見出し画像

【読書感想】2030年の世界地図帳 落合陽一

画像2

サムネイルがAdobe  Sparkで作ったら、公式っぽい雰囲気になってしまいましたw このアプリ便利だなあ。

11月ごろこの本は発売してすぐに買ったのですが、タラタラ読んでて、まとめるのが遅くなってしまい、5ヶ月も経ってしまいました。

落合陽一さんについて

さて、僕は2017年頃にNewsPicksで落合さんを知り、独特のキャラクター性と、技術的な見地だけでなく、非常に多岐にわたる造詣の深さに感銘を受けてファンになって、本を読んだり、デジタルアートを見に行ったり、個展を見に行ったりしています。1歳違いというところも共感のポイントだったかもしれません。


本の概要

この本は、世界地図帳というだけあって、EU、アジア、アメリカそれぞれの国家的、経済的な特徴、人口動態などの統計データを踏まえた上で、
最近話題になっているSDGsとはなんなのか、それぞれの国がどういう立場で取り組もうとしているのかなどを整理して論じています。

さらに、落合さんの得意な技術分野である5G、AI、フードテック、太陽光発電など今後2030年までにほぼ確実に来るテクノロジートレンドについても触れており、2030年の世界がどうなっているかを大局から見て予測しています。


今後の日本が取るべき戦略

落合さんはこれまでにも日本再興戦略や日本進化論、ニッポン2021−2050といった日本が今後目指すべきビジョンについていろいろ語っていますし、小泉進次郎さんとも仲が良いとのことで、ディスカッションをしたりしています。

この本でもSDGsを踏まえた上で、日本が今後とるべき戦略を語っていて、この本で、「ヨーロピアンデジタル」と分類しているブランド力による価値の作り方にヒントがあると述べています。例えばスイスの高級時計のような。
それは日本という島国のもつ独特な文化との親和性もあるし、かつ、ひとつの国としては人口も経済も大きい国だからこそできる戦略でもあります。


なるほど!!って思った4層の世界勢力図

この本にはたくさんの世界の統計データや図が載っているのですが、1番ポイントだと思うのは以下の図です。

1番下の層が、石油や金などの「資源」の層です。アフリカや中東に多いです。
2番目の層が、世界の工場として機能する中国などの「工業」の層です。
3番目の層が、アメリカのGAFAM、中国のBATHが激突する「情報」の層
4番目の層が、ヨーロッパ主導のGDPRやパリ協定、ESG投資などの「法と倫理」の層です。

世界をGDP1位、2位のアメリカ、中国がプラットフォームや経済力で世界を仕切ろうとしているように見えて、ヨーロッパはSDGsなどの法と倫理でその上から対抗しようとしているという構図です。なるほど!!って思いました。

画像2


中田敦彦のYouTube大学でもこの本について取り上げています。

本を読んだ上で授業を見たのですが、よりポイントが分かりやすく、立体的に理解できたのでさすがのまとめ力だなと思いました。


まとめ


この本は表紙にある通り、地政学、テクノロジー、データについて考えつつ、SDGs、経済、環境問題、文化、歴史、思想、価値観など非常に多岐に渡る高度内容をとてもわかりやすくまとめられていました。

そして、アメリカのGAFAMや中国のBATHが覇権争いをしている中で、日本の落ち目が目立っているが、新しくSDGsというヨーロッパ式の対抗軸が出てきたので、これに積極的に乗っかることで日本も希望を見出せる、ということを伝えたい本だと思いました。


用語メモ

ギグエコノミー:
Uber Eatsなどのネットを通じて単発で仕事を請負う働き方のこと。フリーランスに近い、誰でも簡単にできる安価で自由な働き方とも呼べるが、やりたい人が増えることで単価が低くなっていくため徐々に貧困に陥る

ガイア仮説:地球と生物が相互に関係しあい、環境を作り上げていることをある種の巨大な生命体とみなす仮説

プラネタリーバウンダリー:自然環境はある転換点を越えたときに現在の均衡状態から別の均衡状態へ、急激かつ不可逆的に移行すること。自然環境の中には状態を維持しようとする力が働く(生物でいうところのホメオタシス)
ロックストームが提唱したもので、SDGsに組み込まれている

GDPR:EU一般データ保護規則。EU内の全ての個人情報に対し、保護を強化するもの。これの特徴はEU域外にいるEU以外の事業者にも適用されることで、これを理由にアメリカのGoogleなどは数百億円の罰金を命令されたりして、今までに取得したデータをユーザーが自分で削除したり、データの利用範囲を明示的に決められるようになった。


資源の呪い:
石油の産出国などは、収入を石油に頼っていて、それに従事する人ばかりが潤っており、それ以外の2次産業や3次産業が育たなかったため、市場が空洞化して、富の再分配が行われないため、強烈な格差社会になり、民主主義が育たない。


4つのデジタルイデオロギー:
アメリカン・デジタル 
GAFAMを中心とするシリコンバレー、自由でオープンなヒッピー思想、成功した起業家が投資家に転じて、スタートアップを育てるシステム、新市場を貪欲に求め研究開発に予算を惜しまずイノベーションを起こし続け、世界を覆わんばかりに拡大した搾取と隠されたのネットワーク

チャイニーズ・デジタル
一党独裁政治による強力な情報統制、アメリカのサービスを封じる「金盾」によるインターネット鎖国体制、圧倒的な人口を背景にした内需による経済的の発展とBATHなどのテック企業の台頭

ヨーロピアン・デジタル
産業革命以降続いたヨーロッパの技術覇権は20世記までで終わり、ヨーロッパの伝統や文化を背景にしたブランド力やスペックに現れない価値の創造、顧客とのエンゲージメント、職人技のものづくりが特徴

サードウェーブデジタル:
貧困に喘いでいた開発途上国がインターネットやスマホを利用することで、20世紀までの発展の筋道を一足飛び(リープフロッグ現象)に超えて成長するインドやアフリカなどの国々。
近代的な社会制度を取り入れる段階を経ていないため、革命やイデオロギーに馴染みがなく、身分制度や民族のしがらみがいまだに強い力を持っていることが特徴。

エレファントカーブ

画像3


デジタル発酵:
この本で落合さんの提唱しているワードで、1番概念的で理解し難い内容w

たぶん、テクノロジーがローカルの文化や土地に根付いたものがじわじわと生まれることなのかなと思います。

「さまざまなテクノロジーが、その土地に根付いたモノやサービスと掛け合わされることで、新たな魅力と価値が現れてくる。」

「発酵」とは、ある限られた領域の中で無秩序に混ざり合う内向きの力です。発酵の原資となるのは空気中のコウジカビなどですが、デジタル発酵でそれに相当するのは、あらゆる空間に偏在する情報化されたテクノロジー資源であると私は考えています。さまざまなテクノロジーが、その土地に根付いたモノやサービスと掛け合わされることで、新たな魅力と価値が現れてくる。それは、じめじめして朽ちかけた場所から生えてくる「新しい芽」のようなもので、一見奇妙に見えていても、そのユニークさにおいて外部に開放された、新しいローカリズムのあり方を示しています。人口減少により撤退戦を強いられるインフラのあり方の中での創発という意味で発酵をモチーフにしました



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?