日記】最後に手にしたいもの

「最後に手にしたいもの」吉田修一

私は吉田さんが好きなのだが、近所に大きな本屋さんがなく(出不精なので10分以上かかるところは遠い部類に分類)、もっぱら利用する図書室は分室のため、そこに並ぶ吉田さんの本は限られている。
そして、元来探究心がないので、吉田さんのホームページをチェックしたり、新刊をチェックしたりということができない。
というわけで、先日の記事を書く時に初めて吉田さんのホームページを見て、吉田さんてエッセイも書かれてるんだ!と嬉しい驚きと共に図書室に予約する。


こんな私だから、なかなか誰かのファンだ、とは口にできずにいる。
本当のファンの方の手前、恥ずかしいというか申し訳ない気持ちになる。

さて、このエッセイ。
期待を裏切らず、面白かった。
ANAの機内誌「翼の王国」で連載されていたものをまとめたそうな。
昔はエッセイなんて興味ない、その人の人生なんか興味ない、その人の生活なんて興味ない、なんて思っていたけれど(だから、初め自分がこうして記事を書くのもすごく抵抗があった。皆さんの記事を読みながら恐る恐る足を踏み出してみると楽しい。)年をとるとともに、いや何かのきっかけがあったのか、今では好きな作家さんのエッセイを見つけたら手に取るようにしている。見つけるのは遅いけれど。

物語はフィクションだけれど、その中には必ず作家さんの人生や生活や考え方が入っていて、エッセイを読むと、時々、そこが重なる瞬間がある。必ずしもそうではないけれど、そうした瞬間を見つけた時に、嬉しくなる。
世之介を描く吉田さんって一体どういう人なんだろう?とずっと思っていたから、エッセイの中に世之介らしい部分が見えると嬉しくてニヤニヤとしてしまった。世之介みーっけ!と言いたくなるほどに。
機械オンチの下りは、私の方ができるかもしれない…という新鮮な驚きを、電車に乗りながらTwitterで自分を検索したら、まさかの目の前の人につぶやかれていた下りや、猫に対する愛情あふれる描写は、吉田さんの作品に所々垣間見える、おかしみを感じた。

吉田さんの中に、やっぱり世之介がいて、その一方で「怒り」や「悪人」を描くようなシビアな部分、優しい琴線もあったりするんだろうなあ、と。

ちなみに、探究心はないがミーハー心の強い私は吉田さんがTwitterの記事に目を通すと知って、Twitterを始めようかしら、と思うのであった。

http://yoshidashuichi.com/



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