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大学生・大学院生に研究留学という選択肢を (正規留学でもない、交換留学でもない、海外に留学する第3の選択肢)

#アメリカ #研究留学 #大学生 #大学院生

こんにちは。みなみんです。先日、イリノイ大学(アメリカ)での1年間の研究留学を終えて、無事日本に帰って来ました。周りに研究留学をしている人がいなかったため、沢山の失敗も経験しました。これから海外に出て自分の力を試したい方に向けて、成功体験ではなく特に失敗体験に焦点を当ててノウハウなどを共有できたらと思います。

どんな人に読んで欲しいか?

漠然とでもこれから海外に行ってみたい、留学に行ってみたいと思っている人は多いと思います。その中でも、普通の交換留学があまり魅力的に感じないと思っている方 (*ただ授業を受けるだけではなく、自分のやりたい活動に主体を置きつつ、海外に出て語学力や文化を学びたい方)に向けて、研究留学という選択肢もあるよというのをお伝えできればと思っています。

筆者の紹介

私は、元々高専と呼ばれる5年生の高等専門学校にて化学を学び、大学から九州大学芸術工学部の芸術情報設計学科 (現・メディアデザインコース)に編入し、大学院ではメディアデザインを専攻しています。大学院1年生の夏(2022年8月)から大学院2年生の夏(2023年9月)まで、イリノイ大学アーバナシャンペーン校(アメリカ)のInstitute of Communication Researchという機関にVisiting Scholarとして研究留学をしていました。小さい頃からアメリカに行ってみたい思いはあったものの、金銭的・言語的な壁があり、なかなか実現できずにいました。しかし、大学院に進学することで、そのチャンスに巡り合い、1年間の研究留学を終えて日本に帰って来ました。

研究留学って何?

この記事で扱う研究留学の定義は、海外の大学院で研究を行うことを目的とした留学のことです。自分自身の研究テーマを海外の大学院で行う場合や海外の大学が行っている研究プロジェクトに参加する場合も含まれます。

研究留学の動機

最初は、大学の交換留学制度を利用してオランダに行こうと考えていました。しかし、ずっとモヤモヤしたものがありました。大学が提携している大学に、自分の興味がピッタリと当てはまる大学がなかったからです。どうせ行くなら、自分の興味やプロジェクトをもっと深めて帰って来たいという思いがありました。そこで、研究留学という選択が浮かびました。アメリカの一流大学は、正規で留学するためにはTOEFLの得点や準備がとても大変です。推薦書も用意しなければなりません。そこに本気で時間を使うとなれば、貴重な大学生活を受験勉強に捧げてしまうことになります。研究や創作活動に打ち込みつつ、海外留学ができる、それが研究留学だということが分かり、一気に方向転換をしました。

準備について

返済不要の奨学金の申請

では、実際にどんな準備をしたのかをお話しします。まず、一番大切なことは、返済不要の奨学金を獲得することです。これは、留学の1年前が目安です。私の場合は、2022年8月留学開始で、奨学金を応募していたのは2021年の秋頃です。交換留学用の奨学金を4,5件ほど応募しました。幸いなことに、経団連さんのグローバル人材育成スカラーシップの奨学生として採用して頂きました。1年間で200万円が一括で支給され、そのおかげで1年間アメリカで生活することができました。後日知ったのですが、応募倍率は12.4倍でした。決して簡単な道ではありませんが、とにかく沢山応募することが大切です。私は、学部生のときに九州大学の山川賞という1年間で100万円 (2年間で200万円)ずつ支給される返済不要の奨学金を獲得したり、科研費の応募資料の作成もお手伝いした経験があります。ある一定程度、書き方次第で採用率を上げることもできるので、もしその需要がありましたら、別の記事で書いてみようと思います。留学に行くかどうか迷っている方も、期限が決まっているので、とりあえず奨学金は申請しておくことをお勧めします。

行きたい大学・研究室のリスト作成

問題はどこの大学に行くかです。指導教員のコネクションがある場合は良いですが、そうでない場合は自分で探す必要があります。まずは、行きたい場所のリストを作りましょう。では、どのように探せば良いのでしょうか?

