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地獄の特訓②

頭を使う研修と体を使う研修と心を使う研修にわかれていたように感じる。

会社の発展のために。

売り上げをあげるために。

仕事に取り組む姿勢を徹底的に叩き込まれる。


殴られはしないものの、とにかく大声で話すため恐怖を感じた。気迫とでもいうのだろうか。

言葉の衝撃波を常に浴びつづけている感覚だ。

中身の記憶より、「体験」として記憶している。


食事もお風呂もすべてきっちり時間が決められており、まるで軍隊のようなスケジュールだった。とはいえ、軍隊の生活を知っているわけではないのだが…


特に記憶に残っているのは、駅前で大声で歌う「セールス鴉」と40㎞の夜間歩行だ。

駅のホームに立つ講師に気持ちのこもった歌を聞かせるまで歌いつづけなければならない。歌う場所から見える講師の姿は米粒ほどの大きさだ。

声量はもちろんのこと表現力と忍耐力も求められる。当然周りの目も気になる。

そして全員クリアするまで帰れない。

喉がかれるまで歌ったのは最初で最後だ。


40㎞の夜間歩行は午後3時に出発し深夜の1時ころまでひたすら富士山の麓を歩いた。

縦一列で斥候と本体と分かれて歩く。私は本隊が道を間違えないよう先頭を歩いた。孤独だった。

途中休憩をとり用意してきたおにぎりを食べる。
凍っていてうまく食べられない。泣き出すものもいる。

それでもひたすら真っ暗な闇の中を歩く。

はじめてランナーズハイを経験した。足が勝手に動く。急に気分がハイになる。皆で不安に負けないよう歌を歌いながら進む。

そして「足が棒になる」という体験もはじめてした。もう止まることもできなかった。

足の裏にはマメができ、潰れ、血だらけになっていた。

足の感覚がなかったのが良かったのかなんとか引きずりながら歩いた。

一人の脱落者もなく、ゴールできたとき、チームの絆が一気に深まったのを実感した。抱き合って喜んだ。皆泣いていた。

完走してから入った風呂が痛きもちよくて、それでもまた皆で泣いた。

今思えば、どの課題もシチュエーションも手の込んだものでうまくストーリーにのっていたのかもしれない。

わずかな期間にも関わらず、こんなにも深い絆が芽生えるものなのかと驚いた。

そして、男女が協力して困難を乗り越えていく過程で、ある意味自然に、惹かれあう二人がでてくる…

つづく




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