見出し画像

映画「The First Time」感想

ウェイ系じゃない誠実な男の子と芯のある女の子の「はじめて」物語。 

今から10年前に公開されたらしいアメリカ映画。
国民総陽キャみたいなアメリカ人にも、こんな気にしぃで純情な高校生居るんだ〜と思った。『Eighth Grade』(2019)『BOOKSMART』(2020)に続いていくような、生きることに不器用な層にスポットを当てた青春映画って興味深い。 

監督はジョナサン・カスダン、主演はブリット・ロバートソンとディラン・オブライエン。二人は共演後交際に発展したらしい。息の合った演技がいいね。

10代の男といったら頭の中常に女の子のことでいっぱいらしい。とにかくヤることしか考えてないステレオタイプの友人たちとは違い、真面目なデイヴはまだ童貞。シングルマザーとして忙しい母に代わって父親違いの幼い妹の面倒を見ているせいもあるのかな、思い遣りがあって女の子に優しい。
そして10代の女の子が相手に求めるのはとにかく見た目。あとはスマートにリードしてくれくれるかどうか。でもオーブリーもまたその辺の尻軽パーティーガールとは違い、決して周りに流されない女の子。パーティーにもお目付け役として参加する。

そんな今時珍しく恋愛に真面目に向き合う二人が、ある夜パーティーで顔を合わせるところから物語は始まる。

あらすじ〈ネタバレあり〉

パーティーを抜け出したデイヴが片思いの女の子ジェーンに告白しよう一人練習をしていると、パーティーに馴染めず出てきていたオーブリーに偶然聞かれてしまう。これも何かの縁だとデイヴが相談すると、オーブリーはそんな飾ったセリフで告ったって心に響かないし上手くいかないとアドバイスをする。
その後パーティー会場に警察が来て、客は逃げ出してんやわんやになりそれぞれの友人の車で来ていたデイヴとオーブリーは友達とはぐれ、2人で歩いて帰ることにする。

道中、お互いの話をして盛り上がる2人。オーブリーには彼氏が居ること、デイヴは教師を目指し卒業後ニューヨークの大学に進学が決まっていることなどなど。オーブリーの家に着き、デイヴはオーブリーに電話番号を聞くが、オーブリーは親には内緒でデイヴを家に招き入れることにします。
 
気が合うなって、お互いビビッときちゃって、離れがたかったんだろうな~そういうノリってあるよねわかる。

オーブリーは背伸びして、家にあったワインをあけるけど慣れていないからボトルの中に割れたコルクを落としてしまってることに気付かない。
デイヴがグラスをあおるとそのくずが口の中に入ってきて「ウッ」となるも、デイヴはオーブリーに恥をかかせないよう後ろでそっと口から吐き出してジーンズのポケットにしまいこみます。
いい奴なんだよ~、デイヴ。
オーブリーが部屋の中で一番のお気に入りの場所というベット下のスペースで二人は寄り添って話しこむうち、眠り込んでしまいました。
翌朝オーブリーの母親のノックで起こされ二人は飛び起きます。オーブリーはデイヴを連れ込んだことがばれないよう、デイヴに窓から飛び降りるように言います。慌てて昨日のワイングラスを蹴飛ばしてしまうデイヴ、絨毯を汚してしまいました。ぎょっとなるオーブリー。結構高さのある窓からジャンプさせられるデイヴ、幸いケガはしませんでした。

いやそもそもあんたがコルク栓開けるの失敗しているせいで、デイヴは飲み切ることができなかったんだよ~たぶん。

デイヴはこの一連の出来事を友人たちに話しました。デイヴはオーブリーのことが頭から離れなくなってしまったのです。しかしデイヴはオーブリーの連絡先すら結局聞けずしまいでした。友人たちに協力してもらって調べると、オーブリーはデイヴとは別の高校に通う2年生だということがわかり、家の電話番号を知ることができました。

「すぐかけるなよ。何日かおけよ」と友人に忠告されたにもかかわらず、デイヴは、即オーブリーの家電にかけてしまいます。
恋愛の駆け引きする余裕すらないんだよね~デイヴ。恋の初心者だから。
オーブリーは気まずそうでしたが、今夜は彼氏と映画を観に行くと言います。デイヴもすぐに友人たちを誘って映画に行くことにしました。映画館にはジェーンも来ていました。オーブリーの彼氏で年上のロニーは高校生たちを馬鹿にして別の映画を観たいと言いますが、結局オーブリーに押し切られ皆で同じ映画を観ることになりました。
上映中もオーブリーが気になって仕方がないデイヴ。途中オーブリーが外に出ると、デイヴも追いかけます。そこでオーブリーは、さっきは家の電話だったから両親がそばにいてついそっけない態度になってしまったと謝ります。デイヴはついにオーブリーの携帯番号を聞くことができました。そしてデイヴは映画の後ジェーンの友達の家で行われるパーティーにオーブリーを誘います。
 