1. 論文から探す
興味のあるテーマや近い研究の論文を見ると、問い合わせ先が書かれている場合があります。注目するのは、First AuthorとLast Authorです。First Authorは博士課程の学生であり、Last Authorは教授である場合があります。ここでポイントは、どちらにもメールを送ることです。教授は大変忙しく、返信してくださることは稀です。その反面、学生にとっては自分の研究が注目されるというのは嬉しいことでもあります。その学生経由で、教授に話を繋いでもらうのも1つの手です。

2. ネット・Linkdeinで探す
興味のあるキーワードを入力し、ホームページを見て、メールを打ってみる方法や、Lindkeinと呼ばれるビジネス用SNSで探すのもありです。海外の学生からLinkdeinでインターン先を見つけたり、研究者と繋がったりする話をよく聞きました。私も、Linkdeinに登録してアメリカ生活を送っているうちに、海外の企業からも面談したいとのお声を頂きました。キャリアを考えていく上でも、役に立つかもしれません。

3. 積極的に国際学会に参加する
コロナの影響もあり、初めての対面の学会がトロントで行われたICA (International Communication Association)でした。世界規模の国際学会で、その衝撃は今でも忘れられません。世界中の研究者が集まり、ディスカッションをし、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしながら交流する良い機会になりました。私も、シンガポール国立大学の研究者や香港理工大学の研究者など、たくさんの繋がりが出来ました。一緒にトロントを観光した研究者から後日お誘いのメールが来たこともあり、積極的に学会に参加することで、選択肢はグッと広がります。

履歴書(CV)・ポートフォリオの作成

研究留学の際に必要となってくるのが履歴書 (CV)やポートフォリオです。CVは研究テーマ、学歴、出版物、スキルなどを記載したもので、提出を求められるケースがあります。フォーマットは自由なので、私は色々な研究者のCVをネットで検索しフォーマットを参考にして作成しました。ポートフォリオは、特にデザイン系の学生は必須で、過去に制作した作品集やWebsiteなどです。相手に実績や作品を証明する際に役立ちます。

メールの送付

準備ができたら、リストにある教授にメールを打っていきましょう。17件ほどメールを出しましたが、ほとんど断られてしまいました。コネクションがない場合、大抵は返信が返って来ないか、断られてしまいます。ですが、めげないでください。メールの打ち方によっても、返信して貰える確率が変わります。一番大事なことは、受け入れ先に対してどんな貢献ができるか・どんなメリットがあるかです。相手のメリットをよく考えることで受け入れ率は格段に上がります。本当に行きたいところは事前に論文を読んだり、よく調べたりしてからメールを打ちましょう。また、その努力を示すことも大切です。私の場合は、簡単な自己紹介と、なぜ興味を持ったのか(論文や研究室の活動などに触れる)、その研究室にとってのメリット、そしてポートフォリオのリンクを貼付したメールを作成していました。忙しい中でもできるだけ短く、けれども必要な情報を盛り込むよう心がけました。

面接

オンラインでの面接がありました。形式ばったものではなく、お互いのことをよく知るための面談です。簡単な研究発表を行い、なぜ興味を持ったのか、貢献できることは何かについてプレゼンをしました。正直、当時は英語の聞き取りもあまり得意ではなく、教授の話している内容について100%理解できた訳ではありませんが、その都度聞き返したりして何とか無事に乗り切ることができました。もし、教授から採用された場合、次のステージに移行することになります。

準備

受け入れ先が招待状やJ-1 VISA (交流訪問者VISA)の発行に必要なDS-2019という適格証明書を発行してくれます。基本的には受け入れ先の大学の指示に従っていれば何とかなります。J-1 VISAでは、研究室からお給料を貰うことも可能です。お給料についても、教授とよく話し合っておくことをお勧めします。留学期間が確定したら、航空機のチケットや語学力の向上、アパートの契約、留学の詳細な計画などを立てていきます。どんな準備をするべきなのか、私自身全く分かりませんでした。しかし、実際の経験を通してこうしておけば良かったなと思うことは沢山あります。詳細については、この後の「研究留学をより良いものにするために」をご覧ください。

研究留学をより良いものにするために

ここからは、私が実際に経験してみて、こうすれば良かったなと思うことをお話しします。内容に関しては、研究室の選定言語向上のためのプログラムについて、留学期間の決め方についてです。

1. 研究室の選定

研究室を選ぶ際に、最も気を付けるべきことはお給料の確認自由に出入りできる環境があるかどうかです。お金を潤沢に持っている研究室であれば、プロジェクトに参加することでお給料を貰えることがあります。例え奨学金を獲得していたとしても、円安やインフレの影響で生活するのはとても大変です。ラーメン1杯が2,600円の世界でした。自分のプロジェクトを持ちつつ、インセンティブのあるプロジェクトに参加することができれば、新しい知識が得られるとともに生活の方も安心です。研究室選びの際には、お給料を貰えることができるかについても検討しておくと良いと思います。

