A・さりげなく同じシリーズの本を手に取る
さりげなく近づいて、同じシリーズの本を手に取った。
彼がちらりと、こちらを見る気配がした。
無言で、二人並びながら本棚の前に立つ。
本をぱらぱらとめくりながら、心臓がドキドキとうるさかった。
どのくらい経っただろう。多分、一分やそこらのことだと思うけれど、ずいぶん長く感じられた時間は終わりを告げる。彼は、そこから離れて別の本棚に行ってしまった。
はあ、と息を吐き出す。体中の力が抜けていくようだった。
「帰ろ…」
帰り際にも彼の姿が見えたけれど、当然話しかけられる空気ではなく