パーティーでオーブリーは、デイヴの片思いの相手ジェーンと会います。ジェーンは可愛いけどいつも軽い男と付き合っては遊ばれているような尻軽な女の子。デイヴのことを聞くと、デイヴはすごくいい人でいつも恋愛の相談に乗ってもらっていると言います。ジェーンはデイヴに好かれている事にも気付いていない様子。そしてデイヴがいつも幼い妹の面倒を見ていることを聞きます。
一方男連中のほうは、ロニーが横柄で態度が悪く、デイヴと友人たちに今夜オーブリーとSEXしようと思っていると言いふらしていました。心配になったデイヴはオーブリーを探し、初めてをあんな男に捧げてはだめだと言います。でもオーブリーは素直に忠告を聞くことができず、別に大事にとっておいたわけでもないし、あなたには関係のないことだと言ってしまいます。
二人の親密な様子をかぎ取ったロニーは、デイヴをぶん殴り喧嘩になりました。オーブリーは雰囲気を壊すだけのロニーを連れてパーティー会場を去ります。その後デイヴのところにジェーンが来て、また男の相談をしようとしますが、いつもなら親身に聞いてくれるはずのデイブが上の空で話の途中なのに帰ってしまいました。

心配で気が気じゃないデイヴのもとに、オーブリーから「迎えに来て」とメールが入ります。デイヴはすぐに車でオーブリーの家に行きました。オーブリーはロニーと別れたと言いました。

二人は真夜中のドライブを楽しみ、付き合うことになりました♡

両親が夜家を空ける日、オーブリーはデイヴを家に誘います。デイヴはとりあえずコンドームを持っていくべきかどうか悩む。持って行けばその気満々で訪れたことになるし、全く準備して行かないのも気が引けます。でも結局持たない事にしました。結局その夜二人はお互い初めてヤる流れになりましたが(ゴムはオーブリーが持っていました。デイヴは用意してこなかったから合格ね、とかわけわからんこと言ってました)、お互い慣れていなくてうまくできませんでした。
気まずく、言い合いになり、デイヴは帰ってしまいます。
付き合うのも速攻だったけど初ケンカも早いな。
デイヴが帰った後、オーブリーはスマホをそばにデイヴからの連絡を待ちます。ウトウト眠りにつきやっと連絡キターーーーと慌てて出るも相手は元カレロニーでした。
その頃デイヴは、友人たちに相談していました。ある友人は、「あの子とお前は合わなかった。もうやめちゃえ」と言います。しかしもう一人の友人は、「その子が好きなんだろ?お前は俺たちがどんなにたくさんパーティーに行こうと会えなかった運命の人を見つけたんだ」と言います。「初めてだから慌ててしまっただけ」と励まします。

悶々として迎えた翌朝、オーブリーは自分がどれだけデイヴが好きか気付き、両親に、すごく好きな人ができたの!と伝えます。両親はオーブリーが堂々と宣言してくれたことを喜び励まします。オーブリーが学校へ向かおうと玄関を出ると、そこにはなんとデイヴが待っていました!
サプラーイズ!デイヴくっそかっこいいじゃん~。

学校へ向かう車の中で二人は、慌てずゆっくり進もうと話し合います。オーブリーを学校におろし、デイヴはその後ろ姿を見送って帰ろうとしますが、学校に入ろうとしたオーブリーはUターンしてデイヴのところに戻ってきます。そして堂々とデイヴと熱いキスを交わします。あんなに恋愛に冷めた態度を取っていたオーブリーが、周囲の目を気にしないただの恋愛に浮かれた女の子になっちゃったのがひたすら可愛い~。

おしまい。
 
好きポイント
・名前が「オードリー」じゃなくて「オーブリー」なのも良かった。平凡なそのへんの女の子ではない感じ出てた。
 
・オーブリーの趣味が「コラージュ」なのが渋くて良い。部屋の壁にドドーンと作品が飾られていて、それがまた綺麗な青で素敵だった。

・自室の日差しが当たってぽかぽかして気持ちがいいお気に入りのスペースに最初からデイヴを招き入れるところ、心を許している証拠だったね。

・デイヴは幼い妹と遊んでいるところにオーブリーを招き入れる。妹ともすぐ打ち解けられそうなオーブリーは間違いなく良い子だ。子供って正直だから。
その後オーブリーと別れて妹といっしょに購入していたのは、古雑誌。オーブリーのコラージュに使えないかとオーブリーの家に招かれたとき、それをお土産に訪れるんだよね。自分のこと考えてくれてたんだ~と実感できることって嬉しい。

・10代の恋愛でよく起こる「蛙化現象」。
片思い中は相手に夢中だったけれど、両思いになった途端、ふとした瞬間に相手がキモく感じたりする現象を指す心理学用語の一つだけど。
あの夜、オーブリーはスマートにリードできないデイヴに一瞬イラッとしただろうし、冷めたと思うんだよね。その辺のパープリン女子なら"こいつダッサ"ってすぐ見切りつけたかもしれない。10代の恋愛ってそれくらい軽いものだから。すぐに次があるから。
でもそこでその時の勢いに任せず反省したり考え直したりできるのがオーブリー。

そういえば、英語で初めてを表す言葉は2つあって、"珍しい行い"の意味の「初めて」は「a first」、「the first time」は次に繋がりのある「初めて」の意味で使うらしい。

女の子の「はじめて」は、「the first time」として大切に考えてくれるデイヴのような男の子に託したい。
決して、興味本位な一時だけの「a first」であってはならないのだ。

不器用だけどあったかいハートの持ち主デイヴの良さに気付けるオーブリーは、だてに冷めた目でひとを観察してきたわけではないんだろうな。大切なものは、だいたいカッコ悪い。

ライトな青春映画だけど、10代の恋愛において大切な何かを教えてくれる、ところどころに効果的に使わる青映えの映像もとても綺麗で、大好きな映画の一つになりました。

この記事が参加している募集