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『炎症』が起こす私たちの身体への影響とは?

炎症とは何か?

炎症とは、内的・外的ストレスに対する生体防御反応です。ヒトの細胞レベルで起きる火事のようなもので、多くの研究により、鬱や肥満、糖尿病といった様々な不調の原因だと考えられています。

炎症反応は、体がなんらかのダメージを受けたときに起きます。有害な刺敷を取り除こうと免疫システムが起動し、ケガを修復すべく働き出すわけです。炎症そのものは進化の過程で人体に備わった防御システムであり、私たちが生きていくためには絶対に欠かせません。

細胞が死んでしまうことを壊死といいます。
壊死に陥っても、死んだ細胞が勝手に消えてどこかへ行ってしまう訳ではありません。壊死が生じると、「炎症反応」が生じて、白血球が動員されてきます。そして、動員された白血球や組織にあるマクロファージが主役となって、壊死した細胞を細胞が細胞外の異物をとりこむ「貪食」をして消化してくれるのです。

急性炎症と慢性炎症

炎症には、急性炎症と慢性炎症があります。
急性炎症は細菌やウイルスが体の中に侵入しようとしたときにさまざまな細胞などの体内成分がその排除に動いた結果、組織が赤く腫れ、痛みと熱感を持つ現象です。
一方、目立った症状がなく長年にわたって炎症が続くのが慢性炎症です。「くすぶり型炎症」と呼ばれ、徐々に細胞や臓器障害を引き起こします。

現代人のパフォーマンス低下は、とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行します。
長期の感染やアレルギーのように炎症が長引くと、人体を守るために免疫システムが激しい戦いをくり広げるせいで、血管や細胞といった周辺組織にまでダメージがおよび、やがて全身の機能が下がっていきます。

このタイプの炎症には、ハッキリとした自覚症状がありません。「なんだか調子が悪い」や「よく寝たはずなのになぜか疲れている」といったレベルの、謎の体調不良として認識されるケースがほとんどです。

炎症は長寿にも影響している

2016年、慶応大学医学部のチームが、スーパー高齢者の秘密を探る研究を行いました。被験者は日本に住む85才~110才の高齢者1554人。血液検査で全員の肝機能や細胞の劣化といった老化の指標をチェックしたところ、スーパー高齢者たちの体には、ひとつだけ大きな違いがありました。一般的な高齢者とくらべて、体の炎症レベルが異様に低かったのです。

炎症の影響で様々な身体の不調が引き起こされる

①うつ病
「うつ病の炎症モデル」とは、人体が何らかのダメージを受けてサイトカインという炎症性の物質が分泌され、脳の機能に影響をあたえるという考え方です。

②頭痛
頭痛には、頭がズキンズキンとする「片頭痛」やキューッと締め付けられる「緊張型頭痛」などの種類があります。

片頭痛がなぜ起こるのか、その原因はまだ完全には解明されていません。
原因や発生のメカニズムには諸説あり、三叉神経血管説では、何らかのきっかけで三叉神経が刺激され、その末端から炎症を起こす物質が出ることによって脳硬膜の血管のまわりに炎症が起こり、その刺激によって片頭痛の痛みが起こると考えられています。

緊張型頭痛は、頭や首、肩の筋肉の緊張から起こることが多いと考えられています。長時間、同じ体勢や無理な姿勢を続けることで、首や頭の筋肉に負担がかかり、緊張が高まります。 その結果筋肉の血行が悪化し、血管に老廃物などが溜まることで炎症が起こり、痛み物質であるプロスタグランジンなどが産生されて、頭痛を引き起こすと考えられています。

慢性炎症の原因とは?

くすぶり型炎症は食事や喫煙、高血糖などによって引き起こされますが、おもな原因が活性酸素とAGEです。

人体にとって、内臓脂肪は「異物」でしかありません。そのため私たちの体は、内臓脂肪が増えると免疫システムを動かしはじめ、脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。

内臓脂肪が減らない限り体はジワジワと燃え続け、炎症性物質で傷ついた血管や細胞が動脈硬化や脳梗塞の引き金になります。これが、「メタボリックシンドローム」の発症プロセスです。

高カロリーの状態が続けば、あまったエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪として貯蓄され、先に述べた炎症サイクルにはまり込んでいきます。つまり、「多すぎる」は炎症につながるのです。

トランス脂肪酸の摂取量が多い人ほど体内の炎症レベルが高いことがわかっており、いまやトランス脂肪酸の害に反対する専門家はいません。

腸内細菌が炎症に影響しているかもしれない

腸内細菌は食物繊維から酪酸という脂肪機を生産し、有害物質が体内に入り込むのを防ぎます。腸内細菌がなければ、私たちの免疫システムは攻撃も防御もままなりません。
ところが、人類の暮らしが近代化するなかで、このシステムに不調が出てきました。2020年、アルバータ大学の研究では、「リーキーガット」というこのシステムの不調のせいで体内に入った毒素が脳まで達し、そこで激しい炎症が起きた結果として、不安、うつ症状、疲労感の発生につながっていくと結論づけられました。
この結果をもとに研究チームは、現代人の謎の疲れや不安に対して、食物繊維やプロバイオティクスが効く可能性を示唆しています。

慢性炎症が起きないようにするにはどうすればいいか?

<慢性炎症が起きないようにすべきこと>
・自然との接触を増やす
・人間関係を充実させる
・食物繊維を多く摂る
・十分な睡眠と運動

もっとも手軽でメリットが多いのは、自然との接触を増やすことです。
ストレスが劇的に下がるのはもちろん、自然のなかにいれば大気にふくまれる細菌が腸内環境にも良い影響をあたえ、自律神経が整うおかげで睡眠の質も高まり、同時にデジタル断食の効果も得られます。いろいろなポイントが改善していくため、費用対効果としては最強クラスです。
続いてデータが多いのは、人間関係と食物繊維の2つです。
また、睡眠と運動の重要性についても言うまでもありません。
以上の4つを試してみたうえで慣れてきたら、発酵食品やプロバイオティクス、呼吸法、リアプライザルといったテクニックを加えていきましょう。

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