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空気が美味しい
冬が春に変わる今日この頃、窓を開けると夜の美味しい空気が私の体を駆け巡った。
そんなことを感じながら、ここで少し引っ掛かるのは「空気が美味しい」というフレーズ。私は食べたわけじゃない。では味覚というわけではない。私は大きく息を吸い込んだ。ではそれは鼻から通ったのだから嗅覚というべきなのだろうか。どうやらそうとも言い切れない気がする。近所のお宅から流れてくるカレーの匂いや近くの工事現場のシンナーの混じったような匂いがあるのならば、それは嗅覚だ。しかし、美味しい空気は少し違うよう。空気の流れによって運ばれてきた匂いというよりも、空気そのものの話だ。空気の質が良い。よく美味しい空気を感じるのは木々が沢山生えている山や森林。木々から出された空気が他のものに汚されず私の元へ届いているように感じる。言い換えるなら新鮮な空気。
なんとも言えない。美味しい空気とは、新鮮な空気。新鮮であるというのは汚れていないということ、言い換えれば着色されていない無の状態。それなのに美味しいと感じるのはどうしてか。そこには私の目に見えない神秘な世界が広がっている。
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