美しき日本の“志”
「教科書の単語の大半を墨で塗り潰させられましてね。今まで学んできたことはいったい何だったのか、と」
以前、当時90歳の生徒さんがしてくださった
終戦直後のお話しが忘れられません。
例えば“志”という字は“夢”にとって代わりました。
「“志”は自分だけというより『周り』のための決意。
“夢”は聞こえは良いけど、『自分』のものですよね」
大学でのご専門は英文学でいらしたのですが、
小学校で日本語の授業が減り、代わりに英語が増えていることを憂いていらっしゃいました。
「日本語を正しく話せないうちから外国語だなんて。
早くやればいいというものじゃありません。
きちんとした母語が身についていれば、
いつから始めても数年でわかるようになりますのに」
淡い色のブラウスとスカート、
上品なパールのネックレスにお帽子…
いつもすてきな装いでレッスンにいらっしゃって
毎回、お会いするのが楽しみでした。
千葉から宮城県への帰郷を告げたときには、涙ぐまれて…
最後のレッスンのおり、お手製の美しいウールのラグを
プレゼントしてくださいました。
いま、杜音の玄関でお客さまをお迎えしているラグは
彼女がひと針ひと針縫い上げたハンドメイドです😊
きれいな夕焼けに包まれた翌朝の杜音。
庭の片隅でヒメウツギの可憐な花が
風に微笑んでいます。