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【選択式小説】図書館の少年

*この小説は、読む人が選択肢を選ぶことで結末が変わるようになっています。 あなたは、夏休み中の女子高校生。 暇を持て余し、毎日のように近くの図書館に通っています。 そこには、頻繁に見かける同じ年くらいの少年がいました。 話したことはないけれど、なんとなく気になるような…。 果たして二人は友達になれるでしょうか。 (今日もいた…) 冷房を求めてふらふらと図書館に入ると、書棚の間で本を選んでいる少年を見つけた。 水色のチェックのシャツを着ている。夏らしくて清潔感がある。 名前

    • A・さりげなく同じシリーズの本を手に取る

      さりげなく近づいて、同じシリーズの本を手に取った。 彼がちらりと、こちらを見る気配がした。 無言で、二人並びながら本棚の前に立つ。 本をぱらぱらとめくりながら、心臓がドキドキとうるさかった。 どのくらい経っただろう。多分、一分やそこらのことだと思うけれど、ずいぶん長く感じられた時間は終わりを告げる。彼は、そこから離れて別の本棚に行ってしまった。 はあ、と息を吐き出す。体中の力が抜けていくようだった。 「帰ろ…」 帰り際にも彼の姿が見えたけれど、当然話しかけられる空気ではなく

      • B・思い切って話しかけてみる

        「あの、その本好きなんですか?」 跳ねる心臓を押さえ、思い切って話しかけてみた。声が若干震えていたかもしれない。 少年は、少し驚いたようにこちらを見た。 「えっと…読んだことはないんですが、面白いと評判なので」 面白いですよ、と言おうとした瞬間、彼は「ちょっと待ってください」と言ってスマホを取り出した。 なにかを打ち込んだあと、画面をこちらに向ける。 画面にはこう書いてあった。 「うるさくするといけないのでこうやって話しますね。この本面白いんですか?」 私も急いでスマホ

        • A・咲也

          そこには、咲也が立っていた。 「マスター、昨日俺、ネックレス忘れてない?」 引き出しからネックレスを取り出し咲也に渡すと、咲也はぱあっと表情を明るくさせた。 「やっぱり。ありがと、マスター」 笑ってみせると、なぜか咲也は曇った顔になった。ころころ表情の変わる子だ。 「ちょっと話したい事あるんだけど…いい?」 咲也をカウンターに座らせるが、なかなか口を開こうとしない。 そわそわと目線を泳がす咲也に、キャンディを一つあげると、ようやくぽつぽつと語りだした。 「あのね、俺の

        【選択式小説】図書館の少年

          B・誠也

          そこには、誠也が立っていた。 「こんにちは、マスター。昨日、咲也がネックレスを忘れていかなかった?」 私は、引き出しからネックレスを取り出し誠也に渡す。 「ああ、やっぱり。ありがとうマスター」 お安い御用だよ、と笑ってみせた私に、誠也は少し躊躇ったそぶりを見せた後、こう言った。 「ちょっと相談したいことがあるんだけどいいかな?」 誠也をカウンター席に座らせる。彼は、神妙な面持ちで口を開いた。 「咲也は一人でアイドルをやった方がいいんじゃないかって思うんだ」 驚く私に、

          B・誠也

          A・「咲也は誠也を必要としてるよ」

          私の言葉を聞いた途端、誠也の瞳が不安げに揺れたのがわかった。 再び顔を伏せて、小さな声で言う。 「そうだよな…咲也には俺が必要だよな」 元気づけるように頷いてみせると、顔を伏せたまま誠也はこう言った。 「咲也は気弱なところもあるし甘ったれな性格だから…俺が支えてあげないとな」 数か月後、誠也が過労で倒れたという報が入ってきた。 すぐに退院したようだったが、そのまま休業、数か月後には、咲也も同時に芸能界から引退することになった。 あれから二人がカフェにやってくることはない。

          A・「咲也は誠也を必要としてるよ」

          B・「誠也にもいいところはたくさんあるよ」

          「そう…かな」 不安げにこちらを見る誠也に、大きく頷いて見せた。 「そうか…そうだよな。うん、マスターみたいに見てくれている人はきっといるんだ。それを忘れたら駄目だよな」 誠也は、晴れ晴れとした顔で笑った。 「ありがとう、マスター!」 ニ年後、彼らは共にアイドルを続けていた。 誠也は、著名な映画監督に演技力を買われ、映画やドラマに出演するようになっていた。 若いながらも落ち着きのある演技は、アイドルファン以外にも浸透していった。 一方咲也も、ファッションショーに出るなど

          B・「誠也にもいいところはたくさんあるよ」

          A・「今のこと、本人に聞いてみたら?」

          「誠也に…」 誠也の気持ちは誠也にしかわからない。そう伝えると、咲也はこちらを真っ直ぐ見て頷いた。 「そうだよな。こっちがあれこれ考えてたって仕方ないし。俺、話すの下手だから誠也を怒らせちゃうかもしれないけど…ちゃんと本人に聞いてみるよ」 そう言って、咲也は吹っ切れたように笑った。 数か月後。音楽番組で、二人はキラキラした笑顔をカメラに向けながら、歌い、踊っていた。 少し前に感じていた、ぎこちない空気はもう二人の間にはない。 時々、二人でカフェに来る。咲也はあの後、誠也

          A・「今のこと、本人に聞いてみたら?」

          B・「そういう時期もあるんじゃないかな」

          「そう…かな」 私の目には、誠也が咲也を嫌っているようにはとても見えなかった。 確かに、昨日来た時は少しぎすぎすした空気を感じたけれど…。 「そうだよね…。俺の考えすぎだよね、きっと。最近仕事も多いから二人とも疲れとか溜まってるし」 うんうんと頷いてみせると、咲也は安心したように笑った。 「マスターに聞いてもらって良かった。誠也にはこの話、言わないでね?」 数か月後、自宅でネットニュースを見ながらスマホを落としそうになった。 そこには、咲也と誠也が解散、お互いに別々の道を歩

          B・「そういう時期もあるんじゃないかな」

          【選択式小説】双子アイドルの運命

          *この小説は、読む人が選択肢を選ぶことで結末が変わるようになっています。 あなたはカフェのマスターをしています。 そこには、子供の頃から通っている双子の常連客がおり、彼らはアイドルとして活躍しています。 ですが、どうやら二人には悩みがある様子…。 あなたの選択で彼らの運命が決まります。 平日午後三時。 カフェには一組の客しかおらず、店内にはジャズが響いていた。 彼らは、奥の席に座っていた。時々ぼそぼそと話し声が聞こえてくる。しかし、その内容まではわからない。 彼らは、近

          【選択式小説】双子アイドルの運命