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【読書#1】私たちは子どもに何ができるのか


読んだきっかけ

最近、「非認知能力」*1)というキーワードをよく目にするようになり、どういった観点でこのような能力を伸ばせるのか、どのような要素から成り立っているのかが気になり、頭を整理するために本書を読んでみた。結果、本はポストイットだらけとなり、参考になる情報がたくさんあったのでまとめてみようと思う。

*1) ひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲などを指す。心のOS(オペレーティングシステム)と言っても良いかもしれない。(p.4-5)

親は子どもに何ができるのか

本書は子供の貧困が非認知能力の獲得機会を奪ってしまうことを問題とし、親や学校、政府、社会などあらゆる視点から子どもに何ができるのかを述べている。私が子を持つ親であるので、ここでは親が意識してできることを(学校の先生ができることも参考にしながら)まとめていきたい。

「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも「非認知能力は子供を取り巻く環境の産物である」と考えた方がより正確であり、有益でもある。(p.27) 
いちばんの問題となる環境要因は、居住する建物ではなく、子供たちが経験する人間関係なのだ。つまり、周りの大人が、とくに子供たちがストレスを受けているときにどう対応するかである。(p.32)

子どもたちが最初に経験する人間関係=親。親の態度や対応の仕方が子どもに影響を与える!と思うと、責任重大である。


1.親が先生をうまくコントロールする

読み進めば進むほど、「これ、先生と子供の関係がめちゃくちゃ重要なんじゃ…」と思えてくる位、本の中で学校の先生ができることについて多く触れられている(小学校~高校生くらいまで)。一方で、その位の年頃の子供に先生と良好な関係を築きなさいといっても無理があるので、親が先生本人とコミュニケーションを取って、自分の子供にとって有益な方向に進むように仕向ける、ということが必要なんだと感じた。


なぜ先生との関係が重要なのか。子供が何か前向きに取り組もう!と感じる環境に、先生が一番近くにいると思われるからである。

モチベーションの維持について、本書ではロチェスター大学の二人の心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンのライフワーク「自己決定理論」について言及している。

私たちは多くの場合、自分の行動が生む表面的な結果ではなく、その行動によってもたらされる内面的な楽しみや意義を動機として決断を下す。二人はこの現象を「内発的動機付け」と名付けた。さらに二人は、人が求める三つの鍵を見きわめたー「有能感」「自律性」「関係性(人とのつながり)」である。そしてこの三つが満たされる時に限り、人は内発的動機付けを維持できると述べた。(p.89)
生徒たちが教室で「自律性」を実感するのは、教師が「生徒に自分で選んで、自分の意思でやっているのだという実感を最大限に持たせ」、管理、強制されていると感じさせないときである。生徒が「有能感」を持つのは、やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスクー生徒たちの現在の能力をほんの少し超える課題ーを教師が与えるときである。生徒が「関係性」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるときである。(p.91)

意外に「自律性」「関係性」については保育園で実感できる環境があるんじゃないか?と感じた。むしろ小学生以降、急に統率が最優先事項になり、これら三つのシチュエーションが生まれにくいのではないかと感じている。「自律性」は今のカリキュラムだと対策が難しいかもしれないが、「有能感」については自分の子供のレベルを把握してもらい、例えば少し上の教材を提供してもらうなどでも対応できるだろう。「関係性」については、親が先生と良好な関係を築くに越したことはないと感じた。正直、自分自身小学校の先生と衝突が多かったためこの点不安はあるが、今後の関係を見据え、言ってしまえば親が先生をうまく転がす技術も必要になるのではないか。

結果として、下記のような子供たちに必要な環境が提供できるのではないかと思う。

非認知能力は心の状態のようなものー環境に左右される複雑な土台ーと考えた方が良いのではないか。良い学習習慣を身につけるために子供たちが何より必要としているのは、自分が自立した存在であり成長していると感じられる環境、なおかつ帰属意識の持てる環境で、できるだけ多くの時間を過ごすことではないか。デシとライアンの言葉を借りるなら「自律性」「有能感」「関係性」を経験できる環境だ。(p.94)

2.子供に合った学校選びをする

我が家は中学受験を予定しているのだが、偏差値だけにこだわらず、校風や教育方針、生徒の雰囲気など幅広く見ていく必要があると感じた(当たり前のように聞こえるが、意外に偏差値を最重要と考える人も多いため、あえて書く)。

ファリントンが「学業のための粘り強さは状況に大きく左右される」(p.107)と言っているように、性格上の特質だけでなく学校や教室など周りの環境に子供の態度が影響されると思うからだ。

「生徒をグリットを持った人間につくりかえようとする(つまり、人生の全ての側面に対し、いついかなる状況でもグリットを発揮できるようにする)ことにあまり益はないが、生徒が環境の影響を受けて粘り強さを示すようになることはある。勉強をやり通したり、大きなプロジェクトを完遂したり、勉強が難しくなったときに身を入れて取り組んだり。こうしたことはある特定の教室の状況や心理状態によって起こる反応だ」(p.108)

これは、「一緒に頑張れる友達がいると自分も頑張れる」ということなんだろう。実体験を振り返ってみても、自分が乗り気でなくても頑張っている子がいると引っ張られるものだ。そういった意味で、チームワークに重きを置く活動を子供にはさせたいと思う。身近な所では、今現在の習い事は集団のものを選んでいる。

3.失敗や挫折に寄り添ってあげる

自分の子供時代を振り返ると、あまり失敗経験を振り返るということはしなかったように思う(気にしない!次!と励まされてはいたが)。特に小学生の頃は、その分析の甘さにより成績が伸び悩んだ記憶があるので、失敗の分析や整理を意識的にサポートしてあげようと感じた(特に小さいうちは)。下記の通り、失敗や挫折は大きな推進力になるし、乗り越えることで生活全般への取り組み方だけでなく(p.24)、あまり面白くない学習作業も進んでやる(p.92)という可能性を秘めている。

あやふやなものであれ、はっきりしたものであれ、生徒は失敗に直面したときにメッセージを受け取る。失敗は一時的なつまずきに過ぎず、学んだり改善したりするための貴重なチャンスであるというメッセージを受け取れば、挫折はその生徒をより勉強に打ち込ませる推進力になる。(p.105)
「学業のための粘り強さ」を持った生徒が他の生徒とちがうのは、失敗からすぐ立ち直る力を持っている点だ。ファリントンのいう「学業のための粘り強さ」には、グリットや自制心や、楽しみを先送りにする力のような非認知能力が含まれる。(p.107)




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