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熱発しちゃった(下、コロナ禍④)

みつきの先輩、マリコ部長が四月中旬に熱を出しちゃった。会社を一週間も休んだんだけど、幸いコロナではなかったみたい。
久しぶりに出社してきたマリコ部長は、みつきと、部下のエイコの質問攻めにあっているんです。

エイコ(以下エ)「で、きょう月曜日に復帰、と」
みつき(以下み)「休みの間の様子はどうだったんですか」
マリコ部長(以下マ)「喉の違和感も消えて、残ったのは咳。薬が終わった後は、市販薬のトローチを舐めた。でも、いつ熱がぶり返すか、不安だった。とくに咳が断続的に出ていた夜はね。眠りが浅いからか、夢を見るのよ、怖いのを」
み「どんな?」
マ「ベッドで唸っていると、ドアが、ぎぃぃーっと開く。見ると、暗がりにマタンゴ化した小泉今日子が立っていて「なにしてるのー」。きゃー。つぶった目を開けると、天井を赤ん坊がはいはいしているの。わたしの真上にやってきたかと思うと、首を180度捻ってニヤリとしてから落っこちてくるの。ぎゃー。ベッドから跳ね起きてドアの外に逃げたら、そこはオフィス。エイコがデスクから『部長、またやらかしました。一緒にクライアントのところに謝りに行ってください』。ギャー(これは梅図かずお風ね)。ここで目が覚めた」
み「怖すぎる」
エ「どこが!」

マ「とにかく、病院には火曜日に電話を入れて、水曜日に再受診。医者からは『コロナだったのか、インフルだったのか、風邪だったのか、何とも言えません。引き続き安静を保って感染予防を続けてください』って」
み「5月8日から、コロナがインフル並みの5類に移行するけれど、医療体制ってどうなるのかしら。どの病院、クリニックでも受診できるようになるのかしら」
マ「さっきも話したけれど、わたしのかかりつけ医は抗原検査キットで陰性の人のみ診る」
エ「どんな扱いをされるか。こればっかりは罹ってみないとわからないかも。でも罹りたくないし、メディアが実情をしっかり報道してほしい」
マ「確かに。自治体によっても違いが出てくるかもね」
み「感染者数も全数把握ではなく定点観測になって実態がつかみにくくなるし、メディアの報道が少なくなる危惧がある」
エ「そこよ。報道が少なくなれば、みんなも意識しなくなる」
マ「それが国の狙いなんじゃない? 5類に移行したからってコロナがなくなるわけではないんだけど、なくなったことにしちゃえ、って気分にさせるのが5類移行のキモなんでは。あとは自己責任、自助で乗り切ってね、ってなもんじゃないかしら」
み「ですね。感染対策は続けたいです」
マ「そうね。わたし、コロナ禍前までは毎冬、熱出す風邪を一度はひいていたんだけれど、ここ数年はまったく熱が出なかった。マスク、うがい、手洗いの効果だと思うわよ」
み「わたしもです。熱出てない」
エ「マスク様様って感じ」
マ「そうそう、病院への行き帰り、わたしは当然、マスクをしている。だけど、すれ違う人の中にノーマスクの人がいるわけよ。心の中で『わたし、コロナに感染しているかもしれないんですけど。あなた、無防備すぎません?』って、つぶやいちゃったわ」
み「どこで感染したか心当たりがない、ってよく聞くけれど、案外、そんなことでも感染しちゃうのかしら、いまのコロナ」

エ「で、部長の熱発はなにが原因と?」
マ「うーん……季節の変わり目で寒かったり暑かったりしてたでしょう。それに年度末・新年度のドタバタ、新入社員研修が加わって、体が悲鳴をあげたんだと思うわ」
み「あり得ます」
エ「管理職はつらいよ、ってね!」
マ「なにより、しょーもない部下を抱えたストレスが一番の原因だったと思うわけよ」
エ「ひっどーい!」
マ「あら、あなたとは言ってないわよ」
エ「あっ!」

※参考:ドラマ「あまちゃん」(2013、第22回)、映画「マタンゴ」(1963)、「トレインスポッティング(1996)

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