見出し画像

松居大悟監督のティーチインに参加した。

7月22日 目黒シネマ 21時~
『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ちょっと思い出しただけ』二本立て上映後に行われた、松居監督のティーチイントークイベントに参加した。

目黒シネマ前 前売りチケットは完売
「原題:NIGHT ON EARTH」Tシャツ姿の松居監督

監督はTシャツにビーサンというラフなスタイルで登場。イベントは参加者から質問を募り、監督が答える形で進められる。終始撮影もOK。

監督の出身大学に在籍する学生、監督のファンの方などからの質問は絶えることなく続き、10名くらいがあてられただろうか。監督の裏話を交えたトークは面白く和やかにイベントは進行した。

・裏設定
照生の愛猫「もんじゃ」は、実は同棲を始めた頃に二人で飼い始めた猫で、その日二人でもんじゃ焼きを食べたから、葉が「もんじゃ」と名付けたという。

・舞台は高円寺の街
「ザ・高円寺」の劇場は、扉を入ったらすぐにステージだったから選んだ。ほかは階段を登らなければならなかったりステージまでが遠かった。
また、照生のバイト先は「シーパラダイス」だが、高円寺からシーパラは遠く照生の動線はあまり意識しなくていいという事だった。荻窪くらいに考えてほしいと。

・軽快な会話
実はめちゃくちゃ細かく決めていた。その方が逆にリアルになるからと。

・屋上の花火シーン
水は床にあえて撒いていた。かなり時間をかけて撮影した。置いてあった筒型の花火は実際に全部やった。葉が照生をおんぶしてフレームアウトし、逆に照生が葉を抱えて階段を下りてくるシーンは、池松さんのアイディア。撮影では俳優部の方がアイディアを出すことも多かった。

・ラストシーンの朝日
実際朝日はどこから昇るかわからないから、カメラのセッティングに困った。だからちょっと失敗した。狙っていた場所ではないところからあっという間に昇ってきた。

・「とまり木」のマスターの言葉
あえて中性的なキャラクターにした。尤もらしいことを言って、愛に奔放で。そしてこれからもっといいことを言うぞ~、というところであえてジェンガが崩れるようにした。

・映画館と配信
最近はだんだん配信もきているが、やはり映画は映画館で見てもらいたい。

・監督の大学時代
7年間大学に通っていた。3年で休学したとき、やることがなくて毎日映画ばかり見ていた。その頃ジム・ジャームッシュ監督の作品と出会ったし、その経験が今活きている。

・なぜ照生の誕生日を26日にしたのか
クリープハイプの尾崎世界観さんがコロナで大事なライブが中止になったとき、映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」と同名の楽曲を生み出した。それが26日だったから。
バンド名クリープハイプも映画のセリフから取っている。尾崎さんはそれくらいこの映画に思い入れがある。
映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、5ヶ所の街から同時間のタクシードライバーの様子を横軸の視点で見たもの。だから「ちょっと思い出しただけ」は、同じ日を毎年繰り返す縦軸の視点で見ていくものにした。誕生日の26日が終わり、そこから次に続いていくという思いを込めたラストにした。

監督のお話で覚えているのは、だいたいこのくらいだろうか。
愛猫の名付け親が葉だったとは。ひねりのない、直情的な性格を表すようなエピソードだった。
そして、二人あのとき同棲してたの?と驚いた。
別れるときは2週間連絡絶ってたり別々に暮らしてるっぽかったから。半同棲みたいな感じだったのかな。

実は私にも聞きたいことはあった。

葉ちゃんと照生くんの別れのシーン。
照生を迎えに行く前、葉が公園で妻を待つ男に相談していたのは昼間。葉がタクシーで照生の稽古場まで迎えに行ったときも外は確かに明るかった。照生を助手席に乗せてタクシーは走り出す。車内が映し出されるともう外が暗い。え?
そして2週間返信をしなかった照生を責める葉は、成り立たない会話に痺れを切らし「もう降りて。」と言ってしまう。
「お客さん、2240円ですけど、2500円で。」
え?たった2240円の区間の出来事だったの?
稽古場に迎えに行ったのは夕方だったとしよう。照生を乗せて何も会話のないまま夜になっていたのだろうか。そして会話が始まった時に葉はいつのまにか「賃走」にしてたのだろうか。
降ろされた公園のような場所に座り、周囲を見渡す照生。ダンスを踊っているグループ。若者の愚痴を言う中年サラリーマン。支え合って階段を下りる老夫婦。楽しそうに話す女子高生。夕飯のメニューを考える親子。ゴミを漁る浮浪者。
照生はそこで葉にもらったケーキを開ける。公園の時計は0時を迎える頃を指している。
照生、何時間そこに居たの?
7月26日、夏真っ盛りの東京はかなり暑い。
ケーキを買ったら「お持ち帰りの時間はどれくらいですか~?」なんて聞かれるしサービスでドライアイスは付けてくれるけど。けどだよ。
ケーキ、溶けちゃわない?
数時間はさすがに無理。
でもプレートも海の生物も完璧に乗っかったケーキがそこに。
えっ?時間の経過どうなってるの?
何か裏設定があるんですか?

なんてこと、聞けるわけなかった。
「ちょい思(とファンの間で略されてることもこのイベントで知る)」を観たのもアマプラで配信されていてたまたま観てハマったからで、この映画きっかけで監督を知ったくらいで、そんなちょい思出のド新規が、こんなくだらない質問できるわけがなかった。

監督、映画は映画館で見てもらいたいのか。確かに。
初めて劇場で見る「ちょっと思い出しただけ」は、アマプラで何度か見返しているものとは別物に映った。スクリーンでは迫力が全然違う。最後、尾崎世界観を乗せた葉のタクシーを見送る照生の柔らかい表情も余韻が残るほど映えていた。
「ナイト・オン・ザ・プラネット」は初見だったがずっと見たかった作品で、贅沢にも「ちょい思」といっしょに映画館で観る機会をくれてありがとう目黒シネマ。

コロナで外出が思うようにできなくなり、ゴロンとできる快適なソファ、大型テレビ、良質なスピーカー、ちょうどいいコーヒーテーブルを揃え、居心地の良い部屋づくりに徹した結果、大好きな映画も家で鑑賞することが多くなってしまった。

でも、映画館で見る映画は、やっぱり良かった。