そしてもう一つ、研究室に自由に出入りできる環境があるかも大切です。これは分野によって異なってきますが、私の留学先では、学生が集まる決まった部屋がありませんでした。そのため、教授との面談はカフェかレストランでご飯を食べながら行っていました。ハイスペックのモバイルワークステーションを持参したため、大学に行く必要はなく、集中したいときは家で作業していました。しかし、学生が集まって気軽にディスカッションできるスペースがあれば、より充実した留学生活になると思います。

2. 言語向上のためのプログラムについて

基本的に、Visiting Scholarという立場は学生ではないので授業料も納めていません。しかし、2,3個までなら教員に相談することで特別に受講させて貰えることが多いです。私は興味のあった心理療法の講義に参加していました。今になって思うと、英語のスピーキングの授業も取っておけば良かったなと思います。よくある誤解として、留学に行けば勝手に語学力がついてくるというものがあります。勿論、ある程度慣れることはあると思うのですが、留学に行っても努力をしないと語学力はつきません。私の場合は、新しいフレーズや単語に出会ったときは全てNotionというメモアプリにメモをしていました。オススメの方法として、自信度を☆1〜☆3に分類してソートし、自信度の低い単語から復習することで、効率的に英語を身に付けていくことができるようになります。朝起きたらまずは英単語を確認し、ポッドキャストを聞いて1日が始まるという生活でした。

もし、英語向上のための授業を取りたいのであれば、早めに教授に相談しておくことをお勧めします。大学には、英語が第2言語の人のためのプログラムやコースなどがあるケースがありますが、有料なものが多いです。しかし、研究留学者には、教授からの計らいで特別に受講できることも珍しくありません。確約はできないですが、英語力の向上も目指している方は検討してみることをお勧めします。

3. 留学期間の決め方について

留学期間の設定はとても難しいと思います。日本の大学との兼ね合いもありますし、就活や授業の単位とも照らし合わせて考えなければなりません。ここでご紹介するのは、意外と見落としがちな観点です。学期アパートの契約、そして保険の契約期間を考慮した決め方です。イリノイ大学の場合、5月〜8月に大きな夏休みがあります。この期間には、学生は帰省やインターン等でほとんどキャンパスに人がいなくなります。もし、人を対象とした実験を行う必要がある場合、被験者を集めるのが極端に難しくなります。イリノイ大学には、学生が被験者として参加することで単位が取得できるシステムがあるのですが、夏休みの期間はほとんど人がいません。逆に化学や生物系など、学内施設や実験装置などを使用した実験の場合、人がいない方が有利なこともあります。また、授業に参加する予定がある場合は当然、学期途中で留学を終わらせてしまうのは勿体無いです。自身の研究の性質にもよりますが、学期を考慮して決めることをお勧めします。

続いてはアパートの契約期間の考慮についてです。私の場合、2022年8月の中旬からアパート契約し、契約期間が翌年の7月まででした。留学期間は8月の中旬から翌年の8月31日までだったので、後1ヶ月を残した状態で、アパートを追い出されてしまいました。通常は1年契約がほとんどなので、短期でのアパート探しは大変です。1ヶ月間、Airbnbを利用することを考えましたが、相場が20万~30万/月と、現実的ではありませんでした。幸いなことに、ホストしてくださるお家が見つかり、留学最後の期間お世話になりましたが、とてもラッキーでした。留学期間はアパートの契約期間も考慮して決めることをお勧めします。

また、それに合わせて保険の契約期間も重要です。私の場合、当初は2022年8月の中旬から2023年8/31まで留学する予定だったのですが、保険の契約期間が8/22で切れてしまうことが判明しました。数週間単位で契約の更新ができず(最低6ヶ月)、更新するだけで10万円ほど支払う必要がありました。あまりにも勿体無いと感じたため、途中で留学期間を8/22までに短縮しました。

留学期間は、学期やアパートの契約期間、保険の契約期間を考慮して決めるべきだったなと少し後悔しているので、今後留学を検討される方は是非参考にしてみてください。

まとめ

今回の記事を読んで少しでも研究留学という選択肢について興味を持ってくださったら嬉しいです。私自身も、この留学を通して大きくのことを学び、次に繋がる経験を得ることができました。何も分からない中でのスタートでしたが、失敗を重ねて、もっとこうしておけば良かったなと思うことが沢山ありました。その中でも重要だと思うものをピックアップして記事にしました。少しでも、今後留学を検討している方の参考になったら幸いです。

本記事で触れた内容は、あくまでイリノイ大学、そして個人の体験によるものであり、全ての方に当てはまるわけではありません。これから留学をしようとしている方は楽しみな反面、不安なことも多いと思いますが、色々な情報に触れて、あなたにとって最も良い方法で充実した留学生活が送れることを心より願っています。